ガガは次々と活躍の舞台を広げていく。若者たちの需要にこたえ続けていくだけの人生を送るつもりはない。「私は女になりたかった」。彼女はトニー・ベ ネットとともに2014年にリリースしたジャズのスタンダード曲を集めたアルバムについてそう語る。「このアルバムを聴いたひとたちは、『ちょっと待って。 なぜ彼女がジャズを歌ってるんだ? どうしちゃっ たんだ?』と大騒ぎだったの。でもそのうち、こう言うようになった。『ああ、彼女にはこういうことができるんだ、彼女はジャズが大好きなんだ』。それに、 アフリカン・アメリカンのコミュニティが生んだジャズという音楽は、この国が作り出した最高のアートの形だと私は信じてるの」。彼女は歴史を知っているし、白人のアーティストがジャズを歌うことが何を意味するかもわかっている。だが、彼女が子どもだった頃は「音楽を人種やジェンダーで考えるということ」はしなかった。彼女はただ純粋に音楽を聴いていたのだという。
黒人少女として育ったわけではないが「私は黒人少女が感じる恐怖や力を感じることができる」と彼女は言う。「この国の司法制度はどうしようもない。LGBTコミュニティがどんな待遇を受けてきたか、彼らとともにそれを間近で見てきたし、彼らが魂のレベルでどんな経験をしてきたかに共感する。正義が実現し、変化が訪れると、魂が洗われるような経験を目の当たり にする。私はみんながそんな思いができることを望んでいるし、私がそういうことを語ってもいいのだと思いたい」。
女性であることは、彼女に別の視点を与え、社会から取るに足らないと思われている人々の状況を、自分のこととして受け止める器を与えた。「私、彼らの物語 を音楽の形で書くことに夢中になったの」とガガは言 う。周囲を蹴散らすようなリズムに乗りながら、弱さやもろさを歌う彼女。「自分が真にミュージシャンであり、みんなに何かを伝えられる人間だってことを常に結果を出して示していかないと。女性だってミュージシャンにも、ロックスターにもなれると。女性が、ポップスターとして消費されるだけの存在を超えた何かになれるということをね」。
ガガは、ポップとロックに強く惹かれていたために、 正統な方法で芸術を勉強することには抵抗があった。 だが、このアーティストは、最初から、必要なものをすべて引き寄せていた。ローレンスは彼女に自分で詞を書くことをすすめた。詞を書くことは、ときにとてもつらく、大変な作業になり得ると彼女は認める。「自分の心のトラウマが壁になってしまうこともある」と 彼女は言う。「暗くて、永遠に続くネガティブな思考のループにはまって、それが大きく響いてくると、頭の中で聴こえる音楽のじゃまをする。私が音楽を作るときは、すべてのパート、すべての楽器の音が聴こえるの。完全な形で聴こえるわけ」。
彼女はプレイボーイ誌に掲載されたジョン・レノン のインタビュー記事を覚えている。レノンは、曲を作るプロセスがあまりにも常軌を逸していたために、ビートルズの大ヒットレコードの何枚かを聴くことがで きないのだと語った。再び聴くと、あの狂気が蘇ってくるからと。自らが曲を書いているときを、彼女はこう表現する。「ゾーンに入っていく感じ。マインドフルネスと言ってもいいかもしれない。自分が望んでいないことも起こるかもしれない。でも、それにも何か意味がある。そしてその意味を自分で探さないといけない」。 ガガは自己破壊のロマンチシズムには興味がないが、 レノンからはさらにもっと大切なものを学んだという。「勇気ね」と彼女は言う。「強い勇気をもたないと」。
PRODUCTION BY MARY-CLANCEY PACE FOR HEN’S TOOTH PRODUCTIONS. MANICURE BY NAOMI YASUDA AT STREETERS USING MAC. TALENT’S CREATIVE DIRECTOR: BRANDON MAXWELL. TAILORING BY CAROL AI. DIGITAL TECHNICIAN: MATTHEW KANBERGS. PHOTOGRAPHER’S ASSISTANTS:PJ SPANIOL III, MAX DWORKIN, JEFF ROSE AND CHAD HILLIARD. STYLIST’S ASSISTANTS: KELLY HARRIS, RAYNER REYES AND ELIJAH DEROCHE
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