3月15日から東京・TOC五反田メッセに、いよいよ彼らがやってくる。ザ・ローリング・ストーンズの半世紀にわたる活動の全貌を一覧する『EXHIBITIONISM―ザ・ローリング・ストーンズ展』。ロンドン、NY、シカゴなど世界各地を熱狂させた展覧会を、新谷洋子がレポートする

BY YOKO SHINTANI

 もっとも、ここまではミュージシャン関連の展覧会としては標準的で、予想された範囲を出ていないのかもしれない。では本展のユニークさはどこにあるのか? それは何よりもインタラクティブな趣向にある。実寸の再現モデルなど、まるで現場に居合わせているかのような疑似体験ができる仕掛けが、随所に用意されているのだ。たとえば、ストーンズが60年代末から70年代初めにかけて多数の名曲を録音した伝説的スタジオ、オリンピック・スタジオの内部を、実際に用いた楽器を配置して再現。セッションを回想する、メンバーやプロデューサーのインタヴュー音声も添えられている。また楽器に関しては別途十分にスペースが充てられており、今も使われているモデルも含むギターのコレクションがずらりと並ぶさまは壮観だ。1969年に亡くなったブライアン・ジョーンズが弾いていたダルシマー、ミックのハーモニカのコレクションなども展示されている。

画像: 写真の『ミス・ユー』(1978年発表)ほか、ストーンズの曲をミックスできるセクション

写真の『ミス・ユー』(1978年発表)ほか、ストーンズの曲をミックスできるセクション

 このような、凝り性のストーンズ・ラヴァーたちを興奮させるに相違ない演出に対し、予備知識をさほど持ち合わせていなくても楽しめるのが、ヘッドフォンをして『ミス・ユー』や『スタート・ミー・アップ』といったおなじみの曲を、自由にミックスできるセクションだろうか。行列ができること必至だが、曲を解体してミックの声だけをアカペラで聴いたり、あれこれ操作していると、つい夢中になってしまう。そしてクライマックスに控える、3Dコンサートのセクションも然り。このセクションでは、コンサートを見る前に粋な仕掛けが用意されている。そう、3Dメガネを渡された来場者はまず、これまた正確に再現されたバックステージに案内されるのである。メイク台や衣装ラックが並ぶ楽屋を横切り、ケーブルや機材のあいだを通り抜けてステージに案内されて、数万人分の歓声を浴びれば、すっかりメンバーになった気分だ。

画像: ロンドン北東部のバーンズにあったオリンピック・スタジオのレプリカ。『悪魔を憐れむ歌』をはじめ数々の名曲をここでレコーディングしたが、ほかにも多くのアーティストに愛された PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROLLING STONES EXHIBITIONISM JAPAN PRODUCTION COMMITTEE

ロンドン北東部のバーンズにあったオリンピック・スタジオのレプリカ。『悪魔を憐れむ歌』をはじめ数々の名曲をここでレコーディングしたが、ほかにも多くのアーティストに愛された
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROLLING STONES EXHIBITIONISM JAPAN PRODUCTION COMMITTEE

 ちなみにここで使われている映像は、2013年にロンドンのハイド・パーク公演で収録されたもの。本展は回顧展ではあるものの、単に昔を振り返るだけでなくこうした最近のストーンズの姿を打ち出すことで、今年も4月からツアーが控える彼らがれっきとした現在進行形のバンドであり、生きる伝説であることも強く印象付けている。

 そんなふうに見どころの多い『EXHIBITIONISM-ザ・ローリング・ストーンズ展』だが、来場者に最も強烈なインパクトを刻むのはおそらく、入り口近くにある、1962~63年にミックとキースとブライアンが暮らしていたフラットの一室のレプリカなのではないかと思う。建物自体はロンドンのチェルシー地区に現存するため、部屋の広さを正確に見積もって、メンバーの記憶をもとに、可能な限り細かな部分まで再現したそうだ。

画像: 1978年、パリにあるパテ・マルコーニ・スタジオにて傑作アルバム『女たち』をレコーディングしていたストーンズを、ヘルムート・ニュートンが撮影 PHOTOGRAPH BY HELMUT NEWTON

1978年、パリにあるパテ・マルコーニ・スタジオにて傑作アルバム『女たち』をレコーディングしていたストーンズを、ヘルムート・ニュートンが撮影
PHOTOGRAPH BY HELMUT NEWTON

 流し台に積み重ねられた汚れた食器、灰皿の中の吸い殻の山、ベッドの上のシミだらけの寝具からは今にも悪臭が漂ってきそうで、そのリアルな汚さは見る者を唖然とさせる。チャーリーもしばしばここで寝泊まりしていたといい、20歳前後だった彼らが、米国のブルースやR&Bミュージシャンのレコードに耳を傾け、その素晴らしさを語り合い、夢を暖めていたのであろうこの部屋こそ、言わば、ストーンズの生誕の地。当初は憧れのミュージシャンたちの曲をカヴァーして敬意を表し、のちに独自の曲を書き始め、多くの人々の心を動かして、世界を旅して音楽をプレイしてきた。と同時に幾度も試練に直面して、ともに乗り越えて結束を強めていった共同体としての、彼らの原点だ。

画像: 1975年の全米ツアー“Tour of the Americas”に同行した、ミックの友人である英国人フォトグラファー、クリストファー・サイクスがとらえた、ステージでのミックとキース PHOTOGRAPH BY CHRISTOPHER SYKES

1975年の全米ツアー“Tour of the Americas”に同行した、ミックの友人である英国人フォトグラファー、クリストファー・サイクスがとらえた、ステージでのミックとキース
PHOTOGRAPH BY CHRISTOPHER SYKES

 このフラットのレプリカをお気に入りに挙げているキースは、本展に寄せたコメントの中で、次のように語っている。「俺ら自身がこれらの展示を見て抱く気分を、来る人にもぜひ味わって欲しい。『なんてブっ飛んだ体験をしてきたんだ!』ってね」。昨今バンド・カルチャーどころか、ロックンロールそのものの存在感が日に日に薄れ、ヒット・チャートから姿を消しつつある中で、世界を巡回してきた『EXHIBITIONISM-ザ・ローリング・ストーンズ展』は、まさにそんなロック・バンド特有のロマンスのセレブレーション。目で耳で、これを体験すると、結成から60年近くが経ってなお、彼らがローリング・ストーンズをやめられない理由がわかる。

『EXHIBITIONISM ー ザ・ローリング・ストーンズ展 』
会期:2019年3月15日(金)~5月6日(月・振休)
会場:TOC五反田メッセ
住所:東京都品川区西五反田6-6-19
開場時間:
平日・土曜・祝前日/11:00~20:00(最終入館19:30)
日曜・祝日/11:00~18:00(最終入館17:30)
料金:当日券 一般¥3,500、土日祝限定 優先入場チケット¥4,000、VIPチケット¥8,800
電話: 0570-063-050(受付10:00~20:00)
公式サイト

 

This article is a sponsored article by
''.