ドリス・ヴァン・ノッテンのドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』がついに公開。数少ない独立系デザイナーとしても尊敬を集めるドリスのクリエイション、そしてプライベートをカメラがとらえた

BY JUN ISHIDA

――1年間にわたってドリスの公私に密着してみて、彼はどのような人物だと思いましたか?

 ドリスはとてもクリエイティブで洗練された人物です。常に創作することを愛しています。そしてもちろん、完璧主義者です。僕自身もそうですが。成功したければ、卓越した作品を生み出したければ、完璧主義者でなければならない。完璧主義者であるがゆえに苦労することもあります。なぜなら完璧主義者は、常に限界に挑戦し、妥協することを望みませんから。疲れることではあるのですが、ドリスは非常に旺盛な意欲をもっています。私は、彼ほど懸命に仕事をしている人物に会ったことはありませんね。

画像3: 孤高のデザイナー、
ドリス・ヴァン・ノッテンを
撮った監督にインタビュー

――ドリスのクリエイションのどのような部分に最も感銘を受けましたか?

 彼が選ぶ生地とパターンの美しさに感動しました。想像もつかなかった異質なアイデアやスタイルを組みあわせる手腕も素晴らしい。マリリン(・モンロー)とロブスターを組み合わせるなんて、誰も思いつかないですよね?

――撮影時に最も困難だったこと、印象深かったことは?

 完璧主義の追求というのは、時に映像にすることが難しいものです。私はドリスのクリエイションの過程や、最初のアイデアから完成に至るコレクションの発展に興味がありました。創作のプロセスには、多くの試作と探索が含まれています。こうしたプロセスの最初の段階は往々にしてまったく不完全なものですが、それはごく自然なことです。私はそうした”非-完全”の部分を撮影するためにも、ドリスの信頼をかち得る必要がありました。

画像4: 孤高のデザイナー、
ドリス・ヴァン・ノッテンを
撮った監督にインタビュー

――ドキュメンタリーにおけるストーリーはどの時点で作るのでしょう? 最初、あるいは編集の段階ですか?

 ドキュメンタリーのストーリーは、制作のあらゆる段階で考えています。最初のリサーチをして提案書を書く段階でどんな作品になりえるかを視覚化しますが、いざ撮影が始まると、被写体やシチュエーションなどについて間違えた考えを持っていたことに気がつくことがあります。その場合、最初のアイデアは捨てなければなりません。さもなければ現実的な、信頼できる作品とはなりえませんから。ストーリーを作る最終段階で最も重要なのが編集です。編集によって、最初のアイデアと実際にカメラで撮影した興味深い現実とのバランスを保つことができます。この両者から、正しい編集のアイデアが導き出されるのです。

――音楽をレディオヘッドのコリン・グリーンウッドに依頼したのはドリスの提案ですか? コリンが映画のサントラを手がけるのは初めてとのことですが、彼との仕事はいかがでしたか?

 コリンに依頼したのは私のアイデアです。彼は2014年春夏のドリスのショーで演奏をしましたが、それが私の人生で初めて見たファッションショーでした。たちまち魅了されましたね。モデルがキャットウォークを歩いている間、彼はシンプルな即興をベースで演奏していた。それまで私は、ファッションショーはいつも騒がしくて過剰な視覚効果にあふれていると思っていたんですが、このショーではドリスとコリンが作り出した親密さが素晴らしかった。そのこともあって、私はコリンが今回のサウンドトラックにふさわしい人物だと考えたのです。

 仕事を進めるにあたっては、編集を始める前に、コリンがいつくかのサンプルをくれました。まだ映像を見ていないのに、彼はこのドキュメンタリーにふさわしいトーンを見つけていました。いくつかのレイアウトやトラックがあまりに美しかったので、音楽にあわせて映画のほうを編集した部分もあります。私がほかの音楽のレイアウトで編集をした時は、コリンが似たようなものを作曲してくれました。彼とはとてもクリエイティブなコラボレーションをすることができたと思います。

画像5: 孤高のデザイナー、
ドリス・ヴァン・ノッテンを
撮った監督にインタビュー

――この作品では、ドリスを通して80年代から現在にかけてのファッション界も見えてきます。作品中でアイリス・アペフェルやドリス自身もコメントしていますが、現在のファッション界についてどのように思われますか?

 多くの人々と同じように、中国などで安価なファッションを作る工場で働いている人々のひどい労働環境に関する記事を読むと私も嫌悪感を覚えます。しかし、もしドリスのような人物を1年間にわたって観察する機会を得たら、ファッションを違う目で捉えるようになるでしょう。尊敬すべき態度で、クリエイティブに、素晴らしい素材を使いながら仕事をしている人々は現にいます。ドリスはそうした数少ない人々の一人なのです。

画像: PHOTOGRAPHS: ©2016 REINER HOLXEMER FILM - RTBF - AMINATA BVBA - BR - ARTE

PHOTOGRAPHS: ©2016 REINER HOLXEMER FILM - RTBF - AMINATA BVBA - BR - ARTE

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

監督・脚本、撮影、製作:ライナー・ホルツェマー。
1月13日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵館ほか、全国順次ロードショー
公式サイト

 

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