昨年、クロエのクリエイティブ・ディレクターに就任したナターシャが、お気に入りの写真や品物を公開。彼女の美意識を刺激するインスピレーションソースとは

BY ALICE NEWELL-HANSON, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 昨年9月にクロエのクリエイティブ・ディレクターに着任したナターシャ・ラムゼイ=レヴィ。38歳の彼女の美意識は、今までいろいろな意味で謎に包まれていた。パリ出身のナターシャは、このフランスのファッションブランドに来る前、バレンシアガで、続いてルイ・ヴィトンで、師匠ニコラ・ジェスキエールの右腕として15年間働いてきた。ニコラは、大衆的なタッチを加えて創作することを教えてくれたという。2002年にインターンとしてバレンシアガに加わったとき、ニコラが古典絵画にもマライア・キャリーの曲にも等しく情熱を注ぐのを見て、強い印象を受けた。昨年秋に彼女が送り出したのは、大胆でセクシーなコレクション。70年代風のビタミンカラーやアースカラー、小花模様のついた西部開拓時代風のドレス、シャープなAラインミニスカートやデニム、重いメタルのついた気楽なコンバットブーツ。それは、ナターシャがクールなフレンチ・ガールとは何かを深く理解している(個人的にも会得している)ことを証明した。

ギャビー・アギョンがクロエを創設して以来、今回ナターシャが見せたような“言葉にできない魅力”は永遠の憧れでありブランドの根幹でもある。ラグジュアリー・プレタポルテ(高級既製服)というコンセプトも、ほとんどのブランドがクチュールのみに専念していた1952年当時、クロエが初めて提唱した概念だ。自身の感性に関して、「私はいつも少しだけ違和感のあるものを好むの、ブルジョワ的すぎるものではなくて」と語るナターシャ。そのセンスは、ニューウェーブ・シネマからキクラデス文明の遺跡まであらゆるもので満ちている。「私はこのコレクションを未来のヴィンテージって呼んでいるんです」

画像: 「親友のスタイリスト、カミーユ・ビドー=ワディントンが撮った私の写真。 場所は、パリから少し離れた中世の城。私は彼女のスタイリングに夢中だけど、 このときは彼女が私の髪に夢中になっていたわ」 PHOTOGRAPH BY CAMILLE BIDAULT-WADDINGTON

「親友のスタイリスト、カミーユ・ビドー=ワディントンが撮った私の写真。
場所は、パリから少し離れた中世の城。私は彼女のスタイリングに夢中だけど、
このときは彼女が私の髪に夢中になっていたわ」
PHOTOGRAPH BY CAMILLE BIDAULT-WADDINGTON

 フランス人女性がクロエの舵をとるのは、1987年のマルティーヌ・シットボン以来だ。ナターシャはパリ左岸の文学一家に生まれ育ち(父親は書籍や雑誌の編集者をしていた)、今は5歳の息子バルテュスとパリ2区に暮らしている。子どもの頃からの夢であった考古学者になるため歴史学の学位を取ろうと学んでいたが、2000年に名高いファッション専門学校ステュディオ・ベルソーに入学。在学中に、当時バレンシアガのクリエイティブ・ディレクターだったニコラ・ジェスキエールに傾倒し、すぐに“バレンシアガ・ファン”として知られるようになった。「ニコラと一緒に働くことになって彼から学んだわ。ファッション・デザイナーは服をデザインするだけじゃない、全方位的な視野であらゆるものを発展させる仕事なんだと」

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