BY NANCY HASS, PHOTOGRAPH BY ADAM KREMER, STYLED BY TODD KNOPKE, TRANSLATED BY RISAKO OHATA
ロサンゼルス出身のデザイナー、イニ・アーシボングが、ラ・モントル・エルメス社のクリエイティブ・ディレクターであるフィリップ・デロタルの目にとまったのは4年前のことだった。当時アーシボングは、スイスのローザンヌのデザインスクールを卒業したばかりだった。彼のデザインした照明器具や家具のポートフォリオを見たデロタルが、何か新しいことに挑戦してみないかと、話を持ちかけた。馬具の工房として始まり182年の歴史を持つエルメスに、アーシボングはふさわしいデザイナーであった。

「ギャロップ ドゥ エルメス」<PG、アリゲーター>¥1,100,000
アーシボングは今、35歳。スイスのヌーシャテルを活動拠点としている。昨年のロンドンの家具 メーカー「Sé」のコレクションでは、優美な吹きガラスの照明器具や彫刻的な布張りの椅子、円形 テーブルなどを製作し、その洗練された美学が高く評価された。そして今回、エルメスのウィメンズの時計の最新作として「ギャロップ ドゥ エルメス」を手がけた。パリの郊外にあるエルメスのコンセルヴァトワールを訪れた際、デザインの着想を得たのだそうだ。ケースの形状はあぶみを連想させるかのようにアーチを描き、文字盤に描かれた数字はぐるりと一周するにつれ、大きさが変化していく。小さなダイヤモンドがフェイスを縁どるタイプもあるが、装飾が施されていても、この時計の流線形のフォルムには、サラブレッドのような凜とした美しさが際立っている。
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