PHOTOGRAPH BY MASANORI AKAO, HAIKU SELECTION AND COMMENTARY BY YUKI HORIMOTO, CALLIGRAPHY BY KASETSU, TEXT BY HIROKO NARUSE
咲き満ちてこぼるゝ花もなかりけり
―― 高浜虚子
大木の満開の花が想像される。この句の「花」は桜を指すが、今すべてが咲き誇り零(こぼ)れる花片は一つもない。このまま散ることも忘れて栄華を保ち続けるかのような圧倒的な美しさが見る者の心を満たしてゆく。満たしながらも奥ゆかしい静けさが漂っている。その静謐の中に、そこはかとなく優艶が宿る気高さ。
堀本裕樹(YUKI HARIMOTO)
俳人。1974年和歌山県生まれ。俳句結社「蒼海」主宰。句集『熊野曼陀羅』で第36回俳人協会新人賞受賞。近著に『散歩が楽しくなる俳句手帳』(東京書籍)など。句集『一粟』刊行を記念し、書家の華雪氏とともに、句の世界を表現する展覧会『ことばの海で』を東京・九段南のGOTTA九段下にて、4月15日(金)~17日(日)開催
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華雪(KASETSU)
書家。1975年京都府生まれ。文字の成り立ちと現代の事象との交錯を漢字一文字として表現する作品づくりに取り組み、国内外で展覧会やワークショップを開催する。著書に『ATO跡』(between the books)、『書の棲処』(赤々舎)など多数