BY LINDSAY TALBOT, STILL LIFE BY SHARON RADISCH, SET DESIGN BY LEILIN LOPEZ-TOLEDO, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
1907年、フランス・ミュルーズに生まれたジャン・シュランバージェは、子どもの頃いつも絵を描いていた。アーティストになることを夢見ていたが、家業の織物業を継がせたいと考えた両親は、銀行業を習得させるため彼をベルリンへと送った。20代前半、彼は反抗心からパリへ移住し、ラ・ボエシ通りにジュエリー工房をオープン。蚤の市で見つけたマイセン磁器やアンティークのカメオ、ヴィクトリア時代の装飾品などを材料に、花の形をした繊細なブローチを手作業で制作した。
幻想的な彼の作品は、すぐにファッション界から注目されるようになる。1937年、ケント侯爵夫人マリーナが彼のイヤリングをつけているのに気づいたイタリアのファッションデザイナー、エルザ・スキャパレリは、彼に果物や昆虫の形をしたボタンのデザインを依頼した。1947年頃、シュランバージェはニューヨークに拠点を移し、東63丁目にブティックを開く。ソーシャライトで園芸家のバニー・メロン、雑誌編集者のベイブ・ペイリーやダイアナ・ヴリーランドらが熱心なコレクターになった。そして1956年、彼はティファニーの副社長に任命される。最高級の宝石の数々に囲まれた環境の中、キャリアにおいてもっとも印象深く空想的なジュエリーのデザインが実現した。その多くは、何度も旅行で訪れたカリブ海からインスピレーションを得ている。ガーネットがちりばめられた貝殻形のピルケースや、K18イエローゴールドでできたタツノオトシゴのブローチ。ルビーで覆われたクリップ式ジュエリーは、きらきら光るウミウシを模したものだった。
![画像: 1960年刊行の『ファッションズ・オブ・ザ・タイムズ』(『ニューヨーク・タイムズ』別冊のファッション特集号で、『T』誌の前身)に掲載された星形のコーラルブローチ。「ジャン・シュランバージェ」スターアーチンブローチ(参考商品)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2024/02/13/9019ebec8baa88a274530a52ad2952d970e82f33_large.jpg#lz:xlarge)
1960年刊行の『ファッションズ・オブ・ザ・タイムズ』(『ニューヨーク・タイムズ』別冊のファッション特集号で、『T』誌の前身)に掲載された星形のコーラルブローチ。「ジャン・シュランバージェ」スターアーチンブローチ(参考商品)
そして今、ティファニーは改めてシュランバージェのアーカイブに立ち返ることにした。その一例が1956年に作られた星形のクリップオン・ブローチで、中心で結ばれたパヴェダイヤモンドのリボンから、細長いサンゴが枝のように突き出ているのだが、今回、新たにこれを模したシャンデリアイヤリングが発表された。対になったオーバルカットのインペリアルトパーズの周りを、ツノ形に手彫りしたカーネリアンが囲み、それを一列に並んだラウンド・ブリリアントカットのダイヤモンドがつないでいる。「私は宇宙の不規則性を捉えたいのです」とかつて語ったシュランバージェ。それから70年近くがすぎた今もなお、彼のビジョンは強い力を持っている。
![画像: ウニをイメージしたイヤリング。「ジャン・シュランバージェ」スターアーチンイヤリング(参考商品)/ティファニー ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク Tel.0120-488-712](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2024/02/13/f71d13123a3b51e0c6e7075ac4d9e313000eced0_large.jpg#lz:xlarge)
ウニをイメージしたイヤリング。「ジャン・シュランバージェ」スターアーチンイヤリング(参考商品)/ティファニー
ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
Tel.0120-488-712
PHOTO ASSISTANT: CHRISTOPHER THOMAS LINN, SET DESIGNER’S ASSISTANT: JOSEPH MCCAGHERTY, INSET: HENRY CLARKE/THE NEW YORK TIMES
▼あわせて読みたいおすすめ記事