この世のすべてに時間は関わり、多くの物語は、時の長さによって印象深くなる。美しさと精巧さを探究した腕時計が、人生の時間のエピソードに華やぎを添える――

BY NORIO TAKAGI, PHOTOGRAPHS BY SATOSHI YAMAGUCHI, STYLED BY YUKARI KOMAKI

6本の美しい時計と時間の物語 一覧へ

航空機と腕時計の未来を開いた「7秒」の偉業を今に伝える

 アメリカのライト兄弟から遅れること3年、1906年10月23日にパリのバガテル公園から、ヨーロッパ初の動力飛行機「14-bis」が飛び立った。飛行時間はおよそ“7秒”。その設計者にして操縦士でもあったアルベルト・サントス=デュモンはあえて機体の特許を取らず、飛行機の発展に助力した偉人である。初飛行のわずか7秒は、航空史の未来を開いた夢の時間だ。この飛行に先駆け彼は、3代目当主ルイ・カルティエに「操縦中でも時間が見られる時計」をオーダーしていた。そして1904年、懐中時計のように取り出さずにすむ、腕につけられる時計が生まれた。この「サントス」ウォッチは、世界初の実用的男性用腕時計として時計史にその名を残す金字塔。そのデザインと名は、本作に受け継がれている。

画像: サントス デュモン〈43.5×31.4㎜/YG、手巻きムーブメント、YGブレスレット〉¥8,580,000(予定価格、6月発売予定)/カルティエ

サントス デュモン〈43.5×31.4㎜/YG、手巻きムーブメント、YGブレスレット〉¥8,580,000(予定価格、6月発売予定)/カルティエ

 1904年当時の姿を受け継ぐ外観に、極薄の手巻きムーブメントを搭載。スクエアケースも薄くなり、ドレッシィな印象がより強い。これまでストラップのみだった同シリーズに、ブレスレットが初登場。リンクを15列連ねたメッシュ状がエレガントかつしなやかでもあり、つけ心地が柔らか。

カルティエ カスタマーサービスセンター
TEL.0120-1847-00

わずか「5分」で始まる愛を、時計に託して詩的に表現

 人は誰かに魅了されたとき、ドーパミンとオキシトシンが分泌されるという。前者は瞬時に、後者は5分以上かけて放出される。つまり、人は最短“5分”で恋に落ちる。ヴァン クリーフ&アーペルの創業者エステル・アーペルとアルフレッド・ヴァン クリーフも、わずかな時間で惹かれ合ったのだろうか? 彼ら夫妻が1895年に誓った愛が、メゾンの永遠のテーマ。加えて自然やダンス、妖精などをモチーフとして詩的な時計を創出してきた。このモデルは分針代わりの蝶が円弧状のインデックスに沿って進み、60分をカウントしたら瞬時に0分位置に戻り、60分位置の蝶と刹那の逢瀬と別れを繰り返す仕掛け。自然と時の流れの結びつきが、蝶の幸せな再会で愛らしく表現された。

画像: レディ ラッキー スプリング パピヨン〈33㎜/YG、ダイヤモンド、MOP、自動巻きムーブメント、アリゲーターストラップ〉¥16,896,000/ヴァン クリーフ&アーペル

レディ ラッキー スプリング パピヨン〈33㎜/YG、ダイヤモンド、MOP、自動巻きムーブメント、アリゲーターストラップ〉¥16,896,000/ヴァン クリーフ&アーペル

 放射状装飾とブルーの彩色を施したマザーオブパール(MOP)を背景に、ホワイトのMOPとイエローゴールドで形作った3輪のプラムの花が咲き誇る。その香りにつられた蝶がレトログラード式の分針となり、スズランの中に現れる数字でアワーを示す仕組みだ。工芸的にも機械的にも、精緻を極めた逸品。

ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
TEL.0120-10-1906

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