BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA
湯島、東日本橋、人形町……。マッキー牧元が案内する「東京の東」、注目の美味処は和食のみにあらず。後編では、ナチュラルワインとともに味わうガツンとボリューミーな肉料理、新鮮この上ない内臓料理が人気のイタリアン、そして30年以上にわたって体と心にしみわたるやさしい味を提供する老舗韓国料理店、の3軒を紹介する。
東東京の個性的な料理は、和食だけではない。肉と野菜への欲求が高まったら、必ず出向くのは「ラ ピヨッシュ」で、こちらでまず頼むのは、東京でも有数のおいしさを誇るサラダである。小松菜は嚙む喜びと味わう喜びを伝え、かぶやにんじんは驚くほどみずみずしく、マッシュルームは、今胞子を発散させるかのように生き生きとし、コールラビは梨に似た食感で、甘みを舌にしたたらせる。血脈に養分が送り込まれる実感に、目を細め、笑う。的確な量のビネグレットの酸味と塩気が、野菜の命を引き出し、われわれが生かされていることを自覚させる。そんなサラダである。そのすべてが自然農法で作られた野菜なのだという。

「自然なサラダ」¥1,600は、その日の新鮮野菜がボウルに山盛りに
そしてこの店に来たら、肉を頼まなくてはいけない。宮崎シェフは、じっくりと炭火で焼きながら、肉の滋味を最大限に引き出す肉焼き名人である。たとえば短角牛の香ばしく焼きあがった表面に歯を立てれば、肉汁が舌に流れる。だがそこからが真骨頂で、嚙めば嚙むほどに肉汁が湧き、牛の滋養が体を駆け巡る。そこへ店主・林さんが選んだ自然派ワインを流し込めば、誰もが人生って素敵だな、と思うはずである。

鹿肉のミンチとほうれんそうを網脂で包んだ北ローヌの地方料理「鹿のカイエット」¥2,380。弾力ある鹿肉のミンチは、弾けるような肉汁の塊!

(写真左)「岩手 田村牧場の短角牛 炭火焼き」(100g ¥1,780) は、300gからが基本
(写真右)フランスでナチュラルワイン造りを学んだ林真也さんが、ワインも食材も“より自然なもの”をコンセプトに、2013年にオープン。ヨーロッパの「おいおい! ぐらいのポーションがかっこいい」と、肉も野菜もボリューム満点。大皿を大勢でわいわい囲むのが楽しい店だ。生産者の名前をボードに記した食材はどれも新鮮そのもの。ワインはナチュラルのみで、都内有数の品揃えを誇る
ラ ピヨッシュ
住所:東京都中央区日本橋蛎殻町1-18-1
TEL. 03(3669)7988
営業時間:17:30〜25:00 (LO 23:00)、
16:00〜24:00頃 (土・日曜・祝日/LO 23:00)
不定休