美味を訪ねて日々、東奔西走するタベアルキスト、マッキー牧元がいま注目するのは「東京の東」である。信頼の老舗に加えて、新店も続々。流行と一線を画す"己の味"を磨く職人たちが、今宵も腕を鳴らして待っている

BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 さて最後にご紹介したいのは、韓国料理の店である。「韓灯」は、東京に数ある韓国料理店の中で、唯一、古きよき韓国料理の良心を受け継いでいる店といっていいだろう。どの料理も、丹念に手間暇をかけて生まれた、やさしいうま味に満ちている。たとえばどの店にもあるテールスープから異なる。大方の韓国料理店では白濁したスープを出すが、この店のそれは、濁りがいっさいない。まったく淀みがない透き通ったスープが湯気をくゆらせ、馥郁(ふくいく)とした香りを漂わせている。それは、高価な和牛のテールと野菜を使い、火加減を調整し、沸く寸前の温度を保ちながら鍋につきっきりで10時間炊いた結実なのである。たまらず一口飲む。

画像: 名物の「テールスープ」¥1,300は、すっと喉もとに消えるような澄んだ味

名物の「テールスープ」¥1,300は、すっと喉もとに消えるような澄んだ味

画像: 九州・小倉で17年、月島に移転して14年の老舗韓国料理店。シェフの金英徳(キム・ヨンドク)さん、オモニの金順貞(キム・スンジョン)さんのこだわりで化学調味料はいっさい使わない。近年主流のガッツリ系と一線を画すやさしい味は、舌に体に染みわたる。鶏一羽を丸ごと煮込んだタッカンマリ¥4,980(要予約)も、シメの雑炊まで絶品

九州・小倉で17年、月島に移転して14年の老舗韓国料理店。シェフの金英徳(キム・ヨンドク)さん、オモニの金順貞(キム・スンジョン)さんのこだわりで化学調味料はいっさい使わない。近年主流のガッツリ系と一線を画すやさしい味は、舌に体に染みわたる。鶏一羽を丸ごと煮込んだタッカンマリ¥4,980(要予約)も、シメの雑炊まで絶品

 溶け込んだコラーゲンの甘みが舌をゆっくりと包み込み、喉へと落ちていく。スープの滋養が細胞へと染みわたり、心が安らかになっていく。体の底から幸せがせりあがってくる。キムチ、ポッサム、チヂミ、タッカンマリ。チゲ類、焼き肉。「韓灯」ではすべての料理が、慈愛の味に満ちている。都内のどの店より、うま味がきれいで深みがあり、味に誠実が染みている。それは、利便を優先する現代が失った、贅沢な味である。そう、東東京の店は、都心に住むわれわれが忘れかけていた「誠実」を伝えてくれるのである。

画像: (写真左)キムチと一緒に野菜で包み、特製のヤンニョムだれで食べる「皮付き豚のポッサム」(小) ¥1,980 (写真右)黒毛和牛のミンチ入りが珍しい「山のチヂミ」(小) ¥1,200は、もちもちふっくらの食感がたまらない

(写真左)キムチと一緒に野菜で包み、特製のヤンニョムだれで食べる「皮付き豚のポッサム」(小) ¥1,980

(写真右)黒毛和牛のミンチ入りが珍しい「山のチヂミ」(小) ¥1,200は、もちもちふっくらの食感がたまらない

韓灯(ハンドゥン)
住所:東京都中央区月島2-8-12 B1階
TEL. 03(3536)6635
営業時間:17:30〜23:30(LO 23:00)
定休日:月曜(祝日の場合は営業。火曜振替は不定休)
公式サイト

※記事中の料理は、季節により、またはメニュー改変により提供されていない場合があります

マッキー牧元
1955年東京都生まれ。焼きとり、トンカツ、居酒屋からフランス料理まで、美味を渉猟してやまない自称「タベアルキスト」。雑誌寄稿やラジオ、テレビ出演、講演会、料理開発と多忙な合間をぬい、料理人の"隠れたファインプレー"を発見することを無上の喜びとして、たゆまず食べ歩く日々。

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