フランス版『ミシュラン ガイド』において50年連続で三ツ星を獲得した「トロワグロ」。その“栄光”の秘訣は何だったのか。オーナーシェフ、ミッシェル・トロワグロに聞いた

BY KIMIKO ANZAI

 では、なぜこのような“偉業”を成し得ることができたのかと彼に問うと、こんな答えが返ってきた。「流行を追わなかったから、だろうね。『トロワグロ』の料理は、祖父から受け継がれてきたものなんだ。軸になっているのはシンプルであること、素材を大切にすること、料理の行程に正確であること。この3つだけ。あとはオーブン・マインドであることだね。新しいスパイスや技術も恐れずに受け入れる。それを心がけ、日々きちんと料理に向き合っていれば、おいしい料理ができると信じているんだ」

画像: 「仔牛とロメインのフィッセル」。やわらかな仔牛のロースをロメインレタスで包んだ一品。ジュ・ド・ヴォーとシェリービネガーのソースで。昨年秋のランチメニューから

「仔牛とロメインのフィッセル」。やわらかな仔牛のロースをロメインレタスで包んだ一品。ジュ・ド・ヴォーとシェリービネガーのソースで。昨年秋のランチメニューから

画像: ヨーグルトやグリーンレモンで作られたチュイールを蝶に見立てたデザート「パピヨン」。下にはフレッシュカモミールのグラスや、フレッシュエルダーフラワーのパルフェ。“蝶が花に集まるイメージ”だという。ミシュラン三ツ星50周年記念コースから

ヨーグルトやグリーンレモンで作られたチュイールを蝶に見立てたデザート「パピヨン」。下にはフレッシュカモミールのグラスや、フレッシュエルダーフラワーのパルフェ。“蝶が花に集まるイメージ”だという。ミシュラン三ツ星50周年記念コースから

 彼と話していると、その気さくさと謙虚な人柄に魅了される。誰の影響なのかと尋ねると、「父かな」と一言。「幼い頃から、父は私の憧れだった。料理人としても、人間としてもね。父は慎み深く、謙虚だった。そして忍耐強かった。また、父には自分とは異質なものを受け入れるという寛容さがあった。私は、そんな父の背中をずっと見て育ってきたんだ。自分もこうありたいと、いつも思っていたから、ふるまいをほめられると本当にうれしくなるよ(笑)」

画像: 「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」 フランス国外ではここ西新宿のレストランと、小田急百貨店のカフェ、ブティックでトロワグロの味に出合うことができる。「トロワグロ」のエスプリに日本の四季を重ねたレストラン「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」の料理にはファンが多く、『ミシュランガイド東京』では“二ツ星”の評価を得ている 住所:東京都新宿区西新宿2-7-2 ハイアット リージェンシー 東京 1階 電話:03(3348)1234(ホテル代表) 営業時間:12:00~13:30、18:00~20:00 定休日:火・水曜(祝日を除く) www.troisgros.jp PHOTOGRAPHS: COURTESY OF TROIGROS

「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」
フランス国外ではここ西新宿のレストランと、小田急百貨店のカフェ、ブティックでトロワグロの味に出合うことができる。「トロワグロ」のエスプリに日本の四季を重ねたレストラン「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」の料理にはファンが多く、『ミシュランガイド東京』では“二ツ星”の評価を得ている

住所:東京都新宿区西新宿2-7-2 ハイアット リージェンシー 東京 1階
電話:03(3348)1234(ホテル代表)
営業時間:12:00~13:30、18:00~20:00
定休日:火・水曜(祝日を除く)
www.troisgros.jp
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF TROIGROS

 料理人として最大の栄光を手中に収め、今なお料理界のトップを走り続けるミッシェル・トロワグロ。今後の“星”の行方について聞くと、こう語ってくれた。

「夢見たことはすべて叶っているから、大きなことは何も望んではいないよ。正直、つらいこともあったけど、妻がいたから乗り越えられた。あとは、セザールとレオ、ふたりの息子が幸福に人生を送ってくれたらそれでいい。ふたりとも料理人の道を選び、私の跡を継いでくれたけれど、“星”のことは気にせず、仕事と私生活のバランスがとれた人生を送って欲しいと願っている。“三ツ星”は料理人にとっては幸福なことだけれど、“星”が人を幸福にしてくれるわけではない。幸福にしてくれるのは家族と仲間だと、私は思っているんだ」

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