BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
マルセル氏は、この畑のポテンシャルを最大限に生かすために、10年前には果汁の対流を利用してピジャージュ※をソフトに行なうことのできる特殊な構造の発酵槽を開発、その特許も取得したという。
「ローヌのワインは、果実味の芳醇さ、なめらかさ、そしてやさしい甘みが魅力です。しかも、アペラシオンや畑によって、生まれるワインの味わいはまったく違う。私たちは、土地の個性が顕著に表れるような、そんなワインをつくりたいと思っているのです」
ドメーヌの発展はさらに続き、近年では四世紀続く老舗「シャトー・ド・ナリス」を獲得した。ここの「ラ・クロー」という畑は、シャトー ヌフ・デュ・パプ最上の畑として知られている。「今は、息子のフィリップが夢中になってここで仕事をしていますよ」とマルセル氏は笑顔を見せる。
「私たちは、家族だけでワイナリーを運営してきました。三代にわたってワインづくりができることを、とても幸せに感じています。先日、フィリップの子どもが、『僕は大きくなったらおじいちゃんと一緒にワインをつくる』と言ってくれたのです。これ以上の幸せはありません(笑)」
※ ピジャージュ
ワインの発酵中、タンク上部に浮かんでくるブドウの皮や種、果肉の塊などを果汁に沈める作業。これにより、色素やタンニン、香りなどを十分に抽出することができる
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