世界のスイーツを牽引するピエール・エルメの「イスパハン」と、次世代の秋田の日本酒を担う「NEXT FIVE」がタッグを組んだ。互いに培ってきた技と心意気を重ね合わせ、崇高なマリアージュが実現

BY YUKINO HIROSAWA

 革新的かつ豊かなアート性が発揮されたお菓子を次々と世に送り出してきたピエール・エルメ(以下エルメ)。彼は“パティスリー界のピカソ”として鬼才ぶりを称賛されるが、一方で、時代の先を見据える感覚の鋭さ、先見の明の才にかけては“パティスリー界の坂本龍馬”ともいえるであろう。今から22年前、「ピエール・エルメ・パリ」の東京でのブランドスタート時、彼はインタビューでこう答えていた。「日本の食材でスイーツを作るとしたら? 山椒やワサビは気になる存在だね」と。当時、国内でも注目を集めることのなかった食材を、ましてやスイーツに!? と多くの人が首をかしげたものだ。時を経た今、スイーツに和のスパイスや素材をきかせるのは、世界のニュースタンダードになった。

画像: 秋田を訪れたピエール・エルメの日本法人社長のルデュ氏(右)、パティシエのドラピエ氏(左)と山本酒造店の山本友文氏(中央)。エルメ氏は新型コロナ感染拡大防止のため、今回の来日は断念せざるを得なかったが、オンラインで協議を重ね続けてきた PHOTOGRAPH BY YOMA FUNABASHI(NEKKO SHASHINKAN)

秋田を訪れたピエール・エルメの日本法人社長のルデュ氏(右)、パティシエのドラピエ氏(左)と山本酒造店の山本友文氏(中央)。エルメ氏は新型コロナ感染拡大防止のため、今回の来日は断念せざるを得なかったが、オンラインで協議を重ね続けてきた
PHOTOGRAPH BY YOMA FUNABASHI(NEKKO SHASHINKAN)

 親日家でもあるエルメ氏は大の日本酒好きで、造詣も深い。アルザスで四代続くパティスリー&ブーランジュリーの家に生まれた彼が、「とらや」の次に挑んだのは、秋田発の「NEXT FIVE」とのコラボレーション。江戸時代の伝統的手法で日本酒造りを行う新政酒造の佐藤祐輔氏、「春霞」でおなじみの栗林酒造店の栗林直章氏、山本酒造店の山本友文氏、秋田醸造の小林忠彦氏、福禄寿酒造の渡邉康衛氏が5名で構成する、次世代を担う酒蔵集団だ。”スイーツと日本酒”とは、一見つながりを連想しにくい組み合わせだ。だがエルメ氏もNEXT FIVEも、ともに代々続く伝統を守りながらも、センセーショナルな商品を次々発表する作り手だ。その交点からプロジェクトが生まれた。

画像: 左から 山本友文氏(山本酒造店)、栗林直章氏(栗林酒造店)、小林忠彦氏(秋田醸造)、佐藤祐輔氏(新政酒造)、渡邊康衛氏(福禄寿酒造) PHOTOGRAPH BY YOMAFUNABASHI(NEKKO SHASHINKAN)

左から 山本友文氏(山本酒造店)、栗林直章氏(栗林酒造店)、小林忠彦氏(秋田醸造)、佐藤祐輔氏(新政酒造)、渡邊康衛氏(福禄寿酒造)
PHOTOGRAPH BY YOMAFUNABASHI(NEKKO SHASHINKAN)

 ところでスイーツに合わせる飲み物と言えば、コーヒーや紅茶が一般的。日本酒とのペアリングはあまり例を見ない。しかし、近頃ではNEXT FIVEを含む新世代の努力により、日本酒はその味わいにフレッシュさがもたらされると同時に磨きがかかり、今や本場の気鋭のフレンチをはじめ、世界各地のガストロノミーでも提供される存在に。今回のペアリングには数多くのエルメのスイーツの中でも、素材の組み合わせと味が最もデリケートな「イスパハン」が選ばれた。

画像: NEXT FIVEが栽培する最高級の酒米を手にとり、吟味する。今回、貴醸酒に使われた酒米を精米したときに派生した米粉をケークの材料に用いた COURTESY OF NEXT FIVE

NEXT FIVEが栽培する最高級の酒米を手にとり、吟味する。今回、貴醸酒に使われた酒米を精米したときに派生した米粉をケークの材料に用いた
COURTESY OF NEXT FIVE

 スイーツも日本酒も、最上の風味を生み出すために必要なのは原料のよさ、大事なのは人の手や感覚である。根本にあるものは同じだが、それぞれの個性溢れるクリエーションや世界観を擦り合わせ、美しいハーモニーを実現するには、様々な試行錯誤を要する。約1年をかけて誕生したのが、重箱を思わせる白いボックスに入った「Ispahan 2020」¥13,800(税込)。このコラボレーション用に開発された「ケーク イスパハン」は、小麦粉に加え、ピエール・エルメ・パリでは珍しく米粉(しかも今回の日本酒の原料である酒米)を一部使用。フランスで製作した特注の型に流し込み、焼成。仕上げに艶やかなグラサージュを纏わせた、ファンタスティックなケーキである。このケーキに合わせる日本酒は、水だけでなく日本酒を加えて仕込む、極めて贅沢な貴醸酒。仕込みに用いた酒は、市場で手に入れるのは不可能に近いといわれる、新政酒造の「亜麻猫」。酒米は栗林酒造店の「美郷錦」、水は福禄寿酒造、レシピは秋田醸造、総指揮をとるホスト蔵は山本酒造店が担当。NEXT FIVEの力を集めた何とも華やかな日本酒が誕生した。

画像: 焼きあがったケークに薔薇色のグラサージュを施す。「ケーク イスパハン」の仕上げのプロセス PHOTOGRAPH BY KOSUKE MAE

焼きあがったケークに薔薇色のグラサージュを施す。「ケーク イスパハン」の仕上げのプロセス
PHOTOGRAPH BY KOSUKE MAE

 しっとりもっちりとした生地を口に含めば、どこか妖艶なライチとフランボワーズの甘酸っぱさ、ロマンチックなバラの香りが体内を駆け巡る。そこへとろみのある甘さに心地よい酸が立つ、貴醸酒の香気が花開くように立ちあがり、やがて溶け合う。そもそもは別世界のものなのに、ペアリングさせると違和感など何ひとつない。地続きの遥かな甘い新世界を見せてくれる。

画像: 「Ispahan 2020」¥13,800(税込) 現在、「ピエール・エルメ・パリ 青山」で先行販売中。12月1日(火)より一般発売予定 ※ 12月1日以降の販売詳細についてはこちらよりお問い合わせください 11月30日(月)までの期間限定で「ピエール・エルメ・パリ 青山」の2Fにあるカフェ「Heaven」にて、貴醸酒「Ispahan 2020」にケーク イスパハン、貴醸酒をしぼった酒粕のマカロンとアイスをセットで楽しめる「デギュスタシオン イスパハン 2020」¥2,400(税・サービス料込)が味わえる PHOTOGRAPH BY TAKUGO MIWA  「ピエール・エルメ・パリ 青山」 住所:東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 1F・2F TEL.03(5485)7766

「Ispahan 2020」¥13,800(税込)
現在、「ピエール・エルメ・パリ 青山」で先行販売中。12月1日(火)より一般発売予定
※ 12月1日以降の販売詳細についてはこちらよりお問い合わせください

11月30日(月)までの期間限定で「ピエール・エルメ・パリ 青山」の2Fにあるカフェ「Heaven」にて、貴醸酒「Ispahan 2020」にケーク イスパハン、貴醸酒をしぼった酒粕のマカロンとアイスをセットで楽しめる「デギュスタシオン イスパハン 2020」¥2,400(税・サービス料込)が味わえる
PHOTOGRAPH BY TAKUGO MIWA

「ピエール・エルメ・パリ 青山」
住所:東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山 1F・2F
TEL.03(5485)7766

 スイーツも日本酒も、人を笑顔にする力を宿すもの。繊細かつ緻密な掛け合わせで両者を楽しむ“美味しいアートピース”。さまざまなできごとが起こった2020年の年の瀬、至福の甘美なひとときを自身への褒美に、そして大切な人の笑顔を願い、贈りたい。

問い合わせ先
ピエール・エルメ・パリ 青山
TEL.03(5485)7766
公式サイト

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