季節の野菜が持つ本来の美味しさを引き出すことを知り尽くしている料理家・平野由希子さんが、季節ごとの旬の野菜で作るお料理と、相性のよいお酒のペアリングを、時代のトレンドに合わせた視点で提案

BY YUKIKO HIRANO

春におすすめのレシピ

【1】グリーンアスパラガスのレシピ×マインクラング グリューナー・ヴェルトリーナー 2021

 緑のまぶしい季節。艶やかな緑色のグリーンアスパラガスが旬を迎える。通年目にする野菜だけれど、なんと言っても国産の採れたては抜群のおいしさだ。佐賀、長崎などの九州産に始まり、長野、栃木と北上し、生産量第一位の北海道の路地ものは5月がシーズンだ。「グリーンアスパラガスに合うワインと言えば、まず挙がるのがグリューナー・ヴェルトリーナーですね。『緑のワイン』とも言われる爽やかさが特徴。野菜全般、そして和食に合うので、この連載では欠かせない品種のワインです。緑の野菜にはこのワインがあれば間違いないと言ってもいいくらい。もともとアスパラガスとは相性が良いのですが、さらにひと手間を加えて、食べるとワインが飲みたくなるようなレシピをご紹介しますね」(平野さん)

■レシピ1:アスパラガスの昆布締め
ゆでたアスパラガスを昆布に挟んでひと晩置くだけ。昆布の味がアスパラガスにじんわりと染み、爽やかなのに、濃い旨味の余韻。ワインを合わせてみると、ミネラルが重なり、おいしさの相乗効果が生まれる。

画像: 昆布の旨味がじっくりと染み込んだ、贅沢な大人のおつまみ。茎と穂先では硬さが異なるので、食感の違いも味わい深い

昆布の旨味がじっくりと染み込んだ、贅沢な大人のおつまみ。茎と穂先では硬さが異なるので、食感の違いも味わい深い

<材料 作りやすい分量>
グリーンアスパラガス2〜3束、昆布10㎝×25㎝ 2枚、塩

<作り方>
 アスパラガスは根元の硬いところは切り落とす。下の方の硬い皮をピーラーでむく。はかま(茎にある三角の部分)を取り除く。
 沸騰した湯に塩を入れ、アスパラガスの根元を20〜30秒つけてから全体を湯に入れ、1〜2分ゆでる。冷水にとり、水気を拭く。
 昆布は濡れぶきんで拭いておく。
 昆布でアスパラガスをはさみ、密着するように皿などの重石を乗せて一晩おく。食べやすい大きさに切る。

画像: 昆布は冷凍保存をして、再利用できる。アスパラガス以外にも絹さや、青菜、チーズなどもおすすめ

昆布は冷凍保存をして、再利用できる。アスパラガス以外にも絹さや、青菜、チーズなどもおすすめ

■レシピ2:アスパラとほたるいかの春巻き
 春巻きの中で火を通したアスパラガスは香り、甘味が閉じ込められ、その味の濃さに驚くこと請け合い。旬のほたるいかを取り合わせた春巻きは、初夏の最強つまみだ。

画像: ほくほくのアスパラとむっちりとしたほたるいか、サクサクの春巻きの食感。そこに流し込むワインの柑橘のアロマが心地よく口中を満たしていく

ほくほくのアスパラとむっちりとしたほたるいか、サクサクの春巻きの食感。そこに流し込むワインの柑橘のアロマが心地よく口中を満たしていく

<材料 6本分>
グリーンアスパラガス6本、ほたるいか12尾、春巻きの皮6枚、小麦粉・水 各大さじ1、揚げ油適量

<作り方>
 アスパラガスは根元の硬い部分を切り落とし、下の方の硬い皮をピーラーでむき、1㎝幅の斜め切りにする。ほたるいかは目をとる。水溶き小麦粉の材料を混ぜる。
 春巻きの皮の手前中央にアスパラガス1本分とほたるいか2尾を置いて両端を折り畳み、くるくると巻く。巻き終わりを水溶き小麦粉で留める。同様に5本作る。
 フライパンに揚げ油を大さじ3〜4入れ、中温(160℃)に熱し、を入れて約2分、からりとするまで揚げる。取り出して油をきり、器に盛る。塩適宜を添える。

画像: 春巻きの皮で巻くときは、手前の位置に具を置いて。緑色のアスパラガスと、ほんのり赤みを帯びたほたるいかのコントラストで見た目も楽しい一品に

春巻きの皮で巻くときは、手前の位置に具を置いて。緑色のアスパラガスと、ほんのり赤みを帯びたほたるいかのコントラストで見た目も楽しい一品に

おすすめのお酒:マインクラング グリューナー・ヴェルトリーナー 2021

画像1: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

【2】そら豆のレシピ×ヴィトフスカ スケルリ 2019

 さやが空を向いて上に伸びることからその名がつけられたそら豆。初夏の代名詞とも言える豆だ。「関東では5月から6月が旬とされているのですが、温暖な鹿児島産は早いものでは年末から出回ります。鹿児島の生産量は全国一位なので、早い時期から目にすることが多いですね。最近は、そら豆のレシピを紹介する時期を少し前倒しにすることにしました」(平野さん)

 そら豆のおつまみといえば、塩ゆでだが、ここ数年はさやのまま丸ごと焼くのも定番とも言えるほど人気に。さて、今回はどんなアプローチで?「野菜の食べ方も進化していきますね。そら豆はさやが大きく、捨てるところが多いので、どうにかしたい気持ちにもなります。今回は、さやのわたを食べるレシピも考えてみました。そして、ビールもいいのですが、ヴィトフスカという魅力的なぶどうで醸したワインを合わせて、そら豆の新たな魅力を引き出してみたいと思います」(平野さん)

■レシピ1:そら豆の衣焼き からすみがけ
チーズ入りの衣をからめてさっくり揚げ焼きに。ほっくりとしたそら豆は、かき揚げにも負けないおいしさだが、作りやすさは比較にならないほど簡単。

画像: そら豆の風味にからすみパウダーが重なり、そこにワインのヴィトフスカで奥深い味わいに追い討ちをかける!

そら豆の風味にからすみパウダーが重なり、そこにワインのヴィトフスカで奥深い味わいに追い討ちをかける!

 印象的な牛柄の緑ラベル。マインクラングはオーストリアでいち早くビオディナミ農法を取り入れてきたワイナリー。農家所有の牛を堆肥にした糞を調合した天然肥料を畑に利用。牛はマインクラングの有機農法の象徴でもあることからモチーフに使われている。「ライムのような酸味にハーブの香り、程よいミネラル感と苦味がとてもバランスがいい。甲州ワインに通じる要素も多いですね。和食や日々の食事に合う、毎日飲んでもいいような軽やかさも魅力です」(平野さん)

<材料 2人分>
そら豆6さや、[パルミジャーノチーズ、薄力粉、水 各大さじ2]、オリーブオイル大さじ2〜3、からすみパウダー適量

<作り方>
そら豆はさやから出し、5秒程度湯通しをして、薄皮をむく。*薄皮は少々むきづらいが、湯通しをするとむきやすくなる。
ボウルにすりおろしたパルミジャーノチーズ、薄力粉、水を加えてさっくりと混ぜる。
フライパンにオリーブオイルを熱し、の衣をくぐらせたそら豆を並べ、弱めの中火で表面にうっすらと焼き色がつくくらいまで両面焼く。
器に盛り、からすみパウダーを全体にふる。

■レシピ2:そら豆のスパイス焼き
香ばしくスパイス焼きしたそら豆は薄皮ごといただく。クミンとガラムマサラの香りをまとったそら豆は極上のワインつまみに。

画像: さやは器の役割だけではない。見た目には生の時と変わらないが、火を通したわたはぬるっとしていて甘い。なくても料理として成立するが、ぜひお試しあれ

さやは器の役割だけではない。見た目には生の時と変わらないが、火を通したわたはぬるっとしていて甘い。なくても料理として成立するが、ぜひお試しあれ

<材料 2人分>
そら豆6さや、オリーブオイル大さじ1、塩小さじ1/3、クミンシード小さじ1、ガラムマサラ小さじ1/2

<作り方>
そら豆はさやから出す。さやはフライパンに並べて、皮に焼き色がつくまで強火で焼く。
別のフライパンにオリーブオイルを入れて熱し、そら豆を並べて焼く。中火〜弱火で焼き色がついたら返し、5〜6分かけて焼き色がつくまで焼く。
塩、クミンシード、ガラムマサラを加えて炒め合わせる。
さやの上にを乗せる。

画像: クミンシードとガラムマサラのスパイシーな香りが、そら豆の新しい味わいを引き出す

クミンシードとガラムマサラのスパイシーな香りが、そら豆の新しい味わいを引き出す

画像: スパイスオイルの染みたわたはスプーンでこそげるようにして食べる。これまで捨てていたさやの美味しさをぜひ味わって!

スパイスオイルの染みたわたはスプーンでこそげるようにして食べる。これまで捨てていたさやの美味しさをぜひ味わって!

おすすめのお酒:ヴィトフスカ スケルリ 2019

画像2: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 イタリア、フリウリの土着品種ヴィトフスカ。多くの生産者が果皮とともに長期間マセラシオンして醸す。ヴィトフスカに特化した醸造家もいる品種だ。「そら豆ですから、ビールでもいいし、さまざまな白ワインと合わせることもできます。今回は大好きなヴィトフスカをそら豆のパートナーに選びました。果実味、甘味は控えめで、オレンジではあるけれど、強くはありません。ミネラル感が強いけれど、しなやか。スパイスやからすみを使ったそら豆料理の味わいを引き上げてくれるようなワインです。そして、何よりワイン自体が素晴らしくおいしい。そら豆でヴィトフスカ。これはなかなか贅沢ですね」(平野さん)

【3】新玉ねぎのレシピ×日本酒 奥羽自慢 吾有事(わがうじ)

 新玉ねぎのシーズンだ。色白でみずみずしく、生でもおいしい味わいで人気が高い。一般的な玉ねぎは乾燥させることで保存性を高め、一年中食べることができるが、新玉ねぎを味わえるのは春の収穫後すぐに限られる。「まずはやっぱり生で食べましょうか。定番のオニオンスライスにパルミジャーノチーズをたっぷりのせ、オリーブオイルを回しかけました。新玉ねぎの魅力は辛味と甘味。その辛味は合わせるお酒を選ぶのですが、これを生かしたいと考えました。今回合わせたのは吾有事(わがうじ)という若き作り手が手がける山形の酒。軽快だけれど、小気味よい酸味と確かな旨味があります。お互いに味を引き立てつつ、玉ねぎの味わいが口の中でスッと溶けて消えていくのが心地よく、後を引きます」(平野さん)

■レシピ1:新玉ねぎとパルミジャーノチーズのサラダ
 定番のオニオンスライスにひと工夫で粋な酒の肴に。血液をサラサラにしてくれる成分の硫化アリルは熱に弱いので、生で食べるのが栄養面からもおすすめだ。

画像: シャキシャキとした歯ごたえとともに、ほどよい辛味とフレッシュな甘味が口の中に広がって、手が止まらない美味しさ!

シャキシャキとした歯ごたえとともに、ほどよい辛味とフレッシュな甘味が口の中に広がって、手が止まらない美味しさ!

<材料 2人分>
新玉ねぎ1個、クレソン1束、かつお節ひとつかみ、パルミジャーノチーズ、オリーブオイル、醤油各適量

<作り方>
玉ねぎは薄切りにし、水に5分さらした後、水気をよく切る。クレソンをざく切りして混ぜる。
器に1の半量を盛り、削り節をのせる。ピーラーなどでチーズを削って散らし、これをもう一度繰り返す。オリーブオイル、醤油を回しかける。

■レシピ2:新玉ねぎの鍋ロースト
 新玉ねぎは加熱した甘さも魅力。平野流は玉ねぎの断面にキャラメリゼを加えることがポイント。じっくり火の通った甘さと香ばしさをご堪能あれ。

画像: こんがりとキャラメリゼした玉ねぎは、コクのある甘味が引き出されたぜいたくな味わい

こんがりとキャラメリゼした玉ねぎは、コクのある甘味が引き出されたぜいたくな味わい

<材料2人分>
新玉ねぎ2個、ローリエ4枚、バター大さじ1、塩、黒こしょう

<作り方>
新玉ねぎは横半分に切る。
厚手の鍋にバターを熱し、切り口を下にして中弱火で焼く。焼き色がこんがりとついたら返して、塩少々をふり、ローリエを乗せ弱火で20分ふたをして加熱する。
火を止めてそのまま10分おき、余熱でさらに火を通す。

画像: 付け合わせとしても最強の新玉ねぎロースト。スカモルツァチーズをフライパン焼きしたものを添えれば、酒の進む一品料理に

付け合わせとしても最強の新玉ねぎロースト。スカモルツァチーズをフライパン焼きしたものを添えれば、酒の進む一品料理に

■おすすめのお酒:日本酒 奥羽自慢 吾有事 わがうじ 純米大吟醸 さんみ

画像3: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 山形県鶴岡に構える蔵。「吾有事」の新銘柄を立ち上げて、酒造りを一新。キリッとした酸味とまろやかさのバランスを感じる日本酒だ。「さんみという名前ですが、強い酸味ではなく、食べ物に合わせるのにちょうどいい、心地のよい酸味。玉ねぎだけでなく、野菜料理やフレンチなど、合う料理の幅が広いですね。日本酒の世界はどんどん変わってきているので、料理の合わせ方も広がり、楽しくて仕方ありません」(平野さん)

【4】ふきのとうのレシピ×オーストリアのワイン

 山菜の中でも特に早く出回るのがふきのとう。冬の寒さを乗り越えて芽吹く生命力を持ち、春がやってきたことを告げてくれる。特有の強いえぐみや苦味があるが、この味わいこそが酒の肴として、魅力を放つ。「山菜のほろ苦さはポリフェノール。山菜の天ぷらとワインは定番と言っていいほど、よく合う組み合わせです。中でも私のおすすめはオーストリアのグリューナ・ヴェルトリーナー。野菜料理、和食に合う代表的なワインですが、今回のワインは複雑なほろ苦味と旨味を持っています。一緒に口に含んでみると、ビターなオレンジマーマレードを思わせるような風味が膨らみ、口の中に心地よい余韻が流れます。『春の皿には苦味を盛れ』と言いますが、その苦味をより魅力的にしてくれるのがワインです」(平野さん)

■レシピ1:ふきのとうとハマグリのアヒージョ
 オイルで煮るだけのシンプルレシピ。ハマグリがぷっくりとして開いた頃にふきのとうにも火が通り、食べごろに。早春の日本だからこそ味わえるアヒージョだ。

画像: 冷まして冷蔵庫に入れておけば常備菜にも。オイルはパスタに絡めて食べてもいい

冷まして冷蔵庫に入れておけば常備菜にも。オイルはパスタに絡めて食べてもいい

<材料 2人分>
ふきのとう小6個、ハマグリ6〜8個、オリーブオイル100ml、にんにく1/2かけ、赤唐辛子1本、塩少々、バゲット薄切り適量

<作り方>
ふきのとうは黒くなっているところがあれば取り除く。大きいものは半分に切る。はまぐりは塩水につけて砂抜きをし後、水気を拭いておく。
にんにくは薄切りにして、芽を竹串などで取る。赤唐辛子は半分に切る。
オリーブオイルにを入れて弱火でゆっくりと加熱をする。
香りが出てきたら、を加えて弱火で時々返しながら煮る。
はまぐりの口が開いたら、味を見て塩で調味する。バゲットなどを添える。

■レシピ1:ふきのとうの醤油漬け
 さっとゆでて、醤油とみりんに漬けるだけ。甘過ぎず、ふきのとうの風味がそのまま味わえる。これさえあれば酒が進むが、調味料としても万能。

画像: 白いご飯、お豆腐はもちろん、鰆や鮭、焼いた肉に添えるだけで、春の香りが漂うひと皿になる

白いご飯、お豆腐はもちろん、鰆や鮭、焼いた肉に添えるだけで、春の香りが漂うひと皿になる

画像: 焼いた油揚げにたっぷりと乗せるだけで、贅沢なおつまみに

焼いた油揚げにたっぷりと乗せるだけで、贅沢なおつまみに

<材料 作りやすい分量>
ふきのとう80g、醤油大さじ4、みりん大さじ2

<作り方>
みりんを加熱してアルコールを飛ばす。醤油を加えて、保存容器に入れて粗熱をとる。
ふきのとうは黒くなっているところがあれば取り除く。湯を沸騰させて、塩少々を加えて、ふきのとうを入れてや約1分ゆでて冷水にとる。
水気を拭き、ざく切りにする。絞ってしっかりと水気を切る。
を加えて漬ける。3〜4時間以上漬けてからが食べ頃。

■おすすめのお酒:ヨハネス・ツィリンガー/ヌーメン グリューナー・ヴェルトリーナー 2018

画像4: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 オーストリアを代表する品種、グリューナー・ヴェルトリーナーはレモンや白こしょうの風味のするすっきりタイプのワインだが、500Lのアンフォラで20ヶ月熟成させることで、黄色い果実、果皮の苦味を感じる複雑な味わいに。「強いオレンジワインではなく、繊細でいて、心地よいタンニンを持っています。ハーブやレモンの風味で合わせるのではなく、苦味や複雑味の調和で選びました。口に含むと、さまざまな要素が口の中で溶け合い、広がっていきます。グリューナー・ヴェルトリーナーの新たな魅力に出会えるワインです」(平野さん)

【5】 熟成じゃがいものレシピ × アルザスのクラフトビール

 最近目にすることが増えてきた熟成じゃがいも。「熟成の期間は数か月から2年ものなどさまざま。春は新じゃがの季節ですが、越冬して甘くなった熟成じゃがいもの季節でもあります。品質や貯蔵技術の向上によって農業も変わってきているんだなと感じます」(平野さん)

■レシピ1:熟成じゃがいものアンチョビ焼き
 アンチョビの絶妙な塩味とにんにくの香りが漂い、お酒のおつまみとしてはもちろん、スナックや軽食としても手が止まらない美味しさ。じゃがいもはどんな品種でもOKだが、2〜3種類取り合わせるのがおすすめ。ここでは、はるか、北あかり、アンデスレッドを使用。

画像: 「にんにく、アンチョビ、オリーブオイルで皮付きのじゃがいもをオーブンで焼き上げます。調理の最後に加えるワインビネガーの酸味が、味を引き締め、うまみを深めてくれます」(平野さん)

「にんにく、アンチョビ、オリーブオイルで皮付きのじゃがいもをオーブンで焼き上げます。調理の最後に加えるワインビネガーの酸味が、味を引き締め、うまみを深めてくれます」(平野さん)

<材料2〜3人分>
じゃがいも600g、にんにく1かけ、アンチョビ3枚、オリーブオイル大さじ2、イタリアンパセリ3〜4茎、ワインビネガー大さじ1、塩、黒こしょう

<作り方>
 じゃがいもはたわしでよく洗い、皮付きのまま切る。小さいものは半割りに、大きいものは4等分に切る。にんにく、アンチョビ、パセリは粗みじん切りにする。
 ボウルにオリーブオイル、にんにく、アンチョビ、塩少々を加え混ぜる。そこにじゃがいもを加えて和える。
 耐熱皿に2のじゃがいもを並べて200度のオーブンで約40分全体に焼く。途中で取り出して上下を返す。
 こんがりとした焼き色がついたらワインビネガーを回しかけ、パセリを加え混ぜ、2〜3分焼く。仕上げに塩少々をふり、黒こしょうを挽く。

画像: たくさんの品種があるじゃがいも。それぞれの品種に合った貯蔵・熟成を施すことにより、奥深い甘みやじゃがいも本来のうまみが引き出される。熟成じゃがいもに定評のある北海道の村上農場では、こだわりの農法で栽培された数々の熟成じゃがいもをオンラインで購入できる。公式サイトはこちら

たくさんの品種があるじゃがいも。それぞれの品種に合った貯蔵・熟成を施すことにより、奥深い甘みやじゃがいも本来のうまみが引き出される。熟成じゃがいもに定評のある北海道の村上農場では、こだわりの農法で栽培された数々の熟成じゃがいもをオンラインで購入できる。公式サイトはこちら

■レシピ2:ベックオフ
 玉ねぎの甘みと羊&豚肉の旨味、白ワインがじんわり浸みこんだ、いつもの肉じゃがとは一味違う洒落た煮込み料理。長時間火を通すので、じゃがいもは煮崩れしにくくねっとりとした食べ応えのあるメークインがおすすめ。

画像: 「こちらはフランス風の肉じゃが。羊、牛、豚の3種の肉とじゃがいも、玉ねぎを白ワインでひと晩マリネして作るのが一般的ですが、今回は羊と豚肉に絞り、マリネもせずに白ワインを注いで鍋ひとつで手軽に仕上げます。羊肉と一緒に煮込むことにより、ビールやワインを誘う味わいの料理に」(平野さん)

「こちらはフランス風の肉じゃが。羊、牛、豚の3種の肉とじゃがいも、玉ねぎを白ワインでひと晩マリネして作るのが一般的ですが、今回は羊と豚肉に絞り、マリネもせずに白ワインを注いで鍋ひとつで手軽に仕上げます。羊肉と一緒に煮込むことにより、ビールやワインを誘う味わいの料理に」(平野さん)

<材料4人分>
じゃがいも(メークイン)600g (大4個)、玉ねぎ1個、にんじん1本、にんにく1かけ、豚バラ固まり肉300g、ラムチョップ4本(300g)、白ワイン200ml、水200ml、ローリエ1枚、タイム2〜3枝 塩、こしょう

<作り方>
 豚肉は4等分にし、塩小さじ1、こしょうをしておく。ラムチョップにも塩小さじ1、こしょうをする。ひと晩置く。
 じゃがいもは2㎝幅、玉ねぎは半分に切り、さらに1㎝幅に、にんじんは1㎝幅の輪切りにする。にんにくは芽をとってつぶす。
 鍋に玉ねぎ、じゃがいも、にんじんの半量、にんにくを入れ、その上に豚肉とラムチョップをのせる。残りの野菜、ローリエ、タイムをのせる。
 白ワインを注ぎ、中火にかけ、煮立ったら水を加える。
 ふたをして180度のオーブンで1時間半煮込む。直火で煮る場合には1時間10分〜1時間半煮る。

画像: こちらは火を通す前の状態。野菜→肉類→野菜の順番で入れ、厚手の鍋で密閉して長時間かけて加熱することで、お肉が口の中でほろほろと溶けるような柔らかさに仕上がる PHOTOGRAPHS:COURTESY OF YUKIKO HIRANO

こちらは火を通す前の状態。野菜→肉類→野菜の順番で入れ、厚手の鍋で密閉して長時間かけて加熱することで、お肉が口の中でほろほろと溶けるような柔らかさに仕上がる
PHOTOGRAPHS:COURTESY OF YUKIKO HIRANO

■おすすめのお酒:アルザスのクラフトビール
「今回はアルザスのクラフトビールを。アルザスのワインなどももちろん合いますが、こっくりとして塩気が効いた熱々のじゃがいも料理にビールは最高ですね」と平野さん。フランス東部、ライン川をはさんでドイツとの国境にあるアルザス地方は、フランスのビール産業の中心地。フランスで飲まれているビールはその約7割がアルザス産だそう。「爽やかで風味のあるクラフトビールならば、喉ごしがよくすっきりするだけでなく、じゃがいも料理がより引き立つように感じます。最近はオーガニックの原材料を使用しているものも増えてきています」

【6】うすい豆のレシピ × ロワールの白ワイン

 うすい豆は「うすいえんどう」とも呼ばれ、グリーンピースを品種改良してできたもの。春から初夏にかけてが旬で、和歌山県の特産品として関西地方を中心によく食べられている。「中部、関東地方などでもうすいえんどうの人気は高まってきているようです。春の短い間しかいただけない贅沢な食材ですね。グリーンピースでも同様に作れますが、豆は産地によって味わいがそれぞれ。豆そのものの旨味を生かしたレシピで、存分に味わってみてください」(平野さん)

画像: えんどう豆の中でも、さやを取って実を食べる「実えんどう」の一種。グリーンピースよりも皮が薄く、上品な甘味がある。軽やかで美しい緑色は、見た目にも春を感じさせてくれる

えんどう豆の中でも、さやを取って実を食べる「実えんどう」の一種。グリーンピースよりも皮が薄く、上品な甘味がある。軽やかで美しい緑色は、見た目にも春を感じさせてくれる

■レシピ1:焼きうすい豆
 皮つきのまま、網や魚焼きグリルでそのまま焼くだけという手軽さも嬉しい一品。まずは何もつけずに、豆の甘味とホクホク感を味わって。さらに塩を添えるとより甘味が増し、ペコリーノチーズを合わせると手が止まらない贅沢なおつまみに。

画像: 「素材が持つ本来の味をそのままいただけるメニューです。焼き網の焦げも、香ばしいアクセントになります」(平野さん)

「素材が持つ本来の味をそのままいただけるメニューです。焼き網の焦げも、香ばしいアクセントになります」(平野さん)

<材料>
うすい豆、塩、ペコリーノチーズ 各適量

<作り方>
 魚焼きグリル、焼き網、オーブントースターなどで、うすい豆をさやに焼き色がつくまで焼く。
 塩、ペコリーノチーズを添えていただく。

■レシピ2:うすい豆のリゾット
 うすい豆のさやを茹でて出汁をとり、その出汁を使って炊くリゾット。固形スープなどを使わず、やさしい味わいがしみわたる。パンチェッタの塩分が絶妙に効いて、つい何杯でも食べてしまいそう!

画像: 「うすい豆のホクホクとした食感と合うように、通常のリゾットよりも水分を少し多めにしています」(平野さん)

「うすい豆のホクホクとした食感と合うように、通常のリゾットよりも水分を少し多めにしています」(平野さん)

<材料2〜3人分>
米1合、パンチェッタまたはベーコン60g、うすい豆(さやから取り出して)120g、玉ねぎ50g、白ワイン大さじ3、オリーブ油大さじ2、バター大さじ1〜2、パルミジャーノチーズ大さじ4、塩、こしょう
A [ローリエ 1枚、タイム2〜3枝、玉ねぎの皮1個分]

<作り方>
 うすい豆はさやから取り出す。水4カップにうすい豆のさや、Aを入れて中火にかける。10分煮て出汁をとり、塩を加える。
 パンチェッタは1cm幅、玉ねぎはみじん切りにする。
 1の出汁でうすい豆の1/3量を2分ゆでて取り出す。出汁適量を加えてハンドブレンダーにかけるか、フォークなどで潰しておく。
 鍋にオリーブ油を入れて熱し、玉ねぎ、パンチェッタを加えて炒める。玉ねぎがしんなりとしてきたら米を加えてすき通るまで炒め、白ワインを加え煮立てる。
 うすい豆、3の出汁の2/3を加えて12〜13分煮る。残りのスープを2〜3回に分けて加え、粘りが出ないように時々かきまぜる。アルデンテに炊き上がったら、スープを加えるのを止め、3のピュレを加え、仕上げにバターとパルミジャーノチーズを加え混ぜ、塩、こしょうで調味する。

※3の工程は省略することもできる。その場合は全量のうすい豆を5に加えて作る。

画像: うすい豆のさや、玉ねぎの皮、ローリエとタイムを加えて10分ほど茹でると、野菜のうまみたっぷりの出汁のできあがり PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

うすい豆のさや、玉ねぎの皮、ローリエとタイムを加えて10分ほど茹でると、野菜のうまみたっぷりの出汁のできあがり
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

■おすすめのお酒:ロワールの白ワイン
「繊細な風味のうすい豆には、ナチュラルなロワールのソーヴィニヨンブランを。野菜の料理には自然派のワインが染み込んでいくように、細胞レベルでおいしさを感じます。今回セレクトした作り手はノエラ・モランタン。ピュアで透明感のある味わいが、うすい豆のおいしさをふわっと包んでくれるようです」(平野さん)

【7】ホワイトアスパラガスのレシピ × オーストリアのヴァイスブルグンダー

 最近は日本でも栽培量が増えて佐賀などから北海道まで広く生産され、生のホワイトアスパラガスが手軽に入手できるようになってきた。今回は、ちょっと特別なフランス産を取り寄せて使用。「フランス産は味の濃さが圧倒的です。もちろん日本産のものもとても美味しいので、季節のごちそうとしてぜひ楽しんでみてください」(平野さん)

画像: ホワイトアスパラガスは、太いものほど柔らかく極上品とされている

ホワイトアスパラガスは、太いものほど柔らかく極上品とされている

■レシピ1:ホワイトアスパラガスのからすみ目玉焼きのせ
 ゆでたアスパラガスに、たっぷりのバターで焼いた目玉焼きをのせ、からすみをたっぷりかけていただく簡単ながらとっても贅沢なひと皿。まずは驚くほどのジューシーさに感動し、その後に苦味と甘みがじんわりと広がっていく。卵の黄身とからすみが絡みあい、なんとも言えない複雑な美味しさがクセになりそう。

画像: 「ドイツ、オーストリアなどでは、アスパラガスはお肉やお魚と同じメイン料理の扱い。それくらい“主役感”のある味わいです。好みにもよりますが、少し柔らかめに仕上げるのがおすすめ」(平野さん)

「ドイツ、オーストリアなどでは、アスパラガスはお肉やお魚と同じメイン料理の扱い。それくらい“主役感”のある味わいです。好みにもよりますが、少し柔らかめに仕上げるのがおすすめ」(平野さん)

<材料2人分>
ホワイトアスパラガス4〜6本、卵2個、バター大さじ3、からすみパウダー大さじ4、塩 

<作り方>
 ホワイトアスパラは根元の硬いところを切り落とし、穂先の下から皮を厚めにむく。
 フライパンに水、1の根元と皮、水1リットルに対して1%の塩を加えて火にかける。沸騰したらアスパラガスを加えてゆでる。太さによるが8~10分が目安。すぐに食べない場合は、そのままゆで汁に浸したままにして保存する。
 フライパンにバターを入れて熱し、溶けたところで卵を割り入れる。バターを白身のところにかけながら焼く。
 ゆでたアスパラガスを皿に並べ、3をバターごとのせ、からすみパウダーをふる。

画像: アスパラガスをゆでる時は、むいた皮と切り落とした根元も一緒に。皮をしっかりむいておくのが、繊維っぽさを残さないポイント。ゆで汁は極上のスープに!

アスパラガスをゆでる時は、むいた皮と切り落とした根元も一緒に。皮をしっかりむいておくのが、繊維っぽさを残さないポイント。ゆで汁は極上のスープに!

画像: アスパラガスの滋養がじっくり味わえるゆで汁は、塩で調味してスープとして飲んでもいいし、リゾットのブイヨンとしてなど様々な料理に使える

アスパラガスの滋養がじっくり味わえるゆで汁は、塩で調味してスープとして飲んでもいいし、リゾットのブイヨンとしてなど様々な料理に使える

■レシピ2:ホワイトアスパラガスの塩釜焼き
 小麦粉に塩を加えた生地でアスパラガスを包んで、オーブンで蒸し焼きに。その香りは格別で、さらにアスパラガス本来の美味しさも凝縮されている。苦味の後にほんのりとした甘みが続き、繊維までもが美味しく感じられるほど!

画像: 「ぜひ、食卓の上で生地をぱかっと開いて、香りを楽しんでください。ソースもバターもいらない、お腹も心も満たされるような至福感のある美味しさ。ホワイトアスパラガスは野菜の中でも特別な存在です」(平野さん)

「ぜひ、食卓の上で生地をぱかっと開いて、香りを楽しんでください。ソースもバターもいらない、お腹も心も満たされるような至福感のある美味しさ。ホワイトアスパラガスは野菜の中でも特別な存在です」(平野さん)

<材料2〜3人分>
ホワイトアスパラガス6本、薄力粉150g、塩20g、水80〜90cc

<作り方>
1 ボウルに薄力粉、塩を入れ、水を加えて練る。混ざったら、台の上でこねてひとまとめにする。ボウルに戻し、乾かないようにして30分ほど休ませておく。
2 ホワイトアスパラガスは根元の硬いところを切り落とし、穂先の下から皮を厚めにむく。
3 1の生地を長方形にのばす。
4 アスパラガスを生地の左右どちらかの片側に乗せ、生地を半分に折りたたむようにしてアスパラガスの上にかぶせ、空気を抜きながら生地を閉じる。オーブンシートを敷いた天板に置く。
5 200度に予熱したオーブンで20分焼く。アスパラガスが太い場合は少し長めに焼く。
6 生地が焼けたら周りから包丁を入れて生地を外し、アスパラガスを取り出す。

■おすすめのお酒:オーストリアのヴァイスブルグンダー

画像5: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

「ヴァイスブルグンダー」とは、「ピノブラン」(白ワイン用ぶどうの品種)のこと。「ホワイトアスパラガスの独特の風味を引き立てる、優しい酸味と心地よい苦味を持つ白ワインを合わせました。今回セレクトしたのは、オーストリアの若い女性2人組が作り手の『レナーシスタ』。複雑なアスパラガスの味わいに寄り添ってくれる、自然派のワインです」(平野さん)

【8】菜の花のレシピ×缶ワイン

 今回は春のお弁当やランチにふさわしい菜の花のレシピ。そして、そこに合わせるのは、なんと缶に入ったナチュラルワイン! アーティスティックなラベルが目を引くこちらの高品質な缶ワインが、最近話題を集めているという。菜の花のレシピも缶入りのナチュラルワインを合わせることで、いつも以上に軽やかに、春らしさをいっそう強く感じられそうだ。「アルコール飲料のために開発された缶なので、ガラスボトルのワインと味の違いがないそうです。Djuce (ディージュース)というスウェーデンのブランドなのですが、中身はヨーロッパの自然派ワイン。今回選んだのは私も普段からよく飲んでいるつくり手、マインクラングのもの。缶ワインのレベルがここまできたのかと驚く味ですよ」(平野さん)

レシピ1:菜の花のスペイン風オムレツ

 オリーブオイルで炒めた菜の花と甘い新玉ねぎをたっぷり入れた春のオムレツ。小さめのフライパンでつくり、分厚く仕上げるのがおいしさの秘訣。

画像: グリューナー・ヴェルトリーナーのオレンジワインは菜の花のほろ苦さに寄り添う味。ナチュラルなワインは野菜との相性が抜群だ

グリューナー・ヴェルトリーナーのオレンジワインは菜の花のほろ苦さに寄り添う味。ナチュラルなワインは野菜との相性が抜群だ

<材料 3〜4人分>
菜の花150g、新玉ねぎ1/2個、卵6個、オリーブオイル大さじ2〜3、塩・こしょう各適宜

<作り方>
菜の花は花の部分と軸を切り分け、3センチ長さに切る。玉ねぎは薄切りにする。
卵は溶きほぐして塩小さじ1/2、こしょう少々を加えておく。
フライパンにオリーブオイル大さじ1を熱し、玉ねぎを加えてしんなりしたら、菜の花の軸、蕾の部分を順に入れて、塩少々をふって炒める。色鮮やかになったら、に加え混ぜる。
フライパンに残りのオリーブオイルを加えて熱し、を加えて中強火にし、大きくかき混ぜて、半熟状に火を通す。ふたをして弱火で5分焼く。
表面が固まったら、皿に滑らせるようにしてのせる。フライパンをかぶせてひっくり返す。さらに3〜4分、ふたをせずに弱火で焼く。

画像: フライパンで焼き上げて丸ごと盛りつけてから切り分けるのも楽しい

フライパンで焼き上げて丸ごと盛りつけてから切り分けるのも楽しい

画像: 冷水に浸けて水分をたっぷり吸わせてから料理するのが肝心

冷水に浸けて水分をたっぷり吸わせてから料理するのが肝心

レシピ2:菜の花ごはんのおにぎり

鮮やかな緑色が目にもうれしい、春の息吹を感じるおにぎり。菜の花のほろ苦さが後をひく。

画像: おにぎりはサイズを色々にすると、お腹の空き具合に合わせて気軽につまめる

おにぎりはサイズを色々にすると、お腹の空き具合に合わせて気軽につまめる

<材料 2人分>
ごはん茶碗3杯分、菜の花100g、塩適宜

<作り方>
 菜の花は花の部分と軸を切り分け、塩を加えた湯で、軸、花の部分の順に入れてゆでる。冷水にとって1センチ幅に切り、水気をしっかり絞り、塩少々をふる。
 温かいご飯に1を混ぜ、おにぎりを握る。

【お酒セレクト:Djuce Meinklang Kontext 2021(ディージュース マインクラング・コンテクスト 2021)】

画像6: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 スウェーデンで2021年に誕生したDjuce(ディージュース)は、ヨーロッパ各地の上質な⾃然派ワインを地球環境に優しいアルミ⽸で提供するワインブランド。ガラスボトルを循環性の高いアルミ缶に変えることで、CO2排出量を大幅に削減できるという研究結果が出ているそう。「Djuceの缶のデザインは様々な現代アーティストによるもの。人々の缶に対する固定概念をアートの力で変えていくという取り組みだそうです。手軽に持ち運べるし、ワインの飲み方も変わりそう。今年の春は缶ワインを持って外へ出かけてみたいですね」(平野さん)

問い合わせ先/メイベルインターナショナル株式会社  TEL.050-5240-5412

【9】たらの芽のレシピ×ロゼワイン

春の光がきらめくようになる頃。店先には山菜が並び始める。たらの芽が山菜の王様と呼ばれるのは、その食味の良さからだ。繊細な苦味と香り、ほっくりとした食感はシンプルに料理するだけで、存在感のある春のごちそうとなる。「やっぱり揚げ物は外せないですね。誰でも失敗なくカリッと揚がる衣のレシピでご紹介します。たらの芽はアクの強くない山菜なので、ワインを合わせるのなら、繊細なタンニンのものがいい。ニュージーランドのナチュラルなロゼワインを選びました。ワイン業界の有名人、藤巻一臣さんとNZの醸造家アレックス・クレイグヘッドによる新ブランド。びっくりするワイン名ですが、ピュアで美しい味わいのワインです」(平野さん)。

■レシピ1:たらの芽のフリット

 さくっと軽い食感の衣に包まれたたらの芽はほっくりと香り豊か。塩とワインでいただく春の味。 

画像: 春の苦味には、心地よいポリフェノールを感じるワインがいい

春の苦味には、心地よいポリフェノールを感じるワインがいい

<材料 2人分>
たらの芽8個、薄力粉大さじ2、オリーブオイル大さじ1、水30〜40ml、揚げ油適量

<作り方>
 たらの芽の根元のはかまと言われる茶色い部分を手でむく。
 ボウルに薄力粉とオリーブオイルを加え混ぜてから、水を加えてさらに混ぜる。
 たらの芽を衣のボウルの中に入れて衣をまとわせる。薄くなるように余分な衣は落とす。
 油を170〜180度に熱し、3を加えて揚げる。1分半程度が目安。塩を添えていただく。

■レシピ2:たらの芽とアンチョビベーコンのスパゲッティ

苦味、塩味、燻製香をひと皿で味わうことができるパスタ。たらの芽とオリーブオイルの相性は抜群。

画像: ベーコンのほどよい塩味が絶妙で、食べはじめると止まらない一皿

ベーコンのほどよい塩味が絶妙で、食べはじめると止まらない一皿

<材料 2人分>
たらの芽6〜8個、スパゲッティ160g、アンチョビ4枚(粗みじん切り)、ベーコン2枚(1センチ幅に切る)、にんにく2片(みじん切り)、赤唐辛子2本(半分に切って種をとる)、オリーブオイル大さじ2、塩適量

<作り方>
 たらの芽のはかまを取り、大きいものは縦半分に切る。スパゲッティは塩適量を加えた湯でゆでる。
フライパンにオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子を入れて熱し、香りが立ってきたら、ベーコン、たらの芽を加えて炒める。2分ほど炒めてたらの芽に火が通ったら、アンチョビを加えてさらに炒める。
 ゆで上がったスパゲッティを加え、オリーブオイル、ゆで汁適量、塩で味を調える。

【今月のお酒セレクト:OJISAN ROSE 2022】

画像7: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

【10】ふきのレシピ×オレンジワイン

 若葉色の美しいふき。根元の赤いグラデーションも美しいが、火を通すと透明感のある淡い緑に一瞬にして色が変わる。鮮烈な風味と水々しさを持つ山菜は食卓に春の息吹を運んでくれる。「ふきは下処理が面倒という印象があると思いますが、流通しているほとんどは栽培もの。アクもそう強くありません。さっとゆでてサラダにしたり、下ゆでをせずに炒めてみましょうか」(平野さん)。
 煮物など和風料理のイメージが強いが、調理法を変え、そこに合わせるのはオレンジワインだ。これまで抱いていたふき料理のイメージが払拭されるようなペアリングをどうぞご堪能あれ。

■レシピ1:ふきのサラダ

 みずみずしくゆであげたふきはオリーブオイルでシンプルにそのものを味わうレシピ。しゃきっとした歯ざわりと香りを真っ直ぐに受け止めてみよう。

画像: パルミジャーノをふわっとかけて仕上げ。生ハムを合わせるのもおすすめだ

パルミジャーノをふわっとかけて仕上げ。生ハムを合わせるのもおすすめだ

<材料 2人分>
ふき100g A[オリーブオイル大さじ2、ワインヴィネガー小さじ2、塩小さじ1/3、こしょう少々] パルミジャーノチーズ適量

<作り方>
 ふきはフライパンに入る長さに切る。大さじ1程度の塩を振りかけて、板ずりをする。湯を沸かし、塩のついたまま入れてゆでる。3〜4分ゆでたら冷水にとり、端から筋をとる。
 水気をよく拭き、5ミリ厚さの斜め切りにする。
 Aで和えて、パルミジャーノチーズをおろして散らす。

レシピ2:ふきと牛肉のバター醤油炒め

下ゆでなしで炒めてこっくり味に仕上げたふきにオレンジワイン。鮮烈で複雑な味の調和はそれぞれのおいしさを高め合う最高の相性だ。

画像: オレンジワインの中でもしっかりとした風味のものがおすすめだ

オレンジワインの中でもしっかりとした風味のものがおすすめだ

<材料 2人分>
ふき200g、牛肉切り落とし肉 150g、A[酒、みりん、醤油 各大さじ1]、バター大さじ1、木の芽適量

<作り方>
1 ふきは塩で板ずりをした後、筋をとり、3センチ長さに切る。
2 フライパンにバターを熱し、牛肉を入れて炒め、色が変ったらふきを入れて炒める。ふきが透き通ってきたらAを加えてさらに炒める。
3 器に盛り、木の芽を散らす。

【今月のお酒セレクト:Merab Matiashvili's Amber 2017】

画像8: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 ジョージアのオレンジワイン。時間をかけて醸したオレンジワインは琥珀色をしている。「個性の強いものも少なくないのですが、このワインは素朴さと洗練を持ち合わせているきれいな味のワインです。オレンジワインは色々なタイプがありますが、ふきの香りに強さに負けないようなオレンジワインを選びました。ふきとオレンジワイン、私にとっては定番となりました」(平野さん)

夏におすすめのレシピ

 ワインの名は時を経て、二人の醸造家がOJISANになったことから、つけられた。藤巻さんはイタリアンレストランのゼネラルマネージャーを経て、50代に差し掛かった頃に醸造家に転身、世界中でワインを手がける。90%のメルローにピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールを加えた非凡なロゼワインだ。「心地よく、きめの細かな味わいは食材にすっと染み込むよう。こういうワインを合わせると、料理のおいしさも伸びやかに感じられます。エスニック料理などに合わせるのもいいですね」(平野さん)。

【1】みょうがのレシピ×日本の赤ワイン

 日本の夏。なくてはならない夏の薬味が、みょうがだ。みょうがは日本だけで食される数少ない食材のひとつ。「他のものでは代用が効かない食材ですね。昔、フランスに住んでいた時に食べられなくて辛かったのが、みょうがでした。盛夏には大ぶりになり値段も安くなります。今回は薬味としてだけでなく、みょうがが主役の料理もご紹介しますね。もちろん、みょうがの風味を生かすようなお酒とともに」(平野さん)。

■レシピ1:カツオのみょうがソース

 みじん切りにしたたっぷりのみょうがに合わせるのは、バルサミコ酢や黒オリーブ。豊かな香りのソースをカツオにかけて、少し冷やしたマスカットベリーAを。みょうがと赤ワインのアロマが口いっぱいに広がる幸せをどうぞ。

画像: 三陸の海沿いの赤ワインはミネラリーで海産物との相性が秀逸。たっぷりのみょうががそこに爽やかな香りを添えてくれる

三陸の海沿いの赤ワインはミネラリーで海産物との相性が秀逸。たっぷりのみょうががそこに爽やかな香りを添えてくれる

<材料 2人分>
カツオ1/2さく、みょうが3本、生姜1かけ、黒オリーブ6個、青ねぎ3本
A [オリーブオイル大さじ1、バルサミコ酢大さじ1と1/2、醤油大さじ1]
塩、黒こしょう

<作り方>
 カツオは食べやすく切り、皿に並べる。
 みょうが、生姜、オリーブ、はみじん切りにする。青ねぎは小口切りにして、[A]を混ぜ合わせたものに加え混ぜ、にかける。

■レシピ2:みょうがの味噌チーズ焼き
こんがり焼いた熱々のはちみつ味噌がみょうがに染み込んだ、大人の夏のおつまみ。味噌とマスカットベリーAの相性は抜群で、鉄板の組み合わせだ。

画像: シャキシャキのみょうがは、焼くと驚くほどジューシーに。熱々のところをがぶりとかじって味わおう

シャキシャキのみょうがは、焼くと驚くほどジューシーに。熱々のところをがぶりとかじって味わおう

<材料 2人分>
みょうが3個、味噌大さじ1、はちみつ小さじ2、溶けるタイプのナチュラルチーズ適量

<作り方>
 味噌とはちみつを混ぜ合わせる。
 みょうがを半割りにして、を塗り、チーズをのせて、オーブントースターでこんがりとするまで焼く。

【お酒セレクト:神田葡萄園 ルージュ2022】

画像9: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 岩手県陸前高田に位置する神田葡萄園。創業1905年の葡萄園は東日本大震災で甚大な被害を受けたが、ワイン作りを再開。リアス式の海岸に面しているテロワールを生かしたワインを産している。ぶどうはマスカットベリーAを主体にヤマソーヴィニヨン・ツヴァイゲルトをブレンドしている。「このワインを飲んだ時、すぐにイメージした食材がカツオでした。潮風に吹かれたぶどうがそんな味を作り出します。日本の食材に合うワインを生産する、これからが楽しみな葡萄園です」(平野さん)

【2】きゅうりのレシピ×芋焼酎

 じっとりとした日本の暑い夏。夏真っ盛りには、水分たっぷりのきゅうりをパリンッと食べたくなる。昭和のきゅうりは両端に苦味があったが、現在では改良が進み、皮は薄く歯切れも風味も良くなった。品種も一般的な白イボきゅうり、四葉きゅうり、四川きゅうり、イボなしのフリーダム、加賀太きゅうりなど様々なものが手に入る。「大のきゅうり好きなので、夏は毎日1本食べています。ちょっと酸っぱくなったきゅうりのぬか漬けにオリーブオイルを回しかけたものでシャンパーニュを飲むのは私の定番。夏のお酒できゅうりつまみ、暑さを忘れる時間ですね。今回はミントのような爽やかさを持った芋焼酎に合わせてみましょうか」(平野さん)

■レシピ1:きゅうりと豚肉の酢醤油炒め

きゅうりのパリッとした歯ごたえに、ピリリと花椒を効かせた豚肉の酢醤油炒めで焼酎をぐびっと。

画像: フルーティな芋焼酎はオンザロック、ソーダ割りで。豚肉料理と芋焼酎の鉄板の相性にミントの風味がふわっと香る

フルーティな芋焼酎はオンザロック、ソーダ割りで。豚肉料理と芋焼酎の鉄板の相性にミントの風味がふわっと香る

<材料 2〜3人分>
きゅうり2本、豚バラ薄切り肉(厚めのもの)200g、にんにく1かけ、唐辛子1本、花椒小さじ1 A [酒、醤油各小さじ1]  B [酢大さじ2、砂糖小さじ2、醤油大さじ1、ごま油少々]

<作り方>
 きゅうりは瓶やめん棒などで叩いてから、ざく切りにする。豚バラ肉は食べやすく切り、[A] をもみ込み、下味をつけておく。
 フライパンにごま油、つぶしたにんにく、赤唐辛子、花椒を入れて熱す。香りが出てきたら、豚バラ肉を加えて、こんがりとした焼き色がつくまで炒める。
 きゅうりを加えて炒め、油が馴染んだら、[B] を加え、調味料がほぼなくなるまで炒める。

■レシピ2:きゅうり寿司

みょうがや青じそなど夏の薬味とともに、きゅうりをたっぷり加えたちらし寿司。しゃきしゃきの歯ごたえが涼を呼ぶ!

画像: 爽やかな薬味と、きゅうりたっぷりのお寿司にクールな焼酎。暑い日にこそ食べたい極上の組み合わせだ

爽やかな薬味と、きゅうりたっぷりのお寿司にクールな焼酎。暑い日にこそ食べたい極上の組み合わせだ

<材料 2合分>
米2合、きゅう2本、みょうが3本、青じそ10枚、しらす50g、A [米酢大さじ3、砂糖大さじ1、塩小さじ1]

<作り方>
 米はかために炊く。[A] は混ぜ合わせておく。
 米が炊き上がったら飯台、または大きなボウルなどに移し、熱いうちに[A] を加え混ぜ、うちわであおいで冷ます。
 きゅうりは薄切りにし、塩小さじ1/2をふって10分置き、水気を絞る。みょうがは薄切り、大葉は千切りにする。
 酢飯に、しらすを加え混ぜる。

【お酒セレクト:国分酒造 芋焼酎クールミントグリーン】

画像10: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

涼しげなペンギンラベルの焼酎は米麹と“鹿児島香り酵母1号"を使って減圧蒸留して作られた新しいスタイルの焼酎。「口に含むとミントのような爽やかな甘さを感じます。芋焼酎の香りが苦手な方にも、芋焼酎好きの方にも、どちらにもおすすめしたいですね。口当たりよくついつい飲み過ぎてしまうのが難点ですが。夏野菜たっぷりのフレンチにも合いそうです」(平野さん)

【3】新生姜のレシピ×日本のクラフトジン

■レシピ1:新生姜のピクルス

みょうがと共に漬けた甘さ控えめのピクルスは、さっぱりとした初夏の味。漬け込むと薄紅色に全体が変わっていく様もまた美しい。

画像: 薄切りにしたものは翌日が食べ頃に、ブロック状のものは数日後が食べ頃になる

薄切りにしたものは翌日が食べ頃に、ブロック状のものは数日後が食べ頃になる

<材料 作りやすい分量>
新生姜300g、みょうが3本 A [白ワインヴィネガー1/2カップ、水1カップ、砂糖大さじ2〜3、塩小さじ2/3、ローリエ1枚]

<作り方>
[A]の調味液をひと煮立ちさせ、粗熱がとっておく。
新生姜はたわしで皮を洗い、半分は薄切り、半分は小さめの固まりのまま使う。みょうがは縦半分に切る。湯を沸かし、10秒程度さっとゆで、ざるにあけ、冷ます。
を入れて漬け込む。翌日くらいから食べられる。

画像: 甘酢漬けよりも甘さが控えめで、さっぱりした味わい

甘酢漬けよりも甘さが控えめで、さっぱりした味わい

画像: 「生ハムやマンゴーとともに食べるのがお気に入りです。お酒がすすんで困りますが」(平野さん)

「生ハムやマンゴーとともに食べるのがお気に入りです。お酒がすすんで困りますが」(平野さん)

■レシピ2:新生姜と豆もやしのナムル

シンプルな塩味のナムルにたっぷりと新生姜を加えたレシピ。しゃきしゃきの食感と新生姜の鮮烈な香りが爽やかで、飽きのこないおいしさ。

画像: 食べ慣れたナムルに新生姜が加わるだけで、新鮮で贅沢な大人のための味わいに

食べ慣れたナムルに新生姜が加わるだけで、新鮮で贅沢な大人のための味わいに

<材料 作りやすい分量>
新生姜50g、豆もやし1袋 A [ごま油大さじ1、すりごま大さじ2、塩小さじ1/2]

<作り方>
新生姜はたわしで皮をこすって洗い、繊維に沿って千切りにする。
鍋に豆もやしとひたひたになるくらいの水、塩を入れて、蓋をして火にかける。沸騰したら弱火にして3分ゆで、ざるにあげて水気を切る。
を[A]で和える。

【お酒セレクト:司牡丹酒造 マキノジン】

画像11: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 高知県佐川町出身の世界的植物学者、牧野富太郎博士にちなんだ「マキノジン」。司牡丹酒造の一角は、かつて博士の生家があった場所。この地を「マキノ蒸留所」と名付け、高知県産のグアバや柑橘などを使用してジンを製造。「日本のボタニカル素材を使ったジンは飲み疲れせず、食中酒に最適な味わいです。土佐料理など和食にも合うでしょうし、夏の間じゅう飲んでしまいそうです」(平野さん)

【4】トマトのレシピ × 辛口のランブルスコ

 一年を通して手に入るトマトは、もともとはアンデス地方が原産で高温多湿の気候には向いていないとされていたが、現在は品種改良が進み、どの季節でも美味しいものが出回っている。加熱することと、オリーブオイルを合わせることで、トマトに含まれる抗酸化作用をもつリコピンの吸収率が、生で食べるよりもグンと高まる。

画像: 「今回のレシピは大玉トマト、ミディトマト、フルーツトマトなど、手に入るものでOKです。何種類かまとめて焼いて、味わいの違いを楽しんでもいいですね」(平野さん)

「今回のレシピは大玉トマト、ミディトマト、フルーツトマトなど、手に入るものでOKです。何種類かまとめて焼いて、味わいの違いを楽しんでもいいですね」(平野さん)

■レシピ1:作り置きができる万能の「焼きトマト」
 トマトを焼くことで、水分が飛んで旨味と甘みが凝縮され、しかもリコピンの吸収率もアップ。作り置きしておけば、このあと紹介する「トマト&ブラータ」「トマトのブルスケッタ」もすぐに仕上げることができる。また、リゾットや、焼いた肉や魚のソースにも応用できる。

画像: そのままいただくと、水分を多めに含んだドライフルーツのような絶妙な味わい。冷蔵庫で3〜4日保存できる

そのままいただくと、水分を多めに含んだドライフルーツのような絶妙な味わい。冷蔵庫で3〜4日保存できる

<材料>
トマト、フルーツトマトなど 適量

<作り方>
 トマトはヘタを切り、半割りにして、150度のオーブンで50〜1時間焼く。
 冷蔵庫で冷たくしておく。

■レシピ2:トマト&ブラータ
「焼きトマト」にブラータチーズを盛り合わせて調味料をかけるだけ。プルンとしたフルーツのような口あたりのトマトと濃厚なブラータが溶け合った、夏らしさいっぱいのみずみずしいアンティパスト。

画像: ジューシーなトマトの甘みがクリーミーなブラータと相まって、まるでデザートのような幸せな味わいに

ジューシーなトマトの甘みがクリーミーなブラータと相まって、まるでデザートのような幸せな味わいに

<材料2〜3人分>
焼きトマト3個分、ブラータ1個
A[オリーブオイル大さじ1、バルサミコ酢大さじ1、塩・こしょう各少々]

<作り方>
 皿にトマトを並べ、ブラータと盛り合わせる。
 Aを混ぜ合わせたものを回しかける。

 焼きトマトの旨味をバジルが引き立て、さらにパンに塗ったニンニクの香りが広がって奥深い味わいに。パンはカリッと焼くのが美味しく仕上げるコツ。そこにトマトの汁とオリーブオイルが染みわたり、“カリカリ”と“ジンワリ”の食感の組み合わせを楽しんで。

画像: 真っ赤なトマトにバジルのグリーンが映える鮮やかな一皿は、これからの季節にぴったり

真っ赤なトマトにバジルのグリーンが映える鮮やかな一皿は、これからの季節にぴったり

<材料2人分>
レシピ1の焼きトマト2個分、オリーブオイル大さじ2、塩・こしょう各少々、バジル適量、パン(バゲットなど)4枚分、ニンニク適宜

<作り方>
 焼きトマトをざく切りにしてオリーブオイル、塩、こしょうで和えておく。
 パンはトースターでカリッと焼き、熱いうちにニンニクの切り口をしっかりとこすりつける。
 1にバジルをちぎって加え、2の上に汁ごとたっぷりとのせる。

■おすすめのお酒:辛口のランブルスコ

画像12: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 ランブルスコはイタリアのエミリア・ロマーニャ州で作られているスパークリングワイン。「真っ赤なトマト料理とランブルスコは、ハッピーな組み合わせですね。甘口タイプが多いのですが、トマト料理には辛口がおすすめ。写真の『コイ ディ フラヴィオ レスターニ』のランブルスコは、樹齢50年を超えるブドウから作られたもの。きめ細かく豊かな味わいは、濃厚なトマトやバルサミコの味を引き立ててくれます」(平野さん)

【5】水茄子のレシピ × ZAGO procecco on the less(ザーゴ プロセッコ オン ザ レス)

 世界中で1,000種類以上あると言われる茄子だが、たっぷりとした水分をたたえ、果物を思わせる甘味のある水茄子は、世界に誇れる茄子の王様だ。「水茄子と言えば、まず思い浮かぶのは糠漬け。水茄子を手で引き割きながらお酒を飲むのは、夏ならではの愉しみです。そしてぜひ試してもらいたいのが揚げ物。揚げ茄子の美味しさは日本人なら誰もが知るところですが、水茄子で作ってみれば別次元の料理に。カリカリの衣に包まれたとろとろの身からは、茄子の汁が滴り落ちる。熱々をほおばり、火傷しそうになりながら、冷たいプロセッコで口の中を冷やす──これぞ、夏の至福のひとときです」(平野さん)

画像: イタリア産スパークリングワインの一種であるプロセッコが、みずみずしいフルーツのような水茄子の美味しさを一層際立たせてくれる

イタリア産スパークリングワインの一種であるプロセッコが、みずみずしいフルーツのような水茄子の美味しさを一層際立たせてくれる

■レシピ1:水茄子のフリット
 ひとくち噛んだときにジュワッと汁があふれるように、大ぶりに4等分に切るのがコツ。揚げたてのところに生ハムをのせて、脂が溶けてきたところをがぶりとやる。むいた皮は素揚げにし、セージも一緒にフリットに。水茄子1個でプロセッコが1本空いてしまいそう。

画像: 「オリーブオイルを加えた衣は、失敗なくカリッと揚げられます」(平野さん)

「オリーブオイルを加えた衣は、失敗なくカリッと揚げられます」(平野さん)

<材料2人分>
水茄子1個、薄力粉大さじ2、オリーブオイル大さじ1、水30〜40ml、セージ2枝、生ハム適量、揚げ油適量

<作り方>
 水茄子はへたを切り落とし、4等分にし、皮をむく。
 ボウルに薄力粉とオリーブオイルを加え混ぜてから、水を加えてさらに混ぜる。
 油を140〜150度に熱し、茄子の皮を入れて素揚げする。3〜4分かけてカリッとするまで揚げる。揚げ油を170度にあげ、水茄子、セージを衣にくぐらせて揚げる。衣が少し色づくくらいを目安に3〜5分かけて揚げる。
 生ハムと共に盛り合わせ、茄子に生ハムをのせていただく。

■レシピ2:水茄子のマスタード和え
 生の水茄子は、梨のような清涼感のあるほんのりとした甘さが味わえる。手で割いたら、やさしく塩揉みしてディジョンマスタードで和えれば、酸味の効いた辛子和えに。たっぷりのみょうがと青じそで、夏らしい香りとシャキッとした歯ごたえも加えよう。

画像: 「ディジョンマスタードは辛さを加えるのではなく、酸味を加える調味料。これで野菜を和えるだけで、ワインのための簡単浅漬けになります」(平野さん)

「ディジョンマスタードは辛さを加えるのではなく、酸味を加える調味料。これで野菜を和えるだけで、ワインのための簡単浅漬けになります」(平野さん)

<材料2人分>
水茄子1個、塩少々、ディジョンマスタード大さじ1、オリーブオイル大さじ1、醤油小さじ1、みょうが1個、青じそ5枚

<作り方>
 水茄子のヘタを切り落とし、包丁で切り目を入れて、食べやすい大きさに手で割く。みょうがは小口切り、青じそは千切りにする。
 水茄子を塩でもやさしく揉む。少し置いてしんなりとさせる。絞りすぎないように軽く水気を絞る。
 ディジョンマスタード、オリーブオイル、醤油で水茄子を和え、みょうが、青じそを加え混ぜ、器に盛る。

■おすすめのお酒:ZAGO procecco on the less(ザーゴ プロセッコ オン ザ レス)

画像13: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 プロシュートのお供としてもおなじみのプロセッコ。価格が手頃なのはいいが、品質はピンキリだ。「シャンパーニュ好きの私にとっては正直、触手の動かない泡なのですが、ZAGOは信頼を置いているプロセッコです。800年代の伝統的製法で自然酵母を使い、瓶内二次発酵。“オン ザ レス”とは澱引きをしていないという意味。発酵を継続させることにより、リンゴや梨のような豊かな風味が漂います。果物のような水茄子に合わせるのが、今年の夏のお気に入り」(平野さん)

【6】青パパイヤのレシピ × レヴァンテ・スピリッツ ジネプライオ ジン

 青パパイヤといえば、すぐに思い浮かぶのはタイのサラダ「ソムタム」で、エスニック料理用の輸入食材というイメージがあるが、近年、国産青パパイヤが増えているのはご存知だろうか。「青パパイヤは消化・代謝をアップして免疫力を高める酵素の含有量が野菜と果物の中で最も多く、『酵素の王様』とも呼ばれているスーパーフード。無農薬栽培が可能で、高いところに実がつくので獣害に晒される危険も少ない。そんな要因が重なり青パパイヤ栽培に乗り出す農家は各地で増え、日本の田園風景の中にパパイヤ畑が出現しているのだそう。そんな光景は、変わりゆく農業の象徴のよう。こうした背景をもつ作物は、消費者として応援をしていきたいですね。新しい野菜や果物は食卓に浸透するのがなかなか難しいけれど、青パパイヤは生でよし、煮ても炒めてもいい。エスニック料理でビールもいいけれど、今回はクラフトジンを合わせることで、青パパイヤの魅力に迫ります」(平野さん)

画像: 沖縄や鹿児島のほか、千葉、埼玉、茨城、高知、大分など日本各地で青パパイヤ栽培が盛んになっているという

沖縄や鹿児島のほか、千葉、埼玉、茨城、高知、大分など日本各地で青パパイヤ栽培が盛んになっているという

■レシピ1:青パパイヤときゅうり、ハムのサラダ
 青パパイヤのサラダに合わせるのは、コリアンダーやオレンジピールが香るトスカーナ産のスペシャルなオーガニックジン。「マヨネーズやタルタルソースにジンを加えるのは私のお気に入りの手法。今回は、あえてサラダはシンプルに作り、ジンが調味料の代わりとなるようなペアリングです」(平野さん)。一見ありふれた料理に見えるけれど、予想を裏切ることを約束しよう。これぞ、大人の野菜と酒の楽しみ方だ。

画像: エスニックにしがちな青パパイヤだが、ハムときゅうりを加えたシンプルなサラダに。そこにジンを合わせることで深みのあるハーブのような香りが広がり、真夏にぴったりの味わいが生まれる

エスニックにしがちな青パパイヤだが、ハムときゅうりを加えたシンプルなサラダに。そこにジンを合わせることで深みのあるハーブのような香りが広がり、真夏にぴったりの味わいが生まれる

<材料2〜3人分>
青パパイヤ1/2個、きゅうり1本、ロースハム3枚、マヨネーズ、ディジョンマスタード 各大さじ1

<作り方>
 青パパイヤは皮をむき、種を取り除き、スライサーで千切りにし、水に10分さらす。きゅうり、ハムも千切りにする。
 1をマヨネーズ、ディジョンマスタードで和える。

画像: 青パパイヤは水にさらすだけで、生で食べられる。独特の食感がサラダの中で存在感を放つ

青パパイヤは水にさらすだけで、生で食べられる。独特の食感がサラダの中で存在感を放つ

■レシピ2:青パパイヤと豚肉のナンプラー炒め
 弾力のある歯応えが魅力の青パパイヤを、相性のいい豚肉とナンプラーで炒めものに。生姜を効かせた味わいはご飯にもビールにも合うが、ジンとの組み合わせは最強。「ジンが口中をさっぱりさせてくれるとともに、ジンのもつボタニカルな風味が料理に奥行きを与えてくれます。一口食べては、ジンをくいっと飲み、エンドレスのループが始まります」(平野さん)

画像: 青パパイヤは冬瓜の調理法が応用できる。エスニック素材との相性もいいが、ハーブを組み合わせてイタリアンやフレンチにも

青パパイヤは冬瓜の調理法が応用できる。エスニック素材との相性もいいが、ハーブを組み合わせてイタリアンやフレンチにも

<材料2〜3人分>
青パパイヤ1/2個、豚バラ薄切り肉150g、長ねぎ1/2本、生姜1かけ、赤唐辛子1本、ごま油大さじ1、塩、こしょう各少々 A<ナンプラー大さじ1、酒大さじ1、砂糖小さじ1>

<作り方>
 青パパイヤは皮をむき、種を取り除き、厚さ5ミリ程度のいちょう切りにする。長ねぎは斜め1㎝幅、生姜は千切り、唐辛子は種を取って半分に切る。豚バラ肉は食べやすい大きさに切り、塩、こしょうをふる。
 フライパンにごま油、生姜、唐辛子を入れて熱し、豚肉を炒める。色が変わったら、青パパイヤ、長ねぎを入れて炒め、パパイヤが透き通ってきたら、<A>の調味料を入れて炒める

■おすすめのお酒:レヴァンテ・スピリッツ ジネプライオ ジン

画像: PHOTOGRAPHS:COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS:COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 世界的に続くジンブーム。このトスカーナ産のジンは、なんとアンフォラで6ヶ月熟成させている。「アンフォラとは、古代ローマ時代からワインの醸造・貯蔵に使われてきたテラコッタ製の壷のこと。これで熟成させることで、よりエレガントな仕上がりになっています。トスカーナ産の7種の植物(ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカルート、スイートオレンジピール、カレープラント、レモンピール、ドッグローズの花弁)でつくられた100%オーガニックのお酒で、シトラスの余韻のある風味が特徴的です」(平野さん)

秋におすすめのレシピ

【1】舞茸のレシピ×フランス北ローヌのガメイ

 貴重なため、見つけると舞い上がって喜ぶことから名付けられたという「舞茸」。「栽培ものでも、味も香りもおいしいきのこ。天然ものは9〜10月の短い期間しか手に入りませんが、最近では取り寄せもしやすくなったので、入手して料理するのもいいですね。今回は私の大好きな北ローヌのつくり手のガメイを合わせて舞茸料理を作ります。この赤ワインは湿った森林の土を思わせるような香りがします。ワインを飲むと、舞茸の生えている光景が目に浮かぶようです」(平野さん)。舞茸と赤ワイン、秋の香りが織りなすペアリングを楽しもう。

レシピ1:舞茸の丸ごと焼き
 大胆にそのままごろっとフライパン焼き。割かずに丸ごと焼くと、きのこの汁がたっぷりと滴るような焼き上がりに。

画像: きのこのステーキという風格。バター醤油の香りもたまらない!

きのこのステーキという風格。バター醤油の香りもたまらない!

<材料 2人分>
舞茸1パック、バター大さじ1、醤油小さじ1、かぼす

<作り方>
フライパンにバターを加えて熱す。バターのふわっとした泡が消えたら、舞茸を加えて塩少々をふり、ふたをして中火で焼く。
焼き色が付いたら、裏返して反対側も焼き、仕上げに醤油を加えて絡める。かぼすを添える。

レシピ2:舞茸といちじくのタルティーヌ
 こんがり焼いてとろりとした甘いいちじくに、舞茸の風味を掛け合わせる。これぞ、大人の秋のタルティーヌ。

画像: ベーコンとパルミジャーノチーズの濃厚な味わいと舞茸の歯応え、いちじくの甘み、という幸せな出会いが口の中で広がる

ベーコンとパルミジャーノチーズの濃厚な味わいと舞茸の歯応え、いちじくの甘み、という幸せな出会いが口の中で広がる

<材料 2人分>
パンドカンパーニュ2枚、舞茸1パック、いちじく1個、ベーコン1枚、パルミジャーノチーズ適量、オリーブオイル大さじ1、塩、こしょう

<作り方>
 舞茸は小房に分ける。いちじくはくし形に切る。ベーコンは1センチ幅に切る。
 フライパンにオリーブオイルを熱し、ベーコン、舞茸を入れて塩、こしょうをして炒める。
 パンの上に、いちじくをのせて、チーズをのせる。オーブントースターでチーズが溶けるまで焼く。

【お酒セレクト:ドメーヌ・ロマノー・デストゥゼ ラ・ストゥロンヌ・ガメイ 2020】

画像14: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

フランス北ローヌのガメイ。ナチュラルワインの実力者がつくるワインはガメイの表現によく用いられる薄旨、ピュアという言葉だけでは片付けられない上質な味わい。「繊細な果実味にしっとりとした風味。秋になって、こういうワインをゆっくり味わえることの幸せを感じます。秋の和食と合わせても食卓にエレガントさをもたらしてくれそうです」(平野さん)

【2】椎茸のレシピ× ブルゴーニュワイン

 椎茸はフランスの朝市でも売られていることをご存知だろうか。フランスで栽培され、名称もそのままshiitakéとして流通し、現地のフレンチやアジア料理に使用されている。セップやジロールなどの高級きのこと並んで販売され、長きに渡り椎茸はフランスに根づいているのだ。「椎茸はバターやオイル、チーズなどとの相性が抜群。そして、椎茸の旨味を引き出すように料理をすると、まるで肉を思わせるような豊かな味わいと存在感を発揮します。そこに必要なのは赤ワイン。その選択には何の迷いもありません。ふさわしいのは、きのこの生える森を思わせるようなしっとりとした香りや滑らかさを持つブルゴーニュ、ピノ・ノワール。土の香り漂う椎茸の最良のパートナーとして、これぞ “野菜とお酒” の至福のペアリングと言えます」(平野さん)

■レシピ1:椎茸のスパゲッティ
 椎茸をフードプロセッサーにかけたペーストがソース。「見た目もまるで肉のソースのようですが、食べてもまた、肉、いや肉以上の旨味を感じると言えるほど。一緒にフードプロセッサーにかけたくるみと椎茸の軸が、絶妙な歯ごたえと味の奥行きを作り出します」(平野さん)。でも調理はボロネーゼとは比較にならないほど簡単で、バターとオイルでさっと炒めるだけで完成。

画像: 椎茸ペーストはパスタのほか、パンに塗るなどペーストとしてさまざまに使える。多めに用意して作り置きしておけば、ワインのつまみとしても重宝する

椎茸ペーストはパスタのほか、パンに塗るなどペーストとしてさまざまに使える。多めに用意して作り置きしておけば、ワインのつまみとしても重宝する

<材料 2人分>
スパゲッティ(写真ではリングイネを使用)160g、椎茸8個、くるみ25g、にんにく1片、オリーブ油大さじ1、バター大さじ1、塩・こしょう各少々、パルミジャーノチーズ適量

<作り方>
 椎茸は石づきを取る。椎茸のかさ、軸、くるみとともにフードプロセッサーにかけてみじん切りにする。にんにくは芽をとり、みじん切りにする。
 フライパンにオリーブ油、バター、にんにくを入れ、弱火にかける。よい香りがしてきたら、1を入れ、塩、こしょうをして炒める。
 塩を加えた湯でパスタをゆでる。
 2にゆであがったパスタを加え、ゆで汁適量を加えて和え、塩、こしょうで味をととのえる。器に盛り、仕上げにパルミジャーノチーズ適量をふる。

■レシピ2:椎茸ステーキ
 肉厚な椎茸をフライパンでじっくりと焼いたステーキ。ステーキという名にふさわしい食べ応えのある一品だ。「一口噛めば、肉汁ならぬ椎茸汁が口中にほとばしります。椎茸を焼くときの最大のコツは、かさの内側を上に向け、塩をふって焼き、ひっくり返さないこと。そうすることで、かさの内側に椎茸の旨味たっぷりのエキスがとどまります」(平野さん)。焼いた椎茸の旨味の残ったフライパンは赤ワインを注ぎ、風味を溶かし込んでソースにして。

画像: 軸も一緒にカリカリに焼く。一部の旨味や栄養素は、かさの部分よりも軸のほうが豊富なのだそう。切り落とすのは固い石づき部分のみ

軸も一緒にカリカリに焼く。一部の旨味や栄養素は、かさの部分よりも軸のほうが豊富なのだそう。切り落とすのは固い石づき部分のみ

<材料 2人分>
椎茸4個、ブルーチーズ(ロックフォール、ゴルゴンゾーラなど)30g、バター大さじ2、赤ワイン1/4カップ、醤油大さじ1、塩、黒こしょう各少々

<作り方>
1 椎茸は石づきを取り、軸は切り、半分に手で割く。ブルーチーズはほぐす。
2 フライパンにバターを熱し、かさの内側を上向きにして椎茸に塩少々をふり、中火〜弱火でふたをして焼く。軸も一緒に焼く。
3 加熱して椎茸が汗をかいてきたら、かさの内側にブルーチーズを入れ、フライパンにふたをしてチーズが溶けるまで焼く。
4 椎茸を取り出し、フライパンに赤ワインを加える。フライパンが熱くなっていたら、火を止めたままでよい。ワインが半量になったら、醤油を加えてひと煮たちさせ、火を止めてバターを加え混ぜる。
5 皿にソースを敷き、椎茸、軸を乗せ、黒胡椒を挽く。

■おすすめのお酒:ドゥ・ローブ・ア・ローブ 2019 ドメーヌ・デ・フォーヴェット

画像15: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

「緻密でしっとりとしたビロードのような口当たり。フランボワーズや赤い花々、ドライフラワーの香りが漂うエレガントな佇まいと、自然の森を思わせるような素朴さが共存するこの美しいピノ・ノワールを口に含むと、少しめかしこんだ椎茸料理の味わいが、さらに引き上げられます」(平野さん)。ワインの名前「ドゥ・ローブ・ア・ローブ」は新しい人生の幕開け、夜明けの畑や一日の始まりなど、明るい未来が開けるような意味合いで名付けられたものだという。

【3】ビーツのレシピ×日本原産のワイン、マスカットベリーA

 ウクライナ発祥の料理、ボルシチでおなじみのビーツは、数年前までは缶詰などでしか入手できなかったが、ここ数年、日本各地で生産されるようになり、ずいぶん身近な野菜になった。「食べる輸血」「奇跡の野菜」と呼ばれるほど栄養価も高いスーパーフードだが、日本の家庭への浸透度はまだ途上の段階。「そんなビーツですが、“甘味のある根菜”と捉えれば、実は和食に幅広く使うことができます。そして、ごぼうを凌ぐほど特徴的な土の香りは、赤ワインが非常によく合います。ペアリングは素材だけではなく、調理の仕方や調味料、他の食材の存在などの要素が複雑に絡み合い、牛肉でさえ白ワインの方が合うことがままあります。それでも圧倒的な強さをもつビーツを使った料理が引き寄せるのは、赤ワイン。今回は日本を代表する赤ワイン、マスカットベリーAを合わせてみました」(平野さん)

■レシピ1:ビーツの豚汁
 ビーツの甘味は味噌との相性も抜群。ビーツと根菜を、オイルと少量の塩でゆっくりとオイル蒸しにして、しっかりと野菜の旨みを抽出するのが平野流。「引き出された野菜出汁は野菜の甘味と水分が凝縮され、鍋の中で一体感を持ちます。昆布や鰹の出汁は、このレシピでは出番がありません」(平野さん)。

画像: ビーツと味噌がこんなに合うなんて…!と感激すること間違いなしの美味しさ。根菜ならではの土の香りと、ほんのりした甘さが豚汁をさらに味わい深く引き立てる

ビーツと味噌がこんなに合うなんて…!と感激すること間違いなしの美味しさ。根菜ならではの土の香りと、ほんのりした甘さが豚汁をさらに味わい深く引き立てる

<材料 4人分>
ビーツ小1個(200g)、にんじん1/2本、大根5cm、ごぼう20cm、長ねぎ1本、舞茸1パック、油揚げ1枚、豚バラ薄切り肉200g、味噌大さじ5~6、太白ごま油(またはサラダ油)小さじ2、塩少々

<作り方>
 ビーツ、大根はいちょう切りにする。にんじんは半月切り、ごぼうはたわしで皮をこすって洗い、細めの乱切りにする。長ねぎは斜め1cm幅に切る。油揚げは熱湯を回しかけ、縦半分に切り、1cm幅に切る。舞茸は小房に分ける。豚肉は食べやすい長さに切る。
 鍋に太白ごま油を熱し、ビーツ、ごぼう、にんじん、大根、長ねぎの青いところを加え、塩少々をふり、ふたをして中弱火で4〜5分蒸し煮する。時々ふたをとって野菜が汗をかくように、ゆっくりと炒め合わせる。
 豚肉を加えて炒め合わせ、水6カップを加える。煮立ったらアクをとり、野菜に柔らかく火が通るまで煮る。途中で油揚げ、残りの長ねぎ、舞茸も加える。
 味噌を加えて溶き入れ、ひと煮立ちさせ、碗によそう。

■レシピ2:ビーツのバルサミコきんぴら
 ごぼうの代わりにビーツを使うことで、にんじんとも相まって、まるでデザートのような深い甘みのある真紅のきんぴらに。「ビーツの土臭さをバルサミコ酢、マスカットベリーAの酸味が心地よく調和してくれます」(平野さん)

画像: 目にも鮮やかな赤いきんぴらは、なんとも華やか。おせち料理にもおすすめ

目にも鮮やかな赤いきんぴらは、なんとも華やか。おせち料理にもおすすめ

<材料 2〜3人分>
ビーツ200g、にんじん100g(ビーツの半量)、くるみ25g、オリーブオイル大さじ1強、赤唐辛子1本、バルサミコ酢、醤油、みりん 各大さじ1

<作り方>
 ビーツ、にんじんは皮付きのまま5mm幅の拍子切りにする。
 フライパンにオリーブ油と赤唐辛子を入れて熱し、1を入れて炒める。バルサミコ酢、醤油、みりんを加えてしんなりとするまで炒める。

画像: 固いビーツは丸ごとの調理は時間がかかるが、細切りにして炒めれば短時間調理が可能

固いビーツは丸ごとの調理は時間がかかるが、細切りにして炒めれば短時間調理が可能

■おすすめのお酒:ファットリア・アルフィオーレ 一輪の花

画像: 【3】ビーツのレシピ×日本原産のワイン、マスカットベリーA

「日本原産のマスカットベリーAは透明感のある赤い色、フレッシュな酸味、そして湿気のある日本の土壌を反映してか、湿り気のある根菜のニュアンスを感じさせます。和食、味噌、醤油との相性は秀逸です」(平野さん)。ファットリア・アルフィオーレは2015年に宮城県のイタリアンレストランから生まれたワイナリー。一輪の花はマスカットベリーA 83%(山形)、メルロー17%(山形)。樽による酸化熟成により、穏やかで丸みのある味わい。「ビーツを使った和食に寄り添い引き上げてくれる、そんなワインと言えます」

【4】菊芋のレシピ×レバノンワイン

画像: 今回は平野さんの愛猫・クミンが特別出演。ワインボトルの後ろにシックに佇む一瞬を捉えて。菊芋は、”塊茎”と呼ばれる生姜に似た茎の部分を食す野菜で、江戸時代には日本に伝来していたそう。血糖値の上昇を穏やかにするイヌリンや、カリウム、食物繊維を含んでいる。11月から旬を迎える

今回は平野さんの愛猫・クミンが特別出演。ワインボトルの後ろにシックに佇む一瞬を捉えて。菊芋は、”塊茎”と呼ばれる生姜に似た茎の部分を食す野菜で、江戸時代には日本に伝来していたそう。血糖値の上昇を穏やかにするイヌリンや、カリウム、食物繊維を含んでいる。11月から旬を迎える

 まるで生姜のような見た目の菊芋は、“天然のインスリン”と呼ばれる成分イヌリンを含み、血糖値の上昇を抑える効果があり、サプリなどにも利用されているスーパーフードだ。デンプンが少ないのでその特質を生かした調理ができる。生で食べればサクサク、炒めても、揚げてもいいし、フレンチ、イタリアン、エスニック、和食までさまざまに使える野菜だ。「菊芋は、カロリーもじゃがいもの半分くらい。健康面でばかり取り上げられがちですが、フランスではトピナンプールという名で、ポタージュやピュレにしたりします。菊芋の味わいはワインとの相性が抜群で、白でも赤でも合わせられます。菊芋を食べるとワインが飲みたくなるくらい(笑)。今回は、いま注目をあびているレバノンワインに合わせたレシピもご紹介しますね」(平野さん)

レシピ1:菊芋のチップス

 菊芋のチップスは揚げ物という範疇に入らないのでは、というくらい手軽。デンプンをほとんど含まないので水にさらす必要もなく、油も少量でいい。たったこれだけでワインの最良のパートナーができあがる。

画像: 揚げたては少し柔らかくても、冷めるとカリッとする。塩だけで十分においしいが、好みでスパイスを振りかけても

揚げたては少し柔らかくても、冷めるとカリッとする。塩だけで十分においしいが、好みでスパイスを振りかけても

<材料 2人分>
菊芋5〜6個、揚げ油適量、塩

<作り方>
菊芋は皮つきのまま薄切りにする。イヌリンは水溶性なので、水にさらさずに調理する。菊芋にはデンプンが少ないのでさらす必要がない。
フライパンに揚げ油を2㎝程度の量を入れて熱し、菊芋を加えて3〜4分、薄く色づくまで揚げる。油を切り、塩をふる。

画像: 皮つきのまま、薄切りにしてそのまま揚げるだけという手軽さが魅力。菊芋のファーストレシピはこれ以外をおいてないだろう

皮つきのまま、薄切りにしてそのまま揚げるだけという手軽さが魅力。菊芋のファーストレシピはこれ以外をおいてないだろう

■レシピ2:菊芋のレバノン風

 レバノンワインに合わせたい一品。コリアンダーやターメリックのスパイシーな味わいにレモンの酸味が新鮮。「本来はじゃがいもで作るレバノン料理を、菊芋でアレンジしてみました。じゃがいもで作るよりも簡単でヘルシー、そして菊芋の根菜らしい味わいが加わります。レモンの酸味をしっかり効かせると、異国情緒溢れる味になります」(平野さん)

画像: レバノン料理はオリーブオイル、レモン、スパイスを使った野菜たっぷりでヘルシーなものが多い。その地域で伝統的に作られているワインとの相性も抜群

レバノン料理はオリーブオイル、レモン、スパイスを使った野菜たっぷりでヘルシーなものが多い。その地域で伝統的に作られているワインとの相性も抜群

<材料 2人分>
菊芋300g、コリアンダー1茎、にんにく1かけ、赤唐辛子1本、コリアンダーシード(粒)・パプリカ・ターメリック(各)小さじ1、オリーブオイル大さじ1、レモン汁大さじ1、塩、こしょう

<作り方>
菊芋は皮つきのままを5㎜程度の厚さに切る。コリアンダーは軸と葉の部分を分け、1㎝の長さに切る。にんにくはみじん切り、赤唐辛子は半分に切る。
フライパンにオリーオイル、コリアンダーシード、赤唐辛子を入れて熱す。よい香りがしてきたら、菊芋を入れて塩、こしょうをふって炒める。
菊芋が薄く色づいてきたら、にんにく、ターメリック、パプリカ、コリアンダーの軸を加えてさらに炒め、仕上げにレモン汁、コリアンダーの葉を加え混ぜる。
器に盛り、レモン(分量外)を添える。

■おすすめのお酒:シャトーマーシャス ブラン 2014

画像16: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

  世界で最も古いワイン産地の一つ、レバノン。内戦、戦乱の絶えない中、ワインをつくり続けるワイナリーは、そのレベルの高さからも世界から注目されている。シャルドネとソーヴィニヨンブランからつくられた白ワインは厚みのある果実味、表情豊かな充実感のある味わいだ。「極限の状況下でワインをつくり続けていることへの敬意も込めて、このワインを選びました。ワインを味わうことは世界を知ることにもつながっていきます。戦地でできたワインの強さをぜひ一度味わってみてください」(平野さん)

【5】ブロッコリーのレシピ×山梨のクラフトビール

 通年流通しているブロッコリーだが、本来のおいしい旬の時期は11月頃から始まる。花の蕾や茎を食べる花菜類の野菜の代表格だ。「食卓によく登場する身近な野菜ですが、お酒のおつまみにする野菜ではないかもしれませんね。こんがりと焼く、揚げるという調理法で、ブロッコリーをビールが飲みたくなるような料理にしてみましょう」(平野さん)。合わせるビールは山梨のクラフトビール。ビールがあるからブロッコリーもおいしくなる──そんな組み合わせをどうぞお試しあれ。

■レシピ1:ブロッコリーのガレット

焼いたブロッコリーはほっくり香ばしく、ゆでたブロッコリーとは別物のおいしさ。表面はチーズでこんがりカリカリ。粉も少ないヘルシーさもうれしい。

画像: 蕾の部分は薄切り、軸は細かく切る。葉がついていたら細かく刻み、ブロッコリーを丸ごと使い切る

蕾の部分は薄切り、軸は細かく切る。葉がついていたら細かく刻み、ブロッコリーを丸ごと使い切る

<材料 1枚分>
ブロッコリー1/2株(100g)、パルミジャーノチーズ30g、薄力粉・片栗粉(各)大さじ1、水大さじ2、こしょう少々、オリーブオイル大さじ1

<作り方>
 ブロッコリーは薄切りにする。軸、葉などは細かく刻む。
 ボウルに、薄力粉、片栗粉、水、チーズ、こしょうを加えてよく混ぜる。
 フライパンにオリーブオイルを熱し、を加えて1㎝程度の厚さにする。中火にして3分焼き、焼き色がこんがり付いたらひっくり返す。ひっくり返すのが難しい場合には、滑らせるようにして、皿の上に乗せる。その上にフライパンを乗せて、ひっくり返す。
 フライ返しで押さえるようにして、さらに3分、こんがりとするまで焼く。

■レシピ2:ブロッコリーと豆腐の揚げ出し

素揚げにすると甘さがぐっと増し、焦げた部分は香りよく、味の深みが増す。出汁を吸い込んだブロッコリーはまた格別。揚げ出し豆腐が野菜のご馳走料理に変貌する。

画像: フライパンに多めの油で揚げ焼きしてもいい。いくつかは揚げ立てに塩をつけて、つまみ喰いをぜひ

フライパンに多めの油で揚げ焼きしてもいい。いくつかは揚げ立てに塩をつけて、つまみ喰いをぜひ

<材料 2人分>
ブロッコリー1/2株、木綿豆腐1/2丁、片栗粉適量
A[だし200ml、醤油大さじ2、みりん大さじ1と1/2、塩少々]
大根おろし、揚げ油(各)適量

<作り方>
 ブロッコリーは小房に分ける。豆腐は5〜10分置き、自然に水切りし、2㎝×3〜4㎝に切る。豆腐に片栗粉を全体にまぶす。
 揚げ油を180度に熱し、ブロッコリーは3分揚げる(油がはねるので油はね防止ネットなどを使うといい)。豆腐は4〜5分、全体にからりとするまで揚げる。
 小鍋に[A]を入れて煮立てておく。
 器にを盛り、をかけ、大根おろしを添える。

■おすすめのお酒:98BEERs【九八】BELGIAN BITTER

画像17: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 98は、自分たちだけで100にするのではなく、様々な人たちとのコラボにより98を100にも200にもしていく、という想いから名付けられたという。「ビターでフルーティー。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵によるビールは泡のきめが細かく、喉越しで飲むというより、ゆっくり食事に合わせて飲むのがいいですね」(平野さん)

冬におすすめのレシピ

【1】紅芯大根のレシピ×ブラン・ド・ノワールのシャンパーニュ

 旬を迎えた大根。最近は赤、緑、紫、黒などカラフルな品種が増えてきている。個性豊かな色合いの大根はサラダに加えるだけで、ぱっと華やかなひと皿に。今回の主役・紅芯大根は、半分に切ってみると、緑の皮と内側のピンク色のコントラストの美しさに目を奪われる。「中国では祝い事の時にも使われるそうです。普通の大根より辛味が少なく、水分も少なめ。サラダや甘酢漬けにすることが多いのですが、火を通しても甘味が引き立ちます。何よりもこの色鮮やかさが魅力。今回はブラン・ド・ノワールのシャンパーニュを合わせて、紅心大根で華やかな食卓を作ってみました」(平野さん)

■レシピ1:紅芯大根のカルパッチョ

 紅芯大根を薄切りにしてしんなりさせたカルパッチョ。大根を数種類混ぜると、より鮮やか。それぞれの大根の風味も楽しめる。

画像: 大根の種類は1種類でもいいし、普通の大根やラディッシュなどを組み合わせても

大根の種類は1種類でもいいし、普通の大根やラディッシュなどを組み合わせても

<材料 2〜3人分>
紅芯大根1個(紅くるり、紫大根などを適量混ぜても)、オリーブオイル大さじ2、レモン汁小さじ2、塩、ディル、パルミジャーノチーズ各適量

<作り方>
紅芯大根は皮つきのままスライサーで薄切りにする。塩少々をふってしばらく置き、しんなりさせ、水気を軽く絞る。
皿に1を花のように盛りつける。
オリーブオイル、レモン汁を回しかけ、パルミジャーノチーズをピーラーで削って散らし、レモンの皮、ディルを散らす。

■レシピ2:紅芯大根と鴨ロースのソテー

 紅芯大根は柔らかく火を通してグラッセに仕上げる。一段と紅色が濃くなり、さらに甘さも増す。肉料理との相性もいいが、大根ステーキとして単独でも十分なおいしさだ。

画像: 白い大根とは異なる赤さを感じさせる味わいが魅力。バターの風味をまとわせることでシャンパーニュとの相性も高まる

白い大根とは異なる赤さを感じさせる味わいが魅力。バターの風味をまとわせることでシャンパーニュとの相性も高まる

<材料 4人分>
紅芯大根1/2個、鴨胸肉1枚(400グラム)、バター大さじ1、塩、黒こしょう

<作り方>
紅芯大根は皮付きのまま、7〜8㎜厚さのいちょう切りにする。フライパンにバター大さじ1と紅芯大根を入れて熱し、水1/4カップ、塩少々を入れてふたをして10分ほどかけて柔らかく蒸し煮する。途中水分がなくなった場合は適宜足す。柔らかくなったら、ふたをとり、水分を飛ばす。
鴨は皮目に斜め5mm幅ほどの切り目を入れ、塩小さじ1を全体にまぶし30分室温におく。
フライパンを熱し、油をひかずに、鴨肉を皮目から入れて中弱火で皮目にこんがりとした焼き色がつくまで焼く。反対側は色が変わる程度に焼く。
天板に皮目を上にして鴨肉をのせ、180℃のオーブンで7〜8分焼く。20分ほど休ませてから、スライスする。
紅芯大根と鴨肉のスライスを盛り合わせ、仕上げの塩、黒こしょうをふる。

■おすすめのお酒:エリック・ロデズ グラン・クリュ アンボネイ ブラン・ド・ノワール 2021

画像18: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 アンボネイ村のピノ・ノワール100%からつくられるブラン・ド・ノワールのシャンパーニュ。ふくよかで芳醇、エレガンスを感じさせる。「ブラン・ド・ノワールのシャンパーニュと紅芯大根は白と赤の関係性に共通するところがありますね。ちょっとした遊び心で選んだセレクトなのですが、シャンパーニュにも料理にも、どちらもしなかやな赤い色の風味があります。冬の赤、時にはこんな合わせ方も楽しんでみてください」(平野さん)

【2】春菊のレシピ×稲とアガベ どぶろくseries 改良信交 水もと 01

 冬に旬を迎える春菊。キク科の植物で、春に花が咲くことからこう呼ばれるようになったという。ほろ苦さと特有の香りのある春菊は、鍋ものに欠かせない冬を代表する青菜だ。「最近はサラダなど生で食べるレシピが人気です。生だと、加熱するよりも苦味や香りがマイルドに感じられるので、たっぷり食べられるのが魅力。今回のメニューには、今、注目しているどぶろくを合わせてみました。蔵によって様々ですが、爽やかな酸味があり、シュワッとした発泡を感じるものがあります。そんなどぶろくはフレッシュな野菜料理と相性がいい。春菊の香りと歯ごたえを、どぶろくが引き立ててくれます」(平野さん)

■レシピ1:春菊のポテトサラダ

 こんなに?と思うくらいの量の春菊を加えるのがポイント。噛むたびに春菊のフレッシュな香りが広がり、クリーミーなどぶろくがポテトサラダを包み込む、新しい出会いをお試しあれ。

画像: おなじみのポテトサラダが、春菊を加えることで独特の風味が後を引く、大人のための一品に変身

おなじみのポテトサラダが、春菊を加えることで独特の風味が後を引く、大人のための一品に変身

<材料 4人分>
じゃがいも4個(600g)、春菊1/2束、玉ねぎ1/4個、マヨネーズ70g、ディジョンマスタード大さじ1
A[オリーブオイル大さじ1、ワインヴィネガー小さじ1、塩少々]

<作り方>
春菊は水につけてしゃっきりとさせる。軸、葉ともに1㎝幅に切る。玉ねぎはごく薄切りにし、塩もみして水にさらした後、水気をよく拭き、[A]でマリネしておく

じゃがいもは2〜3等分の乱切りににし、1%の塩を加えた水に入れてゆでる。柔らかくゆで上がったら、水気を切り、弱火にかけて粉ふきにし、木ベラなどでつぶす。

じゃがいもが熱いうちにの玉ねぎ、マヨネーズ、マスタードを加えて和える。

粗熱がとれたら、春菊の葉、軸を加え混ぜる。

■レシピ2:春菊のジョン

 少量の粉をまとわせ、卵を絡めて焼く韓国料理、ジョン。春菊の中に相性のいい牡蠣を忍ばせて、カリッと香ばしく揚げ焼きに。

画像: ジョンはチヂミと違い、加える小麦粉の量はほんの少量。粉ものではなく野菜料理なので、お腹にそれほどたまらないのも、呑兵衛には嬉しい

ジョンはチヂミと違い、加える小麦粉の量はほんの少量。粉ものではなく野菜料理なので、お腹にそれほどたまらないのも、呑兵衛には嬉しい

<材料 2人分>
春菊1/3束(50g)、牡蠣(加熱用)4粒、卵1個、薄力粉大さじ1/2、ごま油大さじ3〜4、塩

<作り方>
春菊は水につけてしゃっきりとさせる。春菊の葉は2〜3㎝長さのざく切りにする。軸は斜め薄切りにする。

牡蠣は汚れを落とすために片栗粉と塩(ともに分量外)を振り入れて軽く揉み、洗っておく。

ボウルにを入れて薄力粉を加えて混ぜ合わせる。

卵は溶きほぐし、塩少々を加えてに加え混ぜる。牡蠣も加える。

フライパンにごま油を熱し、春菊を4等分し、中央に牡蠣がくるようにして7〜8㎝大にまとめ、平たくし、中弱火で焼く。カリッとして焼き色がついたら、反対側も焼く。酢醤油などをつけていただく。

【お酒セレクト:稲とアガベ どぶろくseries 改良信交 水もと 01】

画像19: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 どぶろくとは、米と麹と水を発酵させ、日本酒造りで行う「搾り」のないお酒。起源は稲作と同じくらい古いと言われている。濾していないことから、米と米麹の栄養、アミノ酸やコウジ酸がそのまま残っているので、美容面、健康面からも注目されている。「稲とアガペのどぶろくは、精米歩合92%とお米をあまり削らずに、水もと仕込みで作ったどぶろく。お米の甘みとシルキーなテクスチャー、ほど良い酸味があるので、料理と合わせやすいですね。和食はもちろん、スパイス料理やフルーツを使った料理などとの相性もいい。そして、野菜のおいしさを引き立ててくれる魅力的なお酒です」(平野さん)

【3】ごぼうのレシピ×京都・丹後の赤い日本酒

 おせちや豚汁など、冬の料理に欠かせないごぼう。実はさまざまな品種があるが、よく見かけるごぼうは東京・滝の川が原産の「滝の川ごぼう」だ。「ごぼう特有の土の香りを生かした料理には、私はいつもメルローやピノ・ノワールを合わせてきました。きんぴらをつくると、自動的に赤ワインを開けてしまうくらい(笑)。長いことそうしてきたので、今回は目先を変えて日本酒とのペアリングを。選んだお酒はワインを思わせるような色をしていますが、赤色の古代米からつくられた純米酒。甘酸っぱさと濃厚さを持ち合わせているので、その味が引き立つようなごぼう料理をお届けします」(平野さん)

■レシピ1:ごぼうの酢醤油漬け

 大ぶりに切ったごぼうの歯応えがいい酒のつまみ。さっぱりとした味は食べだすと止まらず、盃もすすむ。

画像: 酢醤油の味と相性抜群な甘酸っぱさのある酒。燗酒にして楽しむのもいい

酢醤油の味と相性抜群な甘酸っぱさのある酒。燗酒にして楽しむのもいい

<材料 作りやすい分量>
ごぼう150g、醤油大さじ4、酢大さじ3、みりん大さじ2、昆布5cm×2cm1枚、赤唐辛子1本

<作り方>
ごぼうは皮をたわしでこすって洗い、5cmの長さに切る。細いところは縦半分に、太いところは四つ割りにする。
保存容器に醤油、酢、みりん、昆布、赤唐辛子を入れておく。
鍋に湯を沸かし、ごぼうを入れて2〜3分ゆで、ざるにあけて湯をきり、熱いうちにに加え、6時間以上漬け込む。

■レシピ2:ごぼうと牛すじの赤ワイン煮

 とろりと柔らかい牛すじ煮込み。たっぷりと入ったごぼうは、赤ワイン煮込みを味わい深く、風味豊かな料理にしてくれる。

画像: レーズンとはちみつの入ったまろやかな煮込み。赤ワインを合わせるのももちろんいいが、酸味の効いた日本酒との組み合わせが新鮮

レーズンとはちみつの入ったまろやかな煮込み。赤ワインを合わせるのももちろんいいが、酸味の効いた日本酒との組み合わせが新鮮

<材料 4人分>
ごぼう200g、牛すじ肉400g、玉ねぎ1個、舞茸1パック、レーズン30g、赤ワイン1カップ、はちみつ小さじ2、醤油大さじ1/2、ローリエ1枚、クローブ3粒、バター大さじ1、塩、こしょう各適宜、青ねぎ適宜

牛すじ肉は水洗いをする。鍋に水と牛すじ肉を入れて沸騰させる。1分ほどゆでた後、ざるにあけて水洗いし、食べやすい大きさに切る。
圧力鍋に、牛すじ肉、ローリエ1枚、クローブ3粒、かぶるくらいの水を入れて10〜15分加熱する。または、普通の鍋で弱火で1時間半ゆでる。
ごぼうはたわしで皮をこすって洗い、乱切りにする。玉ねぎは繊維を断つようにして薄切りにする。舞茸は小房に分ける。
鍋にバターを熱し、玉ねぎに塩を加えてしんなりするまで炒め、ごぼうも加えて炒め煮する。よく炒め煮した後、牛すじ肉を加えて炒め合わせる。
赤ワインを加えてひと煮立ちさせる。牛すじ肉のゆで汁1カップ、はちみつ、醤油、塩を加えて1時間煮る。舞茸、レーズンも加えて30分煮て、塩、こしょうで味をととのえる。器に盛り、青ねぎの小口切りを散らす。

【お酒セレクト:向井酒造 伊根満開】

画像20: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 ロゼワインのような鮮やかな色の新しいタイプの日本酒。京都・丹後の創業260年の造り酒屋で紫小町という古代米でつくられる。「果実のような甘酸っぱさで、肉料理、チーズ、スパイス料理などに合わせてもよさそうです。飲み方も燗、ロック、ソーダ割りもいい。楽しみ方が広がる日本酒です」(平野さん)。

BY YUKIKO HIRANOJANUARY 10, 2024

【4】白菜のレシピ×デラウェアのワイン

 鍋料理、漬物など冬の食卓に欠かせない白菜。寒さが増すと、ずっしりと重さと甘みも増す。「白菜とワインというのは意外な感じがするでしょうか。白菜料理にはデラウェアのワインをよく合わせます。甘いワインのイメージがあるかもしれませんが、つくりによってタイプはいろいろ。ナチュラルなつくりのものは酸味とほどよい甘みがあり、白菜料理のような普段着のメニューと相性がいいですね。とりあえずビールという感覚で、デラウェアのワインから始めることもあります」(平野さん)

レシピ1:焼き白菜 アンチョビソース
 ダイナミックに白菜を焼くひと皿。こんがりと焼きつけてから蒸し焼きにすることで甘みが引き立つ。熱々のソースをたっぷりかけて。

画像: 白菜のみずみずしさとデラウェアのワインのフレッシュさが重なりあう。野菜で酒を飲むことは、かけがえのない日常のほっとするひとときに

白菜のみずみずしさとデラウェアのワインのフレッシュさが重なりあう。野菜で酒を飲むことは、かけがえのない日常のほっとするひとときに

<材料 2人分>
白菜1/4個、オリーブオイル大さじ1、塩少々
[アンチョビソース] オリーブオイル大さじ4、バター大さじ1、アンチョビ(みじん切り)4枚、にんにく(みじん切り)1かけ、ローズマリー1枝、こしょう少々

<作り方>
 白菜は縦半分に切る。
 フライパンにオリーブオイルを熱し、切り口を下にして中火にし、塩少々をふって焼く。こんがりとした焼き色がついたらひっくり返して反対側も焼く。塩少々をふり、ふたをして弱火にし、くったりとするまで焼く。
 小鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて弱火で熱す。よい香りがしてきたら、バター、アンチョビ、ローズマリーを入れてひと煮立ちさせ、こしょうを加える。
 白菜にのソースをかけていただく。

レシピ2:白菜と豚肉の塩麹鍋 

定番鍋に塩麹と生姜の風味をプラス。発酵食品の風味と爽やかさがワインの風味をいっそう引き立てる。

画像: 白菜と豚肉の甘みが最大限に引き出され、体の芯から温まるメニューに

白菜と豚肉の甘みが最大限に引き出され、体の芯から温まるメニューに

<材料 4人分>
白菜1/2個、豚バラ薄切り肉300g、生姜20g、塩麹大さじ4、酒1/2カップ、塩・ごま油各適量

<作り方>
 白菜は1枚ずつはがす。その上に豚肉を乗せ、白菜の向きを反対にして重ね、豚肉を乗せる。これを2回繰り返し、5センチ長さに切り、鍋に敷き詰める。鍋いっぱいになるように繰り返す。生姜は太めの千切りにする。
 塩麹、酒を鍋に入れ、生姜の千切りを散らす。ふたをして弱火で20〜30分煮る。味を見て、塩で味をととのえ、仕上げにごま油を回しかける。

画像: 白菜の根元と葉先が交互になるように重ねる

白菜の根元と葉先が交互になるように重ねる

【お酒セレクト:清澄白河フジマル醸造所/Tabletop Delaware テーブルトップ デラウェア 2022年】

画像21: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 山形県産デラウェアを使ったフジマルのフラッグシップワイン。ワイン用のデラウェアは複雑味を出すために種つきで醸造される。「フルーティな甘さとすっきりとした酸。家庭料理によく合うフードフレンドリーなワインです。低いアルコール度数で飲み疲れしない、いつも寄り添ってくれるよう存在ですね」(平野さん)。

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。
公式サイトはこちら

平野由希子の野菜とお酒 記事一覧へ

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.