TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
京都旅が決まれば、即、ディナーの予約を取るという人も多いのでは。でも、たまにはノープランではしご酒を楽しんでみるのも一興。今回は、そんなはしご酒のスタートにぴったりな予約不要(正確には予約不可)の立ち飲み店「酒場 井倉木材」をご案内します。
御所西「酒場 井倉木材」

店内のほか、材木置き場でも立ち飲みできる
「酒場なのに木材?」という謎めいた店名。その正体は、昼は木材屋、夜は酒場という前代未聞な二毛作店。夕方5時になると、材木置き場に、ビールケースを積み上げた簡易テーブルが置かれ、立ち飲みスペースに早変わりする。

壁には材木が立て掛けられ、奥には軽トラックも停車された資材置き場兼ガレージ
当初は、家業の材木店を継ぐつもりはなかったという井倉康博さん。元々、食べ歩くのが大好きで、いずれは自分の店を開きたいと思っていたなか、12年前、その夢を叶えるために、会社勤めを辞め、居酒屋で働き始めたところに、御父様が急逝。急に会社をたたむわけにもいかず、平日は材木店を切り盛りし、週末は居酒屋修行を行い、1年を過ぎた頃、「自分の代で店をやめるのは申し訳ない。でもやっぱり飲食店をやりたい」という思いで、一念発起。材木店の事務所を店舗に改装し、今のスタイルでの営業が始まった。

「ポテトサラダ」¥90。鮭などを凍らせ、薄くスライスして食べる北海道の郷土料理、ルイベ。カニの味噌と身を凍らせた「かにみそルイベ」¥900。生ビール¥600
店を開いた2012年頃は、京都にはまだ立ち飲み店が少なく、”材木店で飲む”というシチュエーションも話題になり、一気に人気店となった。

鰹は、材木置き場に置かれた炭焼台で炙り、塩タタキで提供される。「鰹の塩タタキ」¥1,320
材木置き場には炭焼台が置かれ、鰹のタタキや鶏せせりの塩焼きなど、炭火で焼いた料理もお楽しみ。オープン時から値段を変えていない¥90のポテトサラダをはじめ、酒のアテや揚げ物、焼き物、〆の麺やごはんなど、レパートリーも多彩で、立ち飲みながら、腰をすえて食事を楽しむ人が多いのも納得だ。

カウンターの目の前で行われるハモの骨切り。ざくざくという音も食欲をそそる
今の時期は鱧の焼き霜造りを是非。店内カウンターの目の前で骨切りをし、金串に刺し、屋外に移動し、炭火で皮目を焼き・・・と、できあがる行程を見るのも楽しい。

「鱧の焼霜造り」¥1,320
「季節のちょっといいもんを食べたいという声も多くて」と、初冬にはコッペガニをさばいて甲羅に盛り付けた割烹さながらの「特大コッペ蟹」も登場する。
店内カウンターは店主や隣客とも距離が近く、一人客も居心地抜群。真夏や真冬は特にカウンターから埋まりすく、口開けの17時が狙い目。
酒場 井倉木材
住所:京都市上京区薮之内町77-1
営業時間:17:00~22:00(21:00LO)
定休日:日曜、祝日
TEL. なし
公式サイトはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント