TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
最近は京都の店が府外に支店や期間限定店を出すことも多く、さらにネットショッピングも普及し、京都に行かずしても買えるモノが増えてきました。とは言え、店に行かないと味わえないモノもまだまだあり。今月はそんな支店を持たず、賞味期限も短い餅菓子に注目。第3弾は、「大黒屋鎌餅本舗」をご案内します。
今出川「大黒屋鎌餅本舗」

こしあんを求肥で包んだ「鎌餅」¥237
店名にもなっている鎌餅を初めていただいた時、まずは手触りに驚いた。それはまるで赤ちゃんのほっぺみたいに、ふわふわすべすべだった。

毎朝、できたてを提供。求肥でこしあんを包み、鎌の刃の形に成型していく
餅菓子と一口に言っても、餅米を蒸してついたものもあれば、餅粉を蒸して砂糖を加え、じっくり練り上げた求肥もあり。「鎌餅」には後者の求肥が使用されているため、キメが細かく、なめらかな口当たりが楽しめる。

できたてをそのまま置くとくっついてしまうため、上用粉とコンスターチをブレンドした粉をまぶし、薄いへぎ板でくるりと巻き、木箱に入れられる
なかに忍ばせたこしあんは、小豆を炊き、皮と身に分けた後、3、4回水にさらし、アクや雑味を取りのぞいた上品な味わいに。柔らかいのに歯切れはいい求肥とのバランスもよく、甘いものが苦手な人にも「あっさりしている」と好評だ。

稲刈りの様子が描かれた包み紙も素敵
「鎌餅」は、もともとは京の七口という関所の一つである鞍馬口の茶店で出されていたが、その茶店がなくなった後、宮大工だった初代が明治30年、大黒屋を創業し、復活。以来、120年以上作り続けられている。

へぎ板に包んだ状態で箱に詰められる。4個箱入り¥1,070
稲を刈り取る鎌の刃の形を模していて、豊作祈願のほか、福を刈り入れるという願いも込められているそうで、縁起も良し。餅菓子は日持ちしないことが多いが、求肥を使った「鎌餅」は賞味期限3日と少し長めに。3日目でもかたくならず、すべすべもち肌をキープしていて、京土産にもオススメだ。

阿弥陀寺の門前に店を構えて120年余り。イートインはなく、持ち帰りのみ

店は、3代目である山田充哉さん一人で切り盛りしているため、商品は、鎌餅のほか、懐中汁粉、最中、でっち羊羹に絞って作られている
大黒屋鎌餅本舗
住所:京都市上京区寺町通今出川上ル四丁目阿弥陀寺前町25
営業時間:8:30~18:30
定休日:水曜、第2・第4木曜
TEL. 075-231-1495

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント