カリフォルニア屈指の高級赤ワインとして、ワイン愛好家憧れの1本が「インシグニア」だ。その芳醇さと優雅さはどこからくるものなのか、3月に来日したメゾン プレジデントのデイヴィッド・ピアソン氏が教えてくれた

BY KIMIKO ANZAI

“カリフォルニアの最高級赤”のひとつとして多くのワイン愛好家に愛され、専門家からも世界的評価が高いのが「ジョセフ フェルプス ヴィンヤーズ」の「インシグニア」だ。芳醇でエレガントなスタイル、ふくよかな果実味と繊細な酸味が特徴的。華やかさと親しみやすさをあわせ持ち、その奥深い味わいに一瞬で魅了される。その佇まいはゴージャスでありながらも知性を感じさせるハリウッドの大物女優のようで、“セレブ御用達”というのも納得だ。

画像: デイヴィッド・ピアソン。メゾン プレジデント。カリフォルニア大学デイビス校で醸造を学び、卒業後は醸造家として5年間活躍。その後、ワインビジネスに興味を持ち、大学でMBAを取得。ボルドーやカリフォルニアの世界的に有名なワインカンパニーでキャリアを積み、2023年に「ジョセフ フェルプス ヴィンヤーズ」に参画。親日家で「来日は、もう数えられないくらい」

デイヴィッド・ピアソン。メゾン プレジデント。カリフォルニア大学デイビス校で醸造を学び、卒業後は醸造家として5年間活躍。その後、ワインビジネスに興味を持ち、大学でMBAを取得。ボルドーやカリフォルニアの世界的に有名なワインカンパニーでキャリアを積み、2023年に「ジョセフ フェルプス ヴィンヤーズ」に参画。親日家で「来日は、もう数えられないくらい」

 ワイナリーの設立は1973年。今でこそカリフォルニアワインの中心地として名を馳せるナパ・ヴァレーだが、その頃は現在のような活況を見せておらず、“目覚めを迎える頃”だった。ナパ・ヴァレーには歴史的ワイナリーがいくつか存在していたものの、未開拓の土地はまだ残されていた。建設業界では名の知られた存在で、醸造家でもあったジョセフ・フェルプス氏は、ナパ・ヴァレーの大きな可能性に着目し、「この地で最高峰のワインを造る」という強い決意のもと、まだ荒野であったソノマ・コースト西部に土地を購入した。カリフォルニアのワインは、当時、単一品種で造られたワインが一般的だったが、彼が挑戦したのはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、数種の品種をブレンドした“ボルドースタイル”。そして、翌74年にはカリフォルニア初とされるボルドースタイルの「インシグニア」を誕生させ、瞬く間に高い評価を得た。カリフォルニアのブレンドスタイルは“プロプライエタリーレッド”とも呼ばれるが、「ジョセフ フェルプス ヴィンヤーズ」はその先駆けとなったのだ。

 だが、特筆すべきは、「インシグニア」を始めとする「ジョセフ フェルプス ヴィンヤーズ」のワインの華やかさは、自然への愛と敬意によって造られているということだろう。今でこそよく耳にする「サステナブル」という言葉だが、約20年前からワイナリーではすでに実践されていたのだ。初めて耳にした言葉だったが、それを理解したのはブドウ畑に案内された時のこと。整然とした美しさでありながら、下草が生えたままのブドウ畑の向こうには手つかずの原生林が広がり、その規模の大きさに圧倒された。聞けば、ブドウ畑は所有地の一部で、多くは原生林として残しておくのだという。この記憶をメゾンプレジデントのデイヴィッド・ピアソン氏に話すと、こう答えてくれた。

画像: 冷涼なソノマ・コースト西部にあるホームランチの畑。美しい畑の向こうには原生林が広がる。ブドウは、野生動物や鳥、虫、そして微生物と共存しながら育つ。サステナブルのガイドラインに沿うだけでなく、自然環境をよりよくするためにはどうするべきか、「ジョセフ フェルプス ヴィンヤード」は常に考えている。

冷涼なソノマ・コースト西部にあるホームランチの畑。美しい畑の向こうには原生林が広がる。ブドウは、野生動物や鳥、虫、そして微生物と共存しながら育つ。サステナブルのガイドラインに沿うだけでなく、自然環境をよりよくするためにはどうするべきか、「ジョセフ フェルプス ヴィンヤード」は常に考えている。

「今、ワイナリーは600エーカーの土地を所有していますが、ブドウ畑はその中の125エーカーにすぎません。現在でも、あなたがご覧になった通り、“そのままの自然”です。私たちはよく、“ナパにおけるサステナブルの先駆者”、“オーガニックのリーダー”と言われますが、実はこれは、私たちにとっては当然で、ごく自然なことであるのです。ワインは天候や気候に左右されます。ならば私たちは、自然が健全にブドウを育んでくれるよう、ともに歩むべきなのです。その努力が、素晴らしいワインの誕生に繋がると、私たちは考えています」

 さらに、ピアソン氏はワイナリーでは“再生農法”を行っていることも話してくれた。これは、畑の土壌を研究し、その土地に合うバクテリアを投入、ブドウがより健全に育つことを目的としているが、同時に、昆虫や植物を呼び寄せ、生物多様性を実現させるというもの。
「今までの私たちの世界は“人間ファースト”でした。でも、これからはそれではいけない。自然の摂理に添って、私たち人間も変化していかなければ」

画像: 「インシグニア」アメリカ・カリフォルニア州。カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、マルベックをブレンド。赤い果実やクレーム・ド・カシス、プラム、バラなど複雑な香り。芳醇な果実味と繊細な酸、赤いベルベットを思わせるシルキーなタンニン。ゴージャス、かつ品格のある味わい。プライムリブや仔羊などガストロノミックな肉料理と。鴨の治部煮とも好相性。750ml ¥58,300 PHOTOGRAPHS:COURTESY OF JOSEPH PHELPS

「インシグニア」アメリカ・カリフォルニア州。カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、マルベックをブレンド。赤い果実やクレーム・ド・カシス、プラム、バラなど複雑な香り。芳醇な果実味と繊細な酸、赤いベルベットを思わせるシルキーなタンニン。ゴージャス、かつ品格のある味わい。プライムリブや仔羊などガストロノミックな肉料理と。鴨の治部煮とも好相性。750ml ¥58,300

PHOTOGRAPHS:COURTESY OF JOSEPH PHELPS

 ピアソン氏は、世界の有名メゾンで重職を歴任した“大物”だが、実はキャリアのスタートは醸造家という、ワインの世界のすべてを知る人物。だが、彼の心は、常にワイン造りの現場にある。最後に、ピアソン氏はこう語ってくれた。
「私たちのワインは“ラグジュアリー”と言われ、それはとてもうれしいことです。ですが、私たちがなすべきことは、この『インシグニア』の優雅さを守りながら、これからも100年続くワインにしなくてはならないということ。長きに渡り、人々に愛される上質のワインこそ、私は本物のラグジュアリーワインであると考えます。同時に、ワインが育まれる自然環境を守っていくこと。“ラグジュアリー”には責任が伴うのです」

問合せ先:
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
公式サイトはこちら

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