BY KIMIKO ANZAI
「グリュ―ナー・ヴェルトリーナー」と聞いてすぐに白ワイン品種だとわかる人は、おそらくワイン通だろう。柑橘系の豊かな香りを持ち、とてもアロマティック。味わいは爽やかですっきりとした印象だ。主にオーストリアやドイツで生産されているが、地元消費が多く、世界に輸出されるのは全体量の1/4ほどとも言われている。知名度も一般的には高くなく、知らない人も多いに違いない。
日本ではまだメジャーとはいえない品種だが、このグリューナー・ヴェルトリーナーを世界レベルに引き上げ、確実にファンを増やしているワインがある。それが「ニューチャプター」だ。造り手はオーストリアの名門でグリュ―ナー・ヴェルトリーナーの第一人者と評されるレンツ・モーザー氏(5世)と気鋭の醸造家として注目されるマルクス・フーバー氏。15年来の友人で、互いに尊敬し合い、切磋琢磨してきた間柄だ。ここ数年、二人はこの品種について分析・研究を重ねてきた。そして気づいたのが、ドイツ語圏でしか飲まれていないこと、そして“単一畑”のブドウが使われるのが一般的なことだった。
レンツ・モーザー氏はこう語る。
「世界中で愛されるグリューナー・ヴェルトリーナーを造ろうと、二人で話しました。1本飲んだ後、2本、3本と買い続けたくなるような魅力的なワインを。この品種は“柑橘系で爽やか”と評されますが、それだけではいけない。複雑でエレガンスとフィネスを感じさせる“パワフルだが豊満過ぎないスタイル”を実現させようと決心したのです」。
元来、モーザー氏のグリューナー・ヴェルトリーナーへの愛情は並々ならぬ深さがあった。モーザー家は17世紀から続く老舗で、モーザー氏の祖父は、通常よりブドウの支柱を高めに作る“ハイカルチャー仕立て”という栽培手法を用いてブドウの収量を安定させ、この方法をオーストリア国内に広め、グリューナー・ヴェルトリーナーの発展に寄与した。また、父は国内で初めて有機栽培を始めた先駆者として知られる。
「グリューナー・ヴェルトリーナーは私にとって“宝物”。ワイン造りの際、私に力を与えるものは、父と祖父の教えです。ですが、私は現代に生きている。現在と未来にフォーカスし、新しい価値観のグリューナー・ヴェルトリーナーに挑戦したいと思いました」。
その“新しい価値観”の「ニューチャプター」の造りの特徴は、いくつかの畑のブドウをブレンドすること、そして、5つのブドウ品種を各1%ずつブレンドしていること。これにより、従来のグリューナー・ヴェルトリーナーとはひと味違う、よりアロマティックで複雑味のある味わいが生まれるという。
「ニューチャプター 2021」は、レモンやグレープフルーツ、ハーブの香りがグラスの中から立ち上り、美しい酸味が飲む人をたちまち魅了する。「あとひと口」と飲み進んでしまうほど、チャーミングで“キケン”な味わいだ。従来のグリューナー・ヴェルトリーナーと違っているのは、芯に凜とした強さを感じさせながらも、エレガンスに満ちていることだろう。従来のものよりも奥深さを感じさせ、「ニューチャプター」の名の通り、このワインがグリューナー・ヴェルトリーナーにとって、ひとつのエポックになったことを感じさせる。料理は、魚介類はもちろんながら、果実をふんだんに使ったタルトなど、デザートにもよく合う。エレガントながらも、ちょっとエッジ―さを感じさせるワインは、私たちの日々の食卓をさらに豊かにしてくれるに違いない。
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