季節の野菜が持つ本来の美味しさを引き出すことを知り尽くしている料理家・平野由希子さんが、いま食べたい野菜で作る魅惑のお料理と、相性のよいお酒のペアリングを、時代のトレンドに合わせた視点で提案。連載第31回は、和風のイメージをくつがえす、フレンチにアレンジしたなめこ&ワインのペアリングが登場!

BY YUKIKO HIRANO

画像: ワインとなめこ……意外な組み合わせにハマる!

ワインとなめこ……意外な組み合わせにハマる!

 独特のぬめりが特徴のなめこは、食用とされているのは日本だけ。味噌汁、なめこおろし、鍋物あたりが定番で、それはそれで愛すべき存在なのだが、つい決まりきった料理になりがち。ところが今回は、なめこをフレンチにアレンジ! 使うのは、最近よく見かけるようになった食感も味もしっかりした「株つきなめこ」だ。「決して奇をてらったわけではないんですよ。なめこはぬめりがあるけれど、フランスでよく食べられているジロール茸に共通する風味があります。しっかり炒めたり、とろみを生かすようにクリームソースを作ったら、これまでのきのこ料理とはひと味もふた味も違う料理になりました。ワインを合わせてみたら、なめこの新鮮な魅力を発見できますよ」(平野さん)

レシピ1:なめこのベーコン炒め

 ぬめりが少なくなるくらいまで炒めると、水分が飛び、旨味が凝縮。シンプルに炒めるだけなのに、なめこがワインおつまみの顔に変わる。

画像: そのままでももちろん、パスタにあえるのもおすすめ

そのままでももちろん、パスタにあえるのもおすすめ

<材料 2人分>
なめこ(株つき)200g、にんにく1かけ、ベーコン2枚、イタリアンパセリ(粗みじん切り)大さじ2、オリーブオイル大さじ1、塩、こしょう

<作り方>
 なめこは石づきを切り落とす。にんにくはみじん切りにする。ベーコンは1センチ幅に切る。
 フライパンにオリーブオイル、にんにくを入れて熱し、香りが出てきたら、ベーコン、なめこを入れて、塩、こしょうをふっていためる。中弱火で2〜3分、なめこがひと回り小さくなるまで炒め、イタリアンパセリを加え混ぜる。

レシピ2:なめこと鶏肉のクリーム煮

 なめこと生クリームの相性がよいなんて! なめこのとろみで濃度もつき、軽やかなソースに仕上がるから驚きだ。

画像: 袋入りのなめこでも同様に作れる

袋入りのなめこでも同様に作れる

<材料 2~4人分>
鶏むね肉2枚、なめこ(株つき)200g、舞茸1パック、玉ねぎ1/2個、白ワイン1/4カップ、生クリーム1カップ、バター大さじ2、塩、こしょう、ナツメグ

<作り方>
1  鶏むね肉は斜め半分に切り、塩をふる。なめこは石づきをとり、小房にわける。舞茸も小房に分ける。玉ねぎは薄切りにする。
 フライパンにバター大さじ1を熱し、玉ねぎを入れてしんなりするまで炒める。なめこ、舞茸を加えて、塩をふって1分ほど炒めたら取り出す。
 同じフライパンにバター大さじ1を加えて、鶏肉を表面の色が変わるくらいまで中火で焼く。
 白ワインを加えてひと煮たちさせたら、生クリームを加える。生クリームが煮立ったら、を加えて弱火で3〜4分煮る。
 塩、こしょう、ナツメグで味を調える。

【今月のお酒セレクト:シャトー レスティニャック フリッシュ 】

画像: PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO

 フランス南西部の若いカップルが手がける、センス溢れるナチュラルワイン。赤白10品種のぶどうを混ぜて作っているのに、心地よい透明感を持ち、一つの方向にまとまっている。柔らかな酸の旨味が特徴だ。「大好きな作り手のワインです。なめこでフレンチという不思議な料理に、白でも赤でもないこの魅力的なワインを合わせてみました。思った通り、しっくり。今までにない組み合わせになりました」(平野さん)

ずっと身近に置きたい一冊──平野由希子さんの新著が発売!

 平野さんが、これまでの書籍では伝えきれなかった料理の原点をまとめた新著『ma cuisine おいしさの引き出し方』が好評発売中。「春夏秋冬野菜のことを思い続けている」「肉料理はつくれば作るほど、上手くなる」といった心に響く言葉とともに、野菜料理、肉料理、揚げ物、魚料理など約70品がずらり。家庭のキッチンでとびきりおいしく作るコツ、さらに調理のしやすさも追求した極上のレシピは、時代の流行に左右されない一生もの。まるで食材とお料理へのラブレターのような、ずっと身近に置いておきたい一冊だ。

画像: 「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる 撮影/ローラン麻奈

「家でつくるからこそ、おいしいラタトゥイユをつくろう」と思い立って平野さんが追求してきた一品。美しい写真の数々にも五感が研ぎ澄まされる

撮影/ローラン麻奈

画像: 驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に! 撮影/ローラン麻奈

驚くほどジューシーに焼き上げるコツとともに紹介される「鶏もも肉のポワレ」。見ているだけでも幸せな気分に!

撮影/ローラン麻奈

画像: 『ma cuisine おいしさの引き出し方』 著者:平野由希子 判型:B5変形判・240ページ 価格:¥4,180 発行:誠文堂新光社

『ma cuisine おいしさの引き出し方』

著者:平野由希子
判型:B5変形判・240ページ
価格:¥4,180
発行:誠文堂新光社

平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。
公式サイトはこちら

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