フードジャーナリスト北村美香が自信をもっておすすめする美味の店。その技と思いを凝縮した「食べるべきひと皿」とともに、唯一無二のおいしさの理由をひもとく

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY YUKO UEHARA

※記事内で紹介しているメニューや価格は、記事公開時点のものです

中野「松㐂(まつき)」

【2017年11月公開記事】

 釣瓶のように落ちて行く夕暮れ、家への道をたどる途中に温かいスープをいただけるお店があったなら……。そんな妄想をかなえてくれるビストロに、最近、出合うことができた。

 大きな一枚板のカウンターに、広々としたオープンキッチン。オーナーの藤澤進大郎さん、侑子さん夫妻がふたりで料理を作っている。進太郎さんは神楽坂「ビコック」で、侑子さんは代々木上原「ル・キャバレ」でそれぞれシェフを務め、今年1月に夫妻で独立、ここ「松㐂」をオープンした。

画像: 左が藤澤進太郎さん。右が侑子さん。メニューの内容や仕込みはふたりで。このお店は進太郎さんの実家である旅館「松㐂」のあった場所に作った。旅館へのオマージュを込めて、お店の名前に

左が藤澤進太郎さん。右が侑子さん。メニューの内容や仕込みはふたりで。このお店は進太郎さんの実家である旅館「松㐂」のあった場所に作った。旅館へのオマージュを込めて、お店の名前に

 メニューはコース一本。いまどき珍しいプリフィクススタイルだ。「お好きなものをしっかり味わってほしいから、コースであっても料理を選んでほしい」という思いが込められている。それぞれ4種類の中から、前菜とメインを選ぶ。前菜より先には、「アミューズ」と呼ばれる突き出しが2皿運ばれてくる。

 アミューズのふた皿目として必ず登場するのが、「スープ・オ・ピストゥ」。これが夫妻の気持ちを伝えてくれる「ひと皿」だ。
 2009年から2010年にかけての1年間、進太郎さんと侑子さんは、南仏はニース近くの二ツ星レストラン「オステルリー ジェローム」で働いた。
「このスープをまかないで食べて、しみじみ美味しかったんです。お母さんたちが作り続けてきた南仏の郷土料理ですね。自分たちがお店を始めたら、必ずこのスープを出そうと決めていました」

画像: 「スープ・オ・ピストゥ」 21時以降はアラカルトのオーダーが可能。いんげん豆は必ず入るが、野菜は季節ごとに変わる

「スープ・オ・ピストゥ」
21時以降はアラカルトのオーダーが可能。いんげん豆は必ず入るが、野菜は季節ごとに変わる

 季節野菜といんげん豆、ベーコンをコトコト煮たスープ。仕上げにピストゥ(バジルペースト)を加えるのが特徴だ。「松㐂」のそれは、数種類の野菜が一緒に煮込まれているのに、野菜ひとつひとつの味が際立ち、スープそのものがとてもクリア。雑味のない優しい味わい。料理人さんたちに信頼の厚い岩手・石黒農場から取り寄せたホロホロ鳥のスープがベースになっている。ひと匙いただくごとに、身体に染み渡っていくのが実感できる。
 もともとは家庭の味だが、夫妻は食材にこだわり、プロの技を加味して、「洗練」を加えた。藤澤さんたちの、ゲストに対するもてなしの心が、このひと皿にこもっている。

「このスープでまず、ひと息ついてほしいんです」
 はい、ひと息もふた息もつけます。その日の疲れが溶けていく。さあ、これから美味しいもの、いっぱい食べるぞ! とテンションの上がる瞬間だ。

画像: 季節のタルト。フランス仕込みのデザートも人気。冬は「タルトタタン」、初夏には「ベリーのミルフィーユ」が登場

季節のタルト。フランス仕込みのデザートも人気。冬は「タルトタタン」、初夏には「ベリーのミルフィーユ」が登場

 その後に続くのは、季節感をしっかり取り入れた前菜。初夏ならとれたてのアスパラガスやアーティチョーク、秋ならきのこ、冬なら……。杏、桃、ぶどう、いちじく、柿、いちごなどの季節のフルーツをブッラータチーズと合わせたカプレーゼも見逃せない。メインディッシュのメニューには、クスクスや仔牛のカツレツ、赤ワイン煮込みなどのビストロ定番料理が並んでいる。進太郎さんがセレクトしてくれる自然派ワイン(ヴァン・ド・ナチュール)に、どれもがとても合う。

 近所にあったらいいなと心から思えるお店。そういうお店に多々出合ってはきたのだが、かなり遠いこともしばしば。でも、このお店は、私のほんとにご近所なのです。申し訳ありませんが、バンザイ! 
 夜9時以降はアラカルトでも頼めるので、このスープとワインだけでも幸せになれる。心もお腹も満たしてくれるスープ、「松㐂」にあります。

画像: 広々としたカウンターに座れば、侑子さんが料理している姿がよく見える。営業中は進太郎さんがサービス担当。手があけば料理もする。お店の雰囲気を決めているのが、目黒のインテリアショップ「COMPLEX」のオリジナルライト。温かみのある光に包み込まれるような安心感が

広々としたカウンターに座れば、侑子さんが料理している姿がよく見える。営業中は進太郎さんがサービス担当。手があけば料理もする。お店の雰囲気を決めているのが、目黒のインテリアショップ「COMPLEX」のオリジナルライト。温かみのある光に包み込まれるような安心感が

松㐂(まつき)
住所:東京都中野区中野2-33-3
営業時間:18:30〜24:00(閉店) 不定休
電話: 070-3274-3730
公式サイト

高田馬場「L'amitie(ラミティエ)」

【2018年6月公開記事】

 東京のビストロ好きなら誰でも知っている名店「ラミティエ」。2000年のオープン以来、フレンチラバーはもちろん、ご近所からも広く愛されてきた。キッシュロレーヌ、パテ・ド・カンパーニュ、鴨のコンフィ、ステーキフリット(ステーキとフライドポテト)、アッシパルマンティエ(牛ひき肉とマッシュポテトとチーズの重ねオーブン焼き)……と、どれもビストロ料理の定番。

ラミティエを再訪するお客さまたちの多くはお店へ向かう道すがら、好きな料理を思い浮かべ、「あれもこれも食べたい」と、頭の中はいっぱいに違いない。そのつよーい気持ちが満たされたときの満足感! 定番料理のなせるワザだ。

画像: 店内は、フランスのビストロそのもの。ボルドー色のベンチシート、白いカフェカーテン、背の低いワイングラス……。本場そのものの雰囲気を醸し出す。お客様に外国人ファミリーもよく見かける

店内は、フランスのビストロそのもの。ボルドー色のベンチシート、白いカフェカーテン、背の低いワイングラス……。本場そのものの雰囲気を醸し出す。お客様に外国人ファミリーもよく見かける

 このお店には、ご紹介したい料理が多すぎて本当に迷う。料理はその日の気分で選ぶことの多い私だが、必ず注文するのは「イルフロッタント」。クレームブリュレと並ぶデザートの定番で、自慢じゃないが、何度訪れてもほかのデザートに浮気したことがない。しっかり甘くて優しい味に加え、東京でこのデザートを定番でいただけるお店をほかに知らないというのも、ここで食べたくなるの理由のひとつ。

 優雅な響きをもつその名は、「浮き島」という意味だそうだ。卵白を泡立てたメレンゲをゆで、アングレーズソース(カスタードソース)に浮かべてキャラメルソースをかけ、スライスアーモンドをたっぷり。メレンゲはふわっふわだが、やわではなく、口の中で溶けるまでしっかりと存在感を放つ。卵とミルクで作られたソースのまろやかな味わいに、苦みのきいたキャラメルソースと、カリリと香ばしいアーモンドが味に重層感を与えている。フランスのカフェやビストロでよく見かけるデザートだが、日本ではなかなかお目にかかれない。

画像: 「イル フロッタント」ボリューム感もあるが、見た目のわりにはすっとお腹におさまる。バニラの香りも魅力的

「イル フロッタント」ボリューム感もあるが、見た目のわりにはすっとお腹におさまる。バニラの香りも魅力的

 宮下清志シェフは「オープンからずっと、これだけは切らさないよう作り続けています。昔は、ポール・ボキューズの三ツ星レストランでもこのデザートを出していたんですよ。ほっとする味だから、誰にでも愛されるのでしょう。メレンゲをつくった残りの卵黄とミルクでカスタードソースを作る。そんな無駄のないレシピも大好きなんです」と楽しそうに語ってくれた。

 18年間、配合を少しずつ変えながら作り続けている。でも、「甘さを減らしたことはないんです。お腹がいっぱいのときに、ぼやけた味は美味しくない。だから、きっちり甘くしてます」。
 日本人的にあっさり、さっぱりしたものも大好きだが、この手のデザートは「しっかり甘い派」。そんな私に、救世主のようなお言葉!

画像: 宮下清志シェフ。「続けることの難しさを感じています。少し違うな…もっとこうしたいと、やり続けてここまできました。うちみたいなお店が少なくなっているいま、定番にこだわるのもいいかなと」

宮下清志シェフ。「続けることの難しさを感じています。少し違うな…もっとこうしたいと、やり続けてここまできました。うちみたいなお店が少なくなっているいま、定番にこだわるのもいいかなと」

 デザートにここまでパンチがあるということは、料理は推して知るべし。お昼は、前菜にキッシュやお肉のテリーヌ、リエット、サラダ、スープから1品、メインを鴨のコンフィやステーキフリット、アッシパルマンティエ、肉の赤ワイン煮などから1品選んで¥1300。デザートセットは、イルフロッタントを含め5品ほどから選び、コーヒーや紅茶とのセットで¥600。夜はさらに幅広いメニューから前菜とメイン1品ずつをチョイスできて¥2800。

このクオリティーとボリュームでこの値段は、いまの東京で奇跡と言っていいだろう。テーブルの狭い隙間を縫って見事なサービスをしてくれるマダムやスタッフの笑顔も居心地がいい。私はこのお店を「高田馬場の聖地」と呼んでいる。

画像: 早稲田通りから入った小さい路地に、店内同様、ボルドー色のたたずまい

早稲田通りから入った小さい路地に、店内同様、ボルドー色のたたずまい

L'amitie(ラミティエ)
住所:東京都新宿区高田馬場2-9-12柴原ビル1F
営業時間:12:00〜13:30(LO) 18:00〜21:00(LO)
定休日:日曜夜、月曜
電話: ︎03-5272-5010
※掲載している料金は2018年6月現在のものです

富良野「ル・ゴロワ フラノ」

【2019年11月公開記事】

 フランス料理の名店「ル ゴロワ」の大塚健一・敬子夫妻が、大勢の常連客に惜しまれながら東京・青山のお店を閉め、北海道へ移住したのは2016年6月だった。

 紆余曲折を経て今夏、大塚夫妻の新しいお店が富良野の丘にオープンした。名前は「ル・ゴロワ フラノ」。食材を大切にしてきた大塚シェフの料理と同様、お店自体が自然と共存しているような造り。土や木材、石、煉瓦などの自然素材をふんだんに使い、エントランス脇では、左官アーティスト・挟土秀平氏の作品が迎えてくれる。

画像1: 富良野「ル・ゴロワ フラノ」
画像: (写真上)自然素材で建てられた一軒家レストラン。店内は無垢材のテーブルと椅子で揃えられ、土壁には挟土秀平さんの作品が飾られている (写真下)馬たちも幸せそうに暮らしている

(写真上)自然素材で建てられた一軒家レストラン。店内は無垢材のテーブルと椅子で揃えられ、土壁には挟土秀平さんの作品が飾られている
(写真下)馬たちも幸せそうに暮らしている

 テーブルにつくと、ゆったり草を食んでいる大塚家の4頭の馬が、大きなガラスの向こうに見える。遠くに富良野の街と大雪山が。日が落ちれば、森の闇の間に街の灯りがキラキラと煌めく。この空間を味わうためでも、遠方から訪れる価値がある。
 北海道に魅せられた大塚夫妻は、20年ほど前からこの地の食材を取り寄せてきた。いま、その食材たちが育つ土地に暮らすことで、シェフの料理は確実にパワーアップした。

 メニューは青山時代とそれほど変わっていないものの、この新しいお店を初めて訪れるなら、ぜひ召し上がってほしいのが「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」。訪れるたび、私が決まって注文する一品だ。約18年前からシェフが作り続けてきた定番の味。旬の食材を、その食材がいちばん引き立つように調理し、たっぷりの野菜とともにサラダに仕立てている。

画像: 「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」 ランチコース「旬菜 ル・ゴロワ風 サラダランチ」¥2,970、もしくはディナーコース¥7,800で

「旬菜 ル・ゴロワ風サラダ」
ランチコース「旬菜 ル・ゴロワ風 サラダランチ」¥2,970、もしくはディナーコース¥7,800で

 たとえば、牛肉はローストビーフに、鹿や鴨ならテリーヌに。小魚をフリットに、帆立貝柱やイカであればポワレして、鮭の場合はスモークに。ほかに生ハムやモッツァレラチーズも。アスパラガスやブロッコリー、にんじんは、ゆでたりグリルしたり。葉野菜は数種類とり合せ、特製わさびドレッシングで和えておく。

「『盛り過ぎ!』とマダムに注意されたこともあるんです」とシェフが笑うほど、盛りだくさん。丁寧に調理されたひとつひとつの味は、どんな順番でいただいても見事に調和し、食べても食べても飽きることがない。青山でも大好きな一品だったけれど、今回富良野でいただいたサラダは、お皿の上で食材がピカピカ輝き、さらにバージョンアップしていた。

画像: 大塚健一シェフ、敬子マダム。「食材が新鮮なので、毎日わくわくしながら料理してます!」とシェフ

大塚健一シェフ、敬子マダム。「食材が新鮮なので、毎日わくわくしながら料理してます!」とシェフ

 メインディッシュには、蝦夷鹿や北海道の新しいブランド牛「星空の黒牛」のステーキを。蝦夷鹿は、名人ハンターが「鹿自身が撃たれたことに気付かないように撃っている」ため、野生鹿によくある臭みなどは一切なし。清らかで脂分が少なく、するりと胃に収まる。「星空の黒牛」はシェフが最近好んで使う、旨味のある牛肉。どちらも薪窯で焼いてくれる。

 食後のお楽しみとして、春ならいちご、初夏ならブルーベリーなど、北海道のフルーツが楽しめる魅惑的なデザートも登場する。だが、ここのデザートの定番「グレープフルーツのプリン」ははずせない。マダムの敬子さん(もともとパティシエです)のオリジナルで、20年以上作り続けている。いつも迷うのだが、やはりどうしても浮気できない。この完成された美味しさは、ほかでは味わえないから。

画像: 「グレープフルーツのプリン」 ほんのり苦みの効いた味わいと、なめらかな口当たり。「ル・ゴロワ 人気メニューコース」ほかで

「グレープフルーツのプリン」
ほんのり苦みの効いた味わいと、なめらかな口当たり。「ル・ゴロワ 人気メニューコース」ほかで

 北海道といえば夏、と思いがちだが、秋の幻想的な風景も、冬の銀世界も素晴らしい。北海道民となった大塚夫妻の、北の大地に根ざした味。お皿には北海道が山盛りだ。

画像2: 富良野「ル・ゴロワ フラノ」

ル・ゴロワ フラノ
住所:北海道富良野市中御料 新富良野プリンスホテル敷地内
営業時間:12:00〜13:30(LO)、17:30〜20:30(LO)
定休日:月・火曜
電話: ︎0167-22-1123(予約専用)
※ランチ、ディナーともにコースのみ。要予約
公式サイト

銀座「ラフィナージュ」

【2019年1月公開記事】

 目の醒めるようなおいしいひと皿に先日、出合った。銀座『ラフィナージュ』の「フォアグラのテリーヌ」。目の前に置かれたそれは、端正な美しさを湛えていた。

『ラフィナージュ』は、『銀座レカン』の総料理長を10年務めた高良康之シェフが2018年の秋、オーナーシェフとしてオープンした。高良シェフはフランスでの修業はもちろん、国内でホテルやブラッスリー、グラン・メゾンを経験してきたが、自分の目指す道はやはりガストロノミーにあると、満を持してこの店を開いた。

画像: カウンターは奥行きを広くし、シェフが直接料理を出せないような造りに。「サービス人がきちんとお皿をお持ちするのがガストロノミーです。うちにいらしていただくからには、プロのサービスも味わっていただきたい」。ただし、シェフとの会話はカウンター越しで。知識豊富な高良シェフの話はおもしろい

カウンターは奥行きを広くし、シェフが直接料理を出せないような造りに。「サービス人がきちんとお皿をお持ちするのがガストロノミーです。うちにいらしていただくからには、プロのサービスも味わっていただきたい」。ただし、シェフとの会話はカウンター越しで。知識豊富な高良シェフの話はおもしろい

画像: カウンターやテーブル席のほかに、個室も。4名用の個室は、ランチ限定で小学生OK。「子ども心にフランス料理はおいしくて楽しいと感じてほしいので、お昼だけではありますが、お子さま歓迎です」。堅苦しい知識より体験で、フランス料理の楽しさを伝えていくのが高良スタイル

カウンターやテーブル席のほかに、個室も。4名用の個室は、ランチ限定で小学生OK。「子ども心にフランス料理はおいしくて楽しいと感じてほしいので、お昼だけではありますが、お子さま歓迎です」。堅苦しい知識より体験で、フランス料理の楽しさを伝えていくのが高良スタイル

「50歳になっての独立は遅過ぎると思うのですが」と笑うが、豊富な経験を積んできた料理人の“本気”はすごかった。名店『レカン』での蓄積を生かし、さらにモダンな味わいに。目指すは、メイン素材とソース、付け合わせの、皿の上での均等なバランスだという。どれかが突出した存在感を示すのではなく、食べ進むうちに素材とソース、付け合わせが渾然一体となり、完成された見事な味わいになる。

「焼いて塩をするだけといった、素材に頼り過ぎる調理は避けています。一方ではソースを過度に作り込まず、全体のバランスを最も大切にするよう心がけています。じつはこれまでと皿の上の構成は変わっていないのですが、構築の仕方を変えているのです」

画像: 「フォアグラの冷製仕立て」 フォアグラのテリーヌに青い野菜を添えて。濃厚なテリーヌを、軽い塩味だけの爽やかな野菜が引き立てる。ナイフとフォークを入れやすいよう、フォアグラは左、野菜を右に盛り付ける。左利きの客には反対に盛る。最後まで緻密に計算されたひと皿。

「フォアグラの冷製仕立て」
フォアグラのテリーヌに青い野菜を添えて。濃厚なテリーヌを、軽い塩味だけの爽やかな野菜が引き立てる。ナイフとフォークを入れやすいよう、フォアグラは左、野菜を右に盛り付ける。左利きの客には反対に盛る。最後まで緻密に計算されたひと皿。

 この店でぜひ食べてもらいたいのが、季節ごとに様相を変える「フォアグラのテリーヌ」。冬バージョンは、スパイス風味のケーキであるパン・デ・ピスを敷き、赤ワインとポルト酒を煮詰めたソースを乗せている。スパイスと甘酸っぱいソースがフォアグラの濃密な風味に寄り添い、圧倒的な凝縮感に満ちた奥行きのある味と、ビロードのようななめらかな口当たり。しかも、風雅な佇まい。

 従来、フォアグラのテリーヌといえば、フランスの二ツ星以上のレストランでは料理人の腕の見せどころと言わんばかりにメニューに載っていたものだが、最近はあまり見かけなくなった。「近年のフレンチは身近な土地の素材を使う傾向があり、フォアグラを使うことが少なくなりました。しかしフランス料理においてフォアグラは特別な素材ですから、これからもメニューに必ず載せていこうと思っています。僕にとっては、背筋が伸びる、特別な食材なのです」

画像: 高良康之シェフ。1967年生まれ。2007年から2018年春まで『銀座レカン』料理長。「レカンで教えてもらったことのひとつ、ホスピタリティを特に大切に受け継いでいきたいです」。シェフの人柄を反映してか、スマートで心地のよいサービスもここの魅力だ

高良康之シェフ。1967年生まれ。2007年から2018年春まで『銀座レカン』料理長。「レカンで教えてもらったことのひとつ、ホスピタリティを特に大切に受け継いでいきたいです」。シェフの人柄を反映してか、スマートで心地のよいサービスもここの魅力だ

 フォアグラは鮮度勝負の素材だ。「ラフィナージュ」では、日本に輸入された翌日には店に到着するように手配。包丁を使わず、フォークの柄で血管を1本1本取り除くという。想像するだけでもクラクラする細かい作業だが、鴨の繊細な肝臓を傷つけないように血管を取り除くには、この方法しかないのだとか。

 塩とこしょう、香辛料、コニャックなどで1日マリネしてから火入れをする。脂肪分60〜70%のフォアグラの火入れは、1℃でも間違うと脂が溶けてしまう。温度を厳密に管理し、火入れ時間を見極める。これを冷やし、1週間寝かせて味をなじませる。寝かせることで、味にきれいな丸みが出てフォアグラのよさが醸し出されるのだという。丁寧に丁寧に作られたテリーヌは、ゲストが食べる時間を見計らって室温に戻し、料理として完成させる。

画像: 「ずわいがにと紅玉のラペ」 ほぐしたずわいがにに、紅玉りんごのすりおろしのコンビネーション。ラディッシュと赤と黄色のパプリカ、ねぎを乗せ、甘みと酸味のコンビネーションで、ずわいがにの新しい味を展開。かにみそを乾燥させたものを散らして、アクセントに。奥の皿は焼きずわいの脚。山口・萩に、たった1本残る柚子の原木「じゃがたら」の実を添えて。「この時期に旨味が増してくるずわいがにを、2種類の食べ方で楽しんでください」

「ずわいがにと紅玉のラペ」
ほぐしたずわいがにに、紅玉りんごのすりおろしのコンビネーション。ラディッシュと赤と黄色のパプリカ、ねぎを乗せ、甘みと酸味のコンビネーションで、ずわいがにの新しい味を展開。かにみそを乾燥させたものを散らして、アクセントに。奥の皿は焼きずわいの脚。山口・萩に、たった1本残る柚子の原木「じゃがたら」の実を添えて。「この時期に旨味が増してくるずわいがにを、2種類の食べ方で楽しんでください」

 こんなに濃やかな気配りをされた料理が、おいしくないわけがない。完成度の高さは、ここまでの道のり、すなわちひと皿にかけられた手間に比例している。力強さと繊細さ。高良シェフが作る料理には、美味を司る神様が宿っている。

「ラフィナージュ」とは、「熟成」の意味。すでに円熟期を迎えたシェフのさらなる「ラフィナージュ」を味わいに、フレンチ好きも、これから食べ歩いてみようと思っている若い人たちも、この店を訪れてほしい。きっと記憶に残る食事になるにちがいないから。 

ラフィナージュ
住所:東京都中央区銀座5-9-16 GINZA-A5 2F
営業時間:12:00〜14:00(LO)、18:00〜20:00(LO)
定休日:月曜・第3火曜
電話: 03-6274-6541
公式サイト

神宮前「レラン」

【2023年3月公開記事】

画像: 「トリュフ ねぎ ジロール茸 ヴァンジョンヌ」。こちらは2人分。切り分ける前に客席でお披露目してくれる

「トリュフ ねぎ ジロール茸 ヴァンジョンヌ」。こちらは2人分。切り分ける前に客席でお披露目してくれる

 サクサクと崩れるパイの中に、甘くとろけるようにやわらかなねぎと、たっぷりのトリュフ。トリュフの濃密な香りに包まれたパイとソースを口に入れると、複雑で奥行きのある味わいに圧倒された。
 コースのどのお料理も素晴らしいのだが、特に印象に残ったひと皿はこの、ねぎとトリュフのパイ包み。古典料理を紐解いて自分なりに解釈していくのも、シェフの料理へのアプローチのひとつだ。古くは肉や魚をメインに包んだが、この店のシェフ、信太竜馬さんは野菜を主体に。 

画像: 切り分けられて、各々のお皿に盛られて運ばれてきたパイ包み。素晴らしい香りとさまざまな食感が織りなすめくるめくハーモニーに陶然となる。※「Menu élan」の内容は日ごとに季節ごとに変わるが、このパイ包みは春先まで登場予定

切り分けられて、各々のお皿に盛られて運ばれてきたパイ包み。素晴らしい香りとさまざまな食感が織りなすめくるめくハーモニーに陶然となる。※「Menu élan」の内容は日ごとに季節ごとに変わるが、このパイ包みは春先まで登場予定

 主役のねぎは一夜干しにして味を凝縮させ、細かく刻んだトリュフを合わせる。さらに薄切りにしたトリュフをのせ、パイで包んで焼き上げている。焼きたてのパイを切ると、トリュフの芳醇な香りが立ち昇る。付け合わせは、モリーユ茸のソテーに、細切りにしたトリュフをたっぷりのせて。このトリュフは食感を楽しむため、生のまま。ひと皿の上に、トリュフの食感と香りを余すところなく楽しめる工夫が凝らされている。ソースは2種類。皮付き玉ねぎをオーブンで30〜40分焼いて焦がし、さらに2時間ほど煮詰めた、香ばしい焦がし玉ねぎのソース。もうひとつは、古典的なソース・ヴァンジョンヌ。フランス・ジュラ地方の白ワイン、ヴァンジョンヌとクリームに、バターを使わず、2〜3日かけて煮詰めた野菜のブイヨンをプラスすることで、重くなりがちなソースを軽快に仕上げた。

画像: 大きな扉には店名「élan」の文字だけが控えめに輝いているだけだが、その奥には、東京の夜景が窓一面にに広がるダイニングが続く。暮れなずむ東京スカイスクレイパーを眺めながら、特別な時間が始まる。個室もあるので、ビジネスの会食、家族のハレの日の集まりにも PHOTOGRAH BY ATSUSHI KONDO

大きな扉には店名「élan」の文字だけが控えめに輝いているだけだが、その奥には、東京の夜景が窓一面にに広がるダイニングが続く。暮れなずむ東京スカイスクレイパーを眺めながら、特別な時間が始まる。個室もあるので、ビジネスの会食、家族のハレの日の集まりにも

PHOTOGRAH BY ATSUSHI KONDO

 表参道「GYRE」の4階。ここにミシュラン1ツ星のフレンチレストランがあるのをご存知だろうか。オーナーシェフは信太竜馬さん。筆者は、2020年、最初の緊急事態宣言の少し前、開店直後の「エラン」(現・レラン)に伺い、こんなにも見事に完成された料理を作る若い料理人さんがいるのかと驚いた。約3年後に再会した信太シェフの料理は、さらに進化を遂げていた。「オープン時はそれまでに学んだことを表現していましたが、いまは、自分のスタイルを見つけられたと思います」。

 メニューはシェフおまかせのコース(2種)のみ。こちらの「Menu élan」は12皿。8皿が提供された後、20種類ほどを揃えたチーズプレートが登場。その後はお口直しのカクテル、2皿のデザート、小菓子と続く。“この店の、ひと皿” というタイトルには反するが、どのひと皿も甲乙つけがたく、せっかくのコースでもあり、もう少しご紹介しよう。

画像: スープ「アンチガスピヤージュ」

スープ「アンチガスピヤージュ」

 最初に必ず出されるスープ、その名も「アンチガスピヤージュ」。ガスピヤージュとは“無駄”という意味で、食品ロスをなくす運動の名称にも使われている。野菜の皮や根など、料理には使いづらい部分を2〜3日かけて煮詰めてスープに。その日その日で、使う野菜の味や香り、色合いも違うので、同じ味には2度と出会えない。このスープには、信太シェフの料理に対する姿勢が体現されている。

画像: 「甘鯛 そら豆 スープドポワソン」

「甘鯛 そら豆 スープドポワソン」

「スープドポワソン」、これも信太シェフのスペシャリテだと筆者は思う。中国料理にヒントを得て、フレンチでも度々登場する料理だが、信太シェフのそれは他と一線を画す。ウロコがビシッと立ち上がり、ザクザクとした食感が見事。しかも、身はふわふわ。

画像: 初めは身の部分を焼き、脂が1〜2滴落ちてきたところでひっくり返し、皮目をじっくり炙る。ウロコに落ちた自らの油で、ウロコを揚げていく。通常は、油をウロコにかけながら揚げ焼きするのだが、この方法だと身に火が入り過ぎてしまうからとか

初めは身の部分を焼き、脂が1〜2滴落ちてきたところでひっくり返し、皮目をじっくり炙る。ウロコに落ちた自らの油で、ウロコを揚げていく。通常は、油をウロコにかけながら揚げ焼きするのだが、この方法だと身に火が入り過ぎてしまうからとか

「煮詰めて水分を飛ばし、味を凝縮させるのがフレンチの手法です。炭の力で魚の余分な脂を落として味を詰めていくこの手法は、フレンチそのものだと思います」
 鯛の身を器に盛り、お客様の目の前で、熱々のスープドポワソン(魚のスープ)をかける。

 信太シェフの料理は楽しさにあふれていて、食べると心まで満たされるが、不思議とお腹は苦しくならない。「コース全体で味を完成させるように料理を組み立てています。最初のお皿で足りない味を、次のお皿で補います。例えば、酸味を入れないお皿の後に酸味を加えたお皿を、という具合です。チーズプレートまで楽しんでいただけるように、全体の味のバランスを考えています。エランのロゴマークは『円』です。コース全てを召し上がって円として完結するように料理を作っています」

画像: 圧巻のチーズプレート。白かび、青かび、ウォッシュ、シェーヴル、ハードタイプと種類も豊富。写真の料理はすべて「Menu élan」¥19,360(税・サービス込み)より

圧巻のチーズプレート。白かび、青かび、ウォッシュ、シェーヴル、ハードタイプと種類も豊富。写真の料理はすべて「Menu élan」¥19,360(税・サービス込み)より

「今は、料理を作れることがうれしくてしかたない」と言う信太シェフ。コロナ禍の苦しい時期もさまざまな研究や挑戦を続けてきたが、養蜂もはじめたそうだ。都会の自然循環の一助になればと、GYREの屋上で都市型養蜂にも取り組んでいる。昨年は1箱を採取してお客さまへの手土産にした。今年はビルの屋上数カ所に置いて10倍量の蜂蜜を、と意気込む。子どもたちの料理教室も開催し、次世代の食育にも力を注ぎたいと言う。
 食に真摯に向き合い、テーブルの上ばかりでなく、地球環境にも目を向けつつ、日々進化し続ける信太シェフ。幸福な高揚感に満たされるその料理から、目が離せそうにない。

画像: 信太竜馬(しだ りょうま)シェフ。銀座「ロオジエ」、パリ「オテル・ド・クリヨン」で修業し、2012年に銀座「エスキス」入店、2017年からスーシェフとして活躍した後、2020年1月に「エラン」を開店

信太竜馬(しだ りょうま)シェフ。銀座「ロオジエ」、パリ「オテル・ド・クリヨン」で修業し、2012年に銀座「エスキス」入店、2017年からスーシェフとして活躍した後、2020年1月に「エラン」を開店

レラン
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE4F
営業時間 : 18:00〜24:00(20:30 最終入店)
定休日:日・月
TEL.03-6803-8670
公式サイトはこちら

札幌「モリエール」

【2022年5月公開記事】

 窓に円山公園の樹々の葉が揺れ、店内にはほどよい緊張感と温かな空気が流れている。ワインが開けられ、皿が運ばれてきた。突きだしはあつあつのきのこのスープ。フレンチには珍しく、舌がやけどしそうに熱い。きのこの香りがこれでもかとあふれている。

「北海道フレンチに中道博あり」。フランス料理界やフレンチ好きに、彼の名前は轟とどろいている。札幌のフランス料理店「モリエール」のオーナーシェフで、ほかにも6つのレストランやオーベルジュを手がける。昨秋、友人たちと「モリエール」を訪れた。食材の味を目いっぱい引き出し、力強く、洗練された味わい。食材が皿の上で躍動している。最新鋭の調理法や道具は一切使わない。食卓に、店の空気感に、これからのレストランのあり方が見えたような気がした。

中道博。フレンチシェフ。レストラン「モリエール」「マッカリーナ」ほかを手がけるラパンフーヅ代表。その行動力と深い洞察力、情の厚さで料理人や生産者たちから慕われている

 生まれは北海道登別市。金箔職人だった父が金沢へ移住したのは、中道が3歳のとき。中学3 年まで金沢で育った。「思い出せば、貧しいけれど掃除が行き届き、季節の花が活けられて、凜とした空気が漂う家でした」。料理人になったのは、職人になりたかったから。テレビで見た、法隆寺の宮大工の棟梁・西岡常つね一かずの「人間は褒められると、褒められたくて仕事をするようになる。そういうふうに造られた建物には、ろくなものがない」という言葉が心に残った。「褒められない仕事をしたいと思ったわけです。それなら職人だと」。調理師学校卒業後、「札幌グランドホテル」の料理部門に就職。4 年間働き、フランスへ渡った。3年間の修業を経て北海道に戻り、「モリエール」をオープン。北海道を代表する店に育てた。その10年後、今も師と仰ぐアラン・シャペルに出会った。

画像: 「モリエール」はミシュランガイドで三ツ星を獲得。今春からメニューを少し替える予定。テーマは「腹八分目、おかわりあり」。それぞれの客に合った量で気軽に楽しんでほしいとの思いをメニューに込める

「モリエール」はミシュランガイドで三ツ星を獲得。今春からメニューを少し替える予定。テーマは「腹八分目、おかわりあり」。それぞれの客に合った量で気軽に楽しんでほしいとの思いをメニューに込める

画像: 調理される前の百合根。百合根は羊蹄山の麓あたりが日本一の産地

調理される前の百合根。百合根は羊蹄山の麓あたりが日本一の産地

 中道といえば、地元の食材を大事にし、その魅力を最大限に生かした料理で知られる。北海道は日本一の百合根(ゆりね)の生産地。そのことを知ってほしいと、百合根の料理2品を作ってくれた。夏の間に育った百合根を、秋に植えかえ、雪の下で休眠させ、春になるのを待つ。この作業を繰り返すこと6 年。ようやく客に出せる百合根となる。

 日本料理に上品に使うのではなく、大地のエキスをため込んだ百合根の力強さを表現したいと、中道は27、28年前から「茹(ゆ)でこぼし」と呼ぶ料理を作り続けている。その日の百合根によって、塩加減を調整しつつ、茹で時間を秒単位で変え、野菜ブイヨンのクリームを添える。やわらかな甘みが際立ち、口あたりはほっくり。目を閉じれば、百合根の育った大地がまぶたに浮かぶようだ。当初は突きだしとして、ひと口サイズで出していた。「素朴すぎて自信がない中、ずっと出し続けていたらある日、『いいねえ、この料理』って。ああ、お客さまに受け入れられた!と思いました」。その後、メニューに加えた。このように「モリエール」では、数年かけてメニューに載るものもある。

画像: 「百合根の茹でこぼし」。「北海道の雪景色と色合いが重なる、冬の料理」と、中道のお気に入りのひと皿

「百合根の茹でこぼし」。「北海道の雪景色と色合いが重なる、冬の料理」と、中道のお気に入りのひと皿

 一方、最近作り始めたのが、「百合根のロースト」。半分に切った百合根の下半分だけをバターに浸してローストし、上半分は同時に蒸し煮にする。上下を返さず、そのまま火入れをするので、下半分は焦げたバターの香りをまとい、しっとり柔らかな口あたり。上半分は火の通りの浅い、しゃっきりした食感で、本来の甘みを感じる。基本的な調理法しか用いていないのに、上下で異なる味わいと食感のグラデーションを楽しめるひと皿。

画像: 「百合根のロースト」。息子の博一が食材担当マネジャーとして働くデンマークの名店「noma(ノマ)」のカリフラワーのローストから調理法の着想を得た

「百合根のロースト」。息子の博一が食材担当マネジャーとして働くデンマークの名店「noma(ノマ)」のカリフラワーのローストから調理法の着想を得た

画像: 「黒蝦夷アワビのロースト」。むっちり柔らかなアワビに、濃厚なイカスミの味が重なる

「黒蝦夷アワビのロースト」。むっちり柔らかなアワビに、濃厚なイカスミの味が重なる

 3皿目はそれまでの白い皿に対して真っ黒な黒蝦夷アワビの料理。昆布で巻いて10分ほど蒸し、イカスミのパン粉をつけて太白ごま油で焼く。イカスミのソース、アワビの肝を酒粕と味噌に漬けて発酵させたペーストと、木の芽が香るイカスミのリゾットを添える。アワビを蒸すと一瞬、パンッと膨らむ。その瞬間に引きあげるのがこの料理の「妙」。その一瞬を逃すとアワビは硬くなってしまう。中道は「食材には旬が二つある」と言う。収穫時の旬と、火入れしたときの旬。それらの「旬」を見極めるのが料理人の仕事なのだと。

モリエール
住所:北海道札幌市中央区宮ヶ丘2-1-1 ラファイエット宮ヶ丘1F 
電話:011(631)3155
公式サイトはこちら

美瑛「ビブレ」

【2022年5月公開記事】

 札幌から車で約2時間、美瑛に向かう。四季折々に美しい姿を見せるなだらかな丘にある、中道がプロデュースしたパン工房を併設するオーベルジュ「ビブレ」と、後進のためにつくった「美瑛料理塾」を訪ねた。どちらも自治体と手を組んで、廃校になった小学校を活用し、2014年にオープンした。美瑛が小麦の一大産地であることを生かし、「ビブレ」では石窯で焼いたパンを主役にしている。

画像: 中道がプロデュースしたオーベルジュ「ビブレ」

中道がプロデュースしたオーベルジュ「ビブレ」

画像: 焼きたてのクロワッサンが朝食に。焼き切る直前のタイミングで窯から出すため、中はふわふわでバターの香りが素晴らしく、外皮はサクサク。おいしさの絶頂は数分。まさにクロワッサンの「旬」が味わえる。宿泊客だけの特権だ

焼きたてのクロワッサンが朝食に。焼き切る直前のタイミングで窯から出すため、中はふわふわでバターの香りが素晴らしく、外皮はサクサク。おいしさの絶頂は数分。まさにクロワッサンの「旬」が味わえる。宿泊客だけの特権だ

 パン職人の小川久雄は、フランスから取り寄せた材料で石窯を組み立てるところから参加し、薪で焼くパンに取り組んできた。中道は話す。「最初の1~2年、小川は薪の火や窯の熱の扱いに苦労していました。5年目に、窯の中が空だったのを見て、なんでパンを焼かないんだと尋ねたら、『窯の中で熱が暴れているので、落ち着くのを待っている』と。ああ、一人前に育ったなと思いました」

画像: 「ビブレ」のパンは、食パンやカンパーニュなどの食事用のパンから、クロワッサンやマフィンなどのリッチなもの、パウンドケーキまで幅広いラインナップ。小麦粉は美瑛産を含む国産のものと外国産のものとを、パンによって使い分けている

「ビブレ」のパンは、食パンやカンパーニュなどの食事用のパンから、クロワッサンやマフィンなどのリッチなもの、パウンドケーキまで幅広いラインナップ。小麦粉は美瑛産を含む国産のものと外国産のものとを、パンによって使い分けている

画像: 窯にパンを入れる小川。「火の強さではなく、窯の中の熱量で粉を膨らませて焼いていきます」

窯にパンを入れる小川。「火の強さではなく、窯の中の熱量で粉を膨らませて焼いていきます」

「目で見て、耳で聞き、肌で感じて、石窯の様子を確認します。石窯では五感をフルに使わなければなりません」と小川は言う。「ビブレ」の目の前に広がる畑で採れた小麦の粉も使い、27、28種類のパンを毎日焼く。石窯で焼いたパンといえば、口あたりのしっかりした素朴な焼き上がりのものが多いが、ここのパンはそれらとは一線を画す。粉の甘みや香りがくっきり際立ち、味の余韻が長い。皮はしっかり焼けてパリッと香ばしく、中はしっとりきめこまか。力強い味わいながら、洗練されているのは、中道の料理と同じだ。

画像: 薪の火入れは毎朝5時。硬くて燃えやすく、火力が強いナラ材を使う。窯の温度は250℃くらいまで上げる

薪の火入れは毎朝5時。硬くて燃えやすく、火力が強いナラ材を使う。窯の温度は250℃くらいまで上げる

 中道が大切にしている言葉がある。敬愛するアラン・シャペルが彼に言った「真実の料理は家庭にある」。本来プロが手がけるレストランの料理は家庭のそれとは大きく異なるはずなのだが、料理の極意はここにある、と。家の食事は、旬の素材、できたての料理を家族で食べるのが喜び。なにより、家族の体調などを慮(おもんぱか)る作り手の気持ちが込められている。「素材に手をかけすぎず、できたてを出す」という彼の料理の哲学は、シャペルの言葉に通じる。

「ビブレ」の客は、ディナー前にまずパン工房に案内される。窯から出したばかりのプレッツェルとシャンパンを石窯の前で楽しんでから、ダイニングへと向かうのだ。「ゆくゆくは工房の作業台をテーブルにして、焼きたてのパンと窯から出したばかりの料理でもてなしたい」と中道は“これからのレストラン”の姿を思い描く。

画像: この日の「美瑛料理塾」のテーマは「コック・オー・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)」。調理実習前に、料理が作られた土地の背景や農産物についての授業を受ける。廃校を活用した建物内には、料理関係の良書がずらりと並ぶ図書室もある

この日の「美瑛料理塾」のテーマは「コック・オー・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)」。調理実習前に、料理が作られた土地の背景や農産物についての授業を受ける。廃校を活用した建物内には、料理関係の良書がずらりと並ぶ図書室もある

 名を成すことを望まない中道だが「料理から学んだ大切なことを次世代につなげていきたい」と考えている。「美瑛料理塾」はその試みのひとつ。現在はふたりの若者が寄宿舎生活で料理を学んでいる。これまでは料理の技を教えたり、ともに生産現場を訪ねたりしてきたが、今後は料理の根っこの部分をメインに教えていく予定だという。

「料理の技術は時がたつに連れて変わっていく。それよりも、なぜこの料理が生まれたのか、なぜこの素材にはこの火入れなのか。レシピをたくさん覚える必要はない。レシピの行間を読み取る力が大切なんです」

画像: パン工房の作業台で、中道を囲んで料理人と塾生たちが集う

パン工房の作業台で、中道を囲んで料理人と塾生たちが集う

 時には、塾生や仲間とともに工房の石窯の前の作業台を囲み、夜遅くまで話し込む。目の前には窯から出したばかりの「コック・オー・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)」と焼きたてのパン。中道は言う。「幸せはシンプルなものなんです」

ビブレ
住所:北海道上川郡美瑛町字北瑛第2 北瑛小麦の丘
※1~3月は冬季休業
電話:0166(92)8100
公式サイトはこちら

軽井沢「クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢」

【2023年8月公開記事】

画像: 「エキゾチック・ヴァシュラン」ライムのメレンゲの中には、ココナッツミルクで炊いたタピオカ、ひと手間加えたパイナップル、パッションフルーツにマンゴー、ココナッツソルベ、ココナッツのチュイル。それらをココナッツピュレで作った軽いムースでふわりと覆って。ピニャコラーダのソルベ、マンゴーのソースとともに楽しむエキゾチックな夏の涼味。「コラボレーションデザートセット KEIKO NAGAE meets 旧軽井沢」¥3,300 全てお飲み物(コーヒー、紅茶、ハーブティー)付き<サービス料・別>

「エキゾチック・ヴァシュラン」ライムのメレンゲの中には、ココナッツミルクで炊いたタピオカ、ひと手間加えたパイナップル、パッションフルーツにマンゴー、ココナッツソルベ、ココナッツのチュイル。それらをココナッツピュレで作った軽いムースでふわりと覆って。ピニャコラーダのソルベ、マンゴーのソースとともに楽しむエキゾチックな夏の涼味。「コラボレーションデザートセット KEIKO NAGAE meets 旧軽井沢」¥3,300 全てお飲み物(コーヒー、紅茶、ハーブティー)付き<サービス料・別>

 全国的にうだるような暑さが続き、休日には少しでも涼しい場所へ移動したくなる。そんなとき、たとえば東京から車で2時間強の避暑地・軽井沢は有力な候補。洒落たカフェや気軽なビストロ、蕎麦屋から正統派のフレンチまで、食の楽しみも満載のエリアだ。
 当サイトでお菓子のレシピを紹介しているパリのパティシエ、長江桂子さんが、軽井沢のデザートレストランでオリジナルの新作デザートを作っていると聞き、早速車を走らせた。

画像: みずみずしい苔と風にそよぐ樹々の緑が眩しい森の中の一軒家レストラン「クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢」。庭の奥には小川が流れ、かつてクレソンが自生していたことから店の名前に。テラス席で楽しむお客様が多い

みずみずしい苔と風にそよぐ樹々の緑が眩しい森の中の一軒家レストラン「クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢」。庭の奥には小川が流れ、かつてクレソンが自生していたことから店の名前に。テラス席で楽しむお客様が多い

 軽井沢銀座から奥の小道を辿れば、冴えわたる緑の中に「クレソンリバーサイドストーリー 旧軽井沢」が現れ、花の咲き乱れるエントランスが迎えてくれた。今夏、この自然がそのまま残された緑豊かな場所で、長江桂子さんが考案し、作るデザートが楽しめるのだ。
 

画像: デザートにソースを添える長江桂子さん。パリ在住だがこの夏は軽井沢で生活し、デザートを作り、レストランスタッフのパティスリー教育に携わる

デザートにソースを添える長江桂子さん。パリ在住だがこの夏は軽井沢で生活し、デザートを作り、レストランスタッフのパティスリー教育に携わる

 長江さんはミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」や、三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」でシェフ・パティシエを務め、現在はパリを拠点にフリーランスとして活躍するスーパーパティシエだ。各国で菓子ブランドや店舗の立ち上げ、メニューのプロデュース、国際的な晩餐会やイベントを手がけ、文字通り世界を飛び回る。グローバルに信頼の厚い長江さんだが、自分のお店は今は持たないとのこと。なので、長江さんのデザートをリアルに味わう稀少な機会でもある。

「この地の風景をデザートに」。
その思いを叶える生産者との出会い

画像: 「桃のバーベナ風味」。爽やかなバーベナが香る桃のコンポートと、軽やかに仕上げた口どけのよいバラ風味のクリーム、桃のジュレ、フロマージュ・ブランのソルべ。桃のピュレをラズベリーでほんのりと色づけし、バラの香りをまとわせて乾かし、花びらに見立てて桃のコンポートの上に。クラシックなフランス菓子であるサクリスタン(まぶした砂糖をキャラメル状になるまで焼き上げたねじりパイ)とバーベナの葉の砂糖がけ、バーベナを漬け込んで香りを移したシャンティが横に添えられている

「桃のバーベナ風味」。爽やかなバーベナが香る桃のコンポートと、軽やかに仕上げた口どけのよいバラ風味のクリーム、桃のジュレ、フロマージュ・ブランのソルべ。桃のピュレをラズベリーでほんのりと色づけし、バラの香りをまとわせて乾かし、花びらに見立てて桃のコンポートの上に。クラシックなフランス菓子であるサクリスタン(まぶした砂糖をキャラメル状になるまで焼き上げたねじりパイ)とバーベナの葉の砂糖がけ、バーベナを漬け込んで香りを移したシャンティが横に添えられている

 長江さんによるコラボレーションデザートは3皿。食材で夏をしっかり感じさせてくれる「桃のバーベナ風味」は、バーベナの爽やかな香りが桃を引き立て、軽いバラ風味のクリームやフロマージュ・ブランのソルベのミルキーさで、味わいが重層的に。バーベナは「レモン・バーベナ」とも呼ばれ、フランス語名は「ヴェルヴェーヌ」。レモンの香りのするハーブだ。
「初めてこの庭に足を踏み入れたときの風景の印象をデザートにしようと思ったんです。みずみずしいグリーン、樹々の合間から差し込む光、樹々にそよぐ風、そして小川のせせらぎ。何もかもがエレガントでした」

「桃とバーベナを主役にしたい」と閃いた長江さん。日本では良質なバーベナは手に入りにくいが、軽井沢には野菜とハーブの素晴らしい生産者がいることも理由のひとつだった。数年前に軽井沢で仕事をしたときに知り合った「軽井沢サラダふぁーむ」の依田義雄さんと美和子さん夫婦である。依田さんの畑にはいつも近隣の料理人たちが野菜とハーブを求めて訪れる。地元は無論のこと、東京の名だたるレストランのシェフたちも依田さんの野菜を取り寄せている。「依田さんがバーベナを育てているのを存じ上げていたので、今回のデザートは絶対にこの組み合わせで行こうと思いました」

画像: レストランで使うバーベナを摘みに、農園を訪れる長江さん。「香りがとてもいいし、とにかくハーブが生き生きしています。依田さんのバーベナがあるからこそ、あのデザートを作ることができます」と長江さん。右は温厚な笑顔の園主・依田義雄さん。軽井沢「ハルレニテラス」にて、採れたて野菜と加工品のセレクトショップ「karuizawa vegetable ココペリ」も営む

レストランで使うバーベナを摘みに、農園を訪れる長江さん。「香りがとてもいいし、とにかくハーブが生き生きしています。依田さんのバーベナがあるからこそ、あのデザートを作ることができます」と長江さん。右は温厚な笑顔の園主・依田義雄さん。軽井沢「ハルレニテラス」にて、採れたて野菜と加工品のセレクトショップ「karuizawa vegetable ココペリ」も営む

 依田さんの畑は、軽井沢の中心部から車で20分ほど。少量多品種を有機栽培で育てている。家々に囲まれているが、その場所だけ空がパーッと開け、風が気持ちよく抜けていく。「住宅街なので農薬は使えないし、使わない。野菜たちが心地よく育つ環境づくりを心がけています」と、依田さんは話してくれた。
 ここは、料理人たちが自分の使いたいものを自分で摘み取って申告するシステム。「使いたい野菜のサイズや状態を見極めて収穫できるのがありがたい。しかも、自分で収穫した野菜だから思い入れが深くなり、料理にも力が入ります」と長江さん。
 その日も長江さんの手には、元気いっぱいのバーベナがあった。

お客様の最高の「瞬間」を、
手間ひまかけてスタッフと共に創りあげる

「レストランのデザートは、その場での特別な瞬間を楽しんでいただくもの」と語る長江さん。今回、供される3品も、お客様の一瞬の喜びのために、五感に響くさまざまな工夫が凝らされている。
 冒頭の「ヴァシュラン」は、焼いたメレンゲにクレーム・シャンティやアイスクリームを合わせたデザート。19世紀にブラッスリーやレストランのデザートとして、リヨンで誕生したと言われる。長江さんはこれを、エキゾチックな南国フルーツでモダンなデザートに。しかも、その演出がドラマチックだ。重ねた深皿に店の庭のシダをあしらい、庭のミントとドライアイスをひそませて、テーブル上で白い煙が出てくる仕掛け。ミントの澄んだ香気が一瞬ふわりとたちのぼり、一気に涼しい空気に包まれる。

画像: 「フォレ ノワール」バニラとトンカ豆のチョコレートパルフェに、ショコラのシガレット生地、サワーチェリーのコンポート。ショコラのクレーム・シャンティに、生のさくらんぼ、カカオニブ入りのチュイル、キャラメライズしたピーカンナッツ。ラズベリーパウダーで華やかに演出し、横にはさくらんぼやオレンジをマスカルポーネクリームにのせて。温かいサワーチェリーのジュビレ(※フルーツをソテーした温かいソース)をお客様の前で添えて完成。長江さんとスタッフが摘んだサワーチェリー「ノーススター」が主役のひと皿

「フォレ ノワール」バニラとトンカ豆のチョコレートパルフェに、ショコラのシガレット生地、サワーチェリーのコンポート。ショコラのクレーム・シャンティに、生のさくらんぼ、カカオニブ入りのチュイル、キャラメライズしたピーカンナッツ。ラズベリーパウダーで華やかに演出し、横にはさくらんぼやオレンジをマスカルポーネクリームにのせて。温かいサワーチェリーのジュビレ(※フルーツをソテーした温かいソース)をお客様の前で添えて完成。長江さんとスタッフが摘んだサワーチェリー「ノーススター」が主役のひと皿

「フォレ ノワール」は、フランス語で「黒い森」の意味。古くから作られてきた地方菓子で、チョコレート風味のビスキュイ、クレーム・シャンティ、森の果実であるさくらんぼを重ねたケーキだ。長江さんはチェリーにこだわり、長野・中野市の果樹園「武六園」へ。流通量から市場に出回る機会のない果実を無駄にするのは忍びないという思いもあり、サワーチェリーの収穫にスタッフとともに励んだ。
「武六園さんのサワーチェリーの酸味のおかげで、このデザートの味が決まったんです」。皆で手摘みしたチェリーは、コンポート、そしてジュビレと呼ばれる温かいソースとしても登場。冷たいパルフェ・グラッセに温かいソース冷温のコントラストが、鮮烈な印象を残す。また、クリスピーな食感にもカリカリ、シャクシャク、ほろっとしたカリカリ感など、数種類の口当たりを用意して、多彩な食感をひと皿に盛り込む。

画像: 厨房は常に真剣勝負の場。左から神場由さん、長江さん、武井健太朗さん

厨房は常に真剣勝負の場。左から神場由さん、長江さん、武井健太朗さん

 この夏、長江さんにはもうひとつのミッションがある。レストランのスタッフの育成だ。レストランデザートを担当したことのないパティシエや、デザート作りをしてこなかった料理人に伝えたいことが、たくさんあるという。「お客さまの一瞬の喜び」を実現するには、お皿の上のお菓子はもちろん、サービスのタイミングも重要だ。長江さんは、パティシエやサービススタッフにこまやかな指示やアドバイスを伝え、スタッフも懸命にそれを吸収していく。

 10年のパティシエ歴のあるチーフパティシエ・神場由さんは、「デザートは、見た目だけじゃなくて、味わい、食感、香りなど五感で楽しむものだと知りました。また、長江さんは食材を大切にされていて、生産者さんの想いまで伝えてくれます。今まで生産者さんとお会いすることがなかったので、こんな世界があるのだと新鮮で、目が開きました」と話す。
 料理人としてこのレストランで働いてきた武井健太朗さんは「メニュー構築のプロセスと考え方に学ぶことが多く、勉強になります。一緒に生産者さん巡りをしましたが、彼らと長江さんのやりとりを聞くことも刺激になります」

 レシピに合わせて食材を注文するのではなく、生産者さんとやりとりを重ね、食材に合わせてレシピを組み立てていく。「まずは会いに行ってその方の想いを大切に、場の空気感、風景、食べた時の第一印象など織り上げてレシピにしていく」と長江さん。そのようにして、例えば秋に美味しい栗が育っていると聞けば、栗のデザートを考案する。
 長江さんが長年携わってきた三つ星レストランでは、デザートはコースの一環として存在しているため、パティシエは料理人と同じく、食材に対する知識を深め、それを主役にレシピを考えていくことが多い。そんな長江さんのデザートは、素材自身の持つ糖度を引き出す調理をすることで、添加する糖分はぐっと控えられている。どこまでも軽快なのは油脂量を抑えているから。主役の素材の味わいのインパクトはしっかり、食べ心地は軽やか。華やかで優雅な喜びを満喫しつつ、身体に優しいスイーツなのだ。

 軽井沢での長江さんのデザートは、土地の食材にインスピレーションを得て、この季節でしか表現できないひと皿。そう、この夏しか出合えない味。
 秋には、秋ならでは素材を用いたデザートに加え、長江さんが手がけるアフタヌーンティーが登場するという。何度でも車を走らせて通いそうな予感がしてきた。いや、次はシードルやワインと合わせて楽しむために、新幹線に乗り込もうか。

画像: 物語のなかへ誘われそうな気配が漂う、クレソンリバーサイドストーリー 旧軽井沢のエントラス。グランドオープンは来春予定。現在は、長江さんの手がける「コラボレーショデザートセット」のほか、オリジナルのアフタヌーンティーなどを提供するレストランと、焼き菓子などのテイクアウトができるパティスリー部門のみオープン

物語のなかへ誘われそうな気配が漂う、クレソンリバーサイドストーリー 旧軽井沢のエントラス。グランドオープンは来春予定。現在は、長江さんの手がける「コラボレーショデザートセット」のほか、オリジナルのアフタヌーンティーなどを提供するレストランと、焼き菓子などのテイクアウトができるパティスリー部門のみオープン

クレソンリバーサイドストーリー旧軽井沢
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢680-1
営業時間:10:00〜19:00(17:00LO)
     ※9月1日以降は~18:00(17:00LO)
不定休
TEL. 0267-46-8037
公式サイトはこちら

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