TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
御所南「かはづ」

初春の八寸。あん肝やカラスミ、飛騨なめこなど。ハマグリの貝殻にはアコヤガイのおかき揚げを盛り付けて
京都で新しく和食店を出す際、ひと昔前は「祇園で」という料理人が多かったが、最近は、インバウンドに沸く祇園を避け、京都御苑の南側、御所南に店を出す人が増えている。
御所南は、賑やかな四条界隈からもほど近く、それでいて落ち着いた雰囲気が漂うエリアだ。そして2026年1月、また一軒、日本料理界の新星が現れました。

左官仕上げの土壁や一枚板のカウンターなど、ミニマルながらこだわりを感じる店内
「かはづ」の店主、土田勇士さんは、ミシュラン三つ星を長年にわたり獲得し続ける京都・円山公園内の「未在」で14年間修業した方と聞けば、期待が膨ららむばかりだ。
「未在では茶の湯の精神を学びました」と、土田さん。自身の店も、「未在」同様、茶懐石の流れを汲むコース展開に。冬の寒い夜は、汲み出しがわりにまずごぼうのすり流しから始まった。

ごぼうのすり流し
八寸が登場するのも、焼き物、箸休めと続いた中盤に。会席では、酒を進ませるため、八寸を最初の方に出すことが多いが、茶懐石は、あくまでも抹茶をおいしくいただくための料理であり、お腹がある程度満たされた中盤に出される。

店名は「井の中のかはづ大海を知らず。されど空の青さを知る」から。「狭い世界しか知らないが、そんな自分だからこそ見える景色があるはず」と、土田さん(左)
コースの最後は、抹茶と生菓子で一服。おいしい抹茶を点てられるように、物件が決まってから井戸を掘ったという。京都の地下水はミネラルの少ない良質な軟水で、出汁をひく際も、昆布の旨みを最大限に引き出すと言われている。

抹茶と自家製の生菓子。寒さが厳しい夜だったので、薯蕷まんじゅうは蒸して、ほかほかで提供される
土田さんは「未在」時代から、そば打ちに興味を持ち、休みの日には京都・桂の「隆兵そば」でそば打ちを学ばせてもらい、「未在」卒業後も1年半、「隆兵そば」で働いていた。コースには蕎麦が登場することもあり、この日は、更科粉を使用した十割蕎麦を蕎麦寿司にし、箸休めとして提供された。

そばつゆで和えたそばを海苔で巻き、シンプルながら蕎麦と海苔の風味が際立っている
店主は飛騨高山出身で、コースには野菜やキノコ、山菜など、飛騨高山の食材も取り入れられている。コースに登場する飛騨牛ランプ肉の炭火焼きは、ほどよい脂と赤身の旨みが広がり、火入れも秀逸だ。

飛騨牛の炭火焼き
コースは、そばや牛肉が登場するなど、正統派ながら抑揚があり、最後は抹茶でスーッと心が落ち着く。食後はすがすがしい満足感に包まれる。
「かはづ」
住所:京都市中京区堺町通夷川上ル絹屋町121-1
営業時間:18:00一斉スタート
料金:コース¥25,000
定休日:水曜、不定休
TEL. 075-708-3745

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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