BY KYOKO SEKINE
JR品川駅の雑踏からほんの少し離れた御殿山に、高層ビル2棟を含む複合施設“御殿山トラストシティ”がある。「東京マリオットホテル」(全249室)は、この御殿山トラストシティ内に位置し、JR品川駅からは徒歩10分の距離にある。しかし無料バスが頻繁に品川駅とホテル間の往復送迎を行っており、これを利用すれば所要4~5分で到着するため不便は感じない。
敷地の南側を占める御殿山庭園は江戸時代から桜の名所として知られ、約2,000坪に及ぶ庭園内には、緑に囲まれた建築家・磯崎新氏設計の茶室「有時庵(うじあん)」がたたずんでいる。このホテルを「駅から少し離れているからちょっと不便…」と論じる人たちもいるが、一度、御殿山庭園をのんびりと散策してみるといい。ホテルが御殿山の地にある意義や、周辺住民の方々にも利用され愛されている庭園とホテルとの関わりが見え、「東京マリオットホテル」に対する価値観が変わるはずだ。美しい木々の緑を堪能し、四季折々の自然のいろどりに魅せられ、滝の水音に五感が癒される。こうした静謐な環境でゆったりと眠れる静かな夜が、都会のホテルではどれほど貴重なものか、そのプライオリティの高さを思い知るだろう。
もともとマリオットホテルの名は国際的なチェーンホテルとして日本でも周知されているが、ここ東京では、御殿山という立地にこだわり、土地ならではの歴史や文化を感じられるようにと、館内ではさまざまにそのエッセンスが表現されている。たとえば、ホテル内の随所に使われている紫色は、御殿山の“御殿”の歴史を意識した高貴な色である。かつては品川御殿があり、特に三代将軍徳川家光がここで鷹狩りを楽しんだという丘陵地だ。現在の北区飛鳥山と並び、桜の名所として茶会も開かれたなど、将軍にまつわる由緒が色濃く残る。
こうした歴史的ないわれを背景に、より快適な滞在を提供するべく「東京マリオットホテル」は2017年12月、最上階(26階)にエグゼクティブ ラウンジをリニューアルオープンした。21~25階のエグゼクティブ フロアに滞在すれば、ラウンジは朝からナイトタイムまで自由に利用することが可能となる。
ホテル自慢の1階アトリウムを占めるのは、オールデイダイニングの「ラウンジ&ダイニング G」だ。世界のマリオットブランドが掲げるコンセプト"グレートルーム"にもとづいて設置され、Gourmet(グルメ)、Gatherings(集い)、Goodies(心をくすぐるようなモノ)が、“G”のいわれという。レストラン、ラウンジ、バーのそれぞれが、バリアのほぼない空間に新しい食空間を創り出している。食材のよさをシンプルに活かす、ダイナミックなグリル料理も人気を呼んでいる。
このホテルの魅力の裏には、「仕事が楽しい」と語るエネルギッシュな総支配人、飯田雄介氏の存在も大きくかかわっているようだ。氏の放つ“陽”のエネルギーがホテル全体にまで浸透し、ナチュラルで好感度の高い笑顔が、「東京マリオットホテル」の明るく気どりのない高級感にも反映されている。
東京マリオットホテル(TOKYO MARRIOTT HOTEL)
住所:東京都品川区北品川4-7-36
予約電話: 03(5488)3911
客室:全249室
料金:¥52,000~(1泊1室2名の料金。サービス料・消費税別)
※日によって料金が異なるため、要問合わせ
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および 関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
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