せきね きょうこ 連載
新・東京ホテル物語<Vol.42>

New Tokyo Hotel Story “The Royal Park Canvas - Ginza 8”
ホテルジャーナリスト、せきね きょうこが独自の視点でおすすめの東京ホテルを案内。連載第42回目は、“人が集う”開放的なスペースを目指すニューウェーブ「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座8」

BY KYOKO SEKINE

 次々と新規ホテル誕生の話題が尽きない東京、銀座。2019年3月20日、その街に新たに参入したのが「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座 8」だ。ホテル名に“キャンバス”という言葉が織り込まれているとおり、掲げるコンセプトの要もその部分にある。つまり、「キャンバスに絵を描くごとく、自由に自分色で利用して欲しい」と謳っているのだ。また一方では、“集う”ことで新たな自分発見のできる場所でありたいと、ホテル内には人々が集うための付帯施設を充実させている。

画像: 花椿通りに面し、銀座の中央通りからも見えるホテルの1階、メインエントランス。2階に見えるスペースがミュージックライブラリー

花椿通りに面し、銀座の中央通りからも見えるホテルの1階、メインエントランス。2階に見えるスペースがミュージックライブラリー

 ホテルのホームページを飾る言葉に目が留まった。「CANVASは、人が集うことで何かが生まれる場所。その名前には「ホテル」の文字がありません。私たちが目指すおもてなしは格調や形式を伴った伝統的なものではないからです。(略)たとえば、キャンバスラウンジと呼ぶ開放的なスペース。趣味に仕事に、自由で創造的な時間をお過ごしください。(略)」とある。

 まさにこれが、ホテルの発信する真髄なのである。銀座という世界的なブランドの街がもつ歴史や格式、またエレガントな街の息吹を受け継ぎながらも、過去に捕らわれ過ぎない革新性や、より自由な街へと進化する銀座に集うことで何かが生まれる空間でありたいと願っているのだ。

画像: 1階にはボトルショップを兼ねたティーサロンが。奥に見えるクラシカルなキャビネット(収納棚)がレセプションのカウンター

1階にはボトルショップを兼ねたティーサロンが。奥に見えるクラシカルなキャビネット(収納棚)がレセプションのカウンター

 全121室のホテルの、まずエントランスを入った1階にはガラス張りの「SARYU(サリュウ)」(ティーサロンとスーベニアショップを兼ねたスペース)があり、こぢんまりとしたカウンターに座れば、道行く人を眺めながら銀座の街との一体感を味わえる。日本一の茶どころ静岡で無農薬有機栽培農法にこだわる「NAKAMURA TEA LIFE STORE(ナカムラ ティーライフ ストア)」が監修し、モクテルやお茶のカクテル、お茶菓子などが楽しめる、お茶をテーマとした粋なカフェスペースである。

 訪れた暑い日の午後、私は、真っ先にそのカウンターに座り、冷たいグリーンティーを注文した。外国人観光客でにぎわう銀座の雑踏を歩いた後の一息、清涼感とともに薫り高い緑茶が心身を癒してくれた。

画像: 日本各地の厳選されたセレクションが並ぶボトルショップ。調味料からジュースまでさまざまなボトル製品が揃う

日本各地の厳選されたセレクションが並ぶボトルショップ。調味料からジュースまでさまざまなボトル製品が揃う

 そのサロンの奥にあるレセプション周辺にはひっきりなしにゲストが往来し、上階の客室へとつながるエレベーターも休む間もない様子だ。オープンしたてのホテルとはいえ、ロケーションが銀座8丁目の中央通り至近にあり、観光にもビジネスにも、利用者にとってはこの上なく便利であろう。

 2階には、カフェ・ラウンジ機能の「キャンバスラウンジ」、その一画にはホテルイベント時に利用するオープンキッチン「キャンバスキッチン」が併設され、同じ階には小規模だがフィットネスジムも造られている。さらに2階の一画にはプライベートな雰囲気のスペース「ミュージックライブラリー」もあり、滞在者はスタッフ厳選の音楽がいつでも自由に聴ける。

画像: アートな作品に囲まれた2階のキャンバスラウンジ。静かに読書や休憩に使ったり、イベントが行われる集いの場にもなる開放的なスペースだ

アートな作品に囲まれた2階のキャンバスラウンジ。静かに読書や休憩に使ったり、イベントが行われる集いの場にもなる開放的なスペースだ

 こうしたスペースに共通しているのは、ラウンジに置かれたアンティーク風の革張りのソファなど、くつろぎを演出する家具・調度品のセレクションだ。また欧米や日本、南米出身のアーティストによるアート作品もホテル内にところ狭しと飾られている。

 客室はコンパクトであるものの、それぞれスタイリッシュで機能性豊か、また使い勝手もいい。17~30㎡ほどの客室には、“ギンザモダン”やクリエイターの滞在をイメージしたコンセプトルームや、車椅子などでの利用も可能なユニバーサルルームも用意されている。いずれの部屋もシモンズ製ベッドやオリジナルの照明などが整い、静かな睡眠が約束されている。

画像: スーペリアツインのひとつ。柔らかなトーンの色遣いで落ち着いたムード

スーペリアツインのひとつ。柔らかなトーンの色遣いで落ち着いたムード

画像: 「ギンザモダン」「クリエイターズ・ルーム」という2種類のコンセプトルーム(写真は「ギンザモダン」)。1932年築の銀座に残る高級アパートをイメージしてデザインされた客室

「ギンザモダン」「クリエイターズ・ルーム」という2種類のコンセプトルーム(写真は「ギンザモダン」)。1932年築の銀座に残る高級アパートをイメージしてデザインされた客室

 最上14階を占めるのは、屋外テラス席のあるレストランだ。オールデイダイニング「OPUS(オーパス)」は、トランジットジェネラルオフィスがプロデュース、運営を手がける。フランス料理をベースに、シーフードグリルをメインに提供するレストランは、アートに包まれたカジュアルな空間である。特製釜で仕上げるモダンシーフードグリルは斬新でおいしい。

 料理をシェアし、ワイワイ集える雰囲気に、外からのゲストも増えている。令和の時代が始まり、未来に向かう銀座も、こうしてまたアクティブに変貌を遂げ始めている。

画像: 14階に位置するオープンキッチンのレストラン「OPUS(オーパス)」。おもなメニューは、日本各地から取り寄せた魚介や野菜を特製窯で仕上げるモダンシーフードグリル

14階に位置するオープンキッチンのレストラン「OPUS(オーパス)」。おもなメニューは、日本各地から取り寄せた魚介や野菜を特製窯で仕上げるモダンシーフードグリル

画像: できたてのメイン料理に、セミブッフェスタイルの朝食。ランチには、特製窯を使用したフラットブレッドピザや鮮魚のブイヤベース、特製の窯焼きハンバーグなど楽しいメニューが並ぶ。ディナーはコースもアラカルトもあり PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROYAL PARK CANVAS - GINZA 8

できたてのメイン料理に、セミブッフェスタイルの朝食。ランチには、特製窯を使用したフラットブレッドピザや鮮魚のブイヤベース、特製の窯焼きハンバーグなど楽しいメニューが並ぶ。ディナーはコースもアラカルトもあり
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF THE ROYAL PARK CANVAS - GINZA 8

ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座 8(The Royal Park Canvas - Ginza 8)
住所:東京都中央区銀座8-9-4
電話:03(6205)8010
客室数:121室
料金:¥16,500~(1泊1室の室料。消費税・サービス料込)
公式サイト

せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com

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