“シャンパーニュとは、国を越えて生きる喜びを分かち合うもの”――。この精神にのっとって、シャンパーニュ委員会(シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会/CIVC)が2008年に設立したのが「Champagne Joie de Vivre(生きるよろこび)」賞だ。独自のスタイルで活動を続け、その姿や活動内容が国を越えて共感される人物に贈られる賞で、池坊次期家元の池坊由紀を第一回受賞者に、これまで和紙作家の堀木エリ子、建築家の坂茂、映画監督の河瀨直美、漫画家のヤマザキマリなど、新しい挑戦を続ける“表現者”たちに贈られてきた。


 今年受賞したのは、照明デザイナーの石井リーサ明理で、この5月、在日フランス大使公邸において授賞式が執り行われた。この時、石井はこう感想を述べている。

「照明デザイナーの仕事は、闇というキャンバスに光で絵を描くような仕事。アイデンティティーやポリシーを表現するものでもあります。シャンパーニュは、“生きるよろこび”を体現する飲み物で、生活を豊かにし、美しくしてくれるもの。それは、クリエイターが大切にしているテーマとも共通しているのです」



5月に在日フランス大使公邸で執り行われた

第10回「Champagne Joie de Vivre」賞 授賞式。

石井リーサ明理氏は今年9月に日仏友好160年をパリで祝うイベントで、

エッフェル塔のライトアップを担当。エッフェル塔が1夜のみゴールドに染まる



 彼女の言葉にあるように、確かに、シャンパーニュは祝祭や幸福のシーンを彩る飲みものだ。フランス人にとっては、初代フランス王クロヴィスの時代から戴冠式に使われるなど、“文化”を体現するものでもあった。


 日本において、こうしたシャンパーニュを“文化”として根付かせた立役者がシャンパーニュ委員会日本事務局代表の川村玲子だ。シャンパーニュ委員会は、シャンパーニュの情報提供や広報、価値向上、保護を目的とする団体で、シャンパーニュ地方エベルネに本拠地を置く。日本事務局の設立は1997年で、川村は当初から代表として精力的に活動に取り組んできた。前述の「Champagne Joie de Vivre」賞もその一例だ。

 

 川村は長くパリに住み、ジャーナリストとして活動していたが、ある日、知人から「シャンパーニュ委員会が日本事務局の代表となる人物を探しているから会ってみないか」と、声をかけられたという。

「その頃は、日本に事務所だけを構えて、フランスと行き来する生活をしていました。でも、委員会の仕事の内容を理解するにつれ、私にも何かできたら……という思いが強くなり、活動に本腰を入れるべく、1986年に帰国しました」



「Champagne Joie de Vivre」賞 授賞式で供されたシャンパーニュの数々。

乾杯はノン・ヴィンテージで始まり、

ブラン・ド・ブラン、ロゼ、プレステージと進んでいった。

その多彩な味わいに多くのゲストが魅了された



 折しも、日本はバブル景気の真っ只中。当時の輸入本数は約150万本で、あちらこちらでシャンパーニュが開けられてはいたが、グラスでシャンパーニュを楽しめる店は数えるほどしかなかったという。

「この時、ささやかでしたが私の目標ができました。『日本のいたるところで、グラスのシャンパーニュが楽しめるようにしたい』と思ったのです(笑)」