デンマークのデザイナーといえば、ミッドセンチュリー・モダン時代をもっとも象徴する家具をいくつも生み出したことで知られる。例えば、ルイス・ポールセンのランプ「PHアーティチョーク」、アルネ・ヤコブセンの「ドロップチェア」「エッグチェア」に「スワンチェア」、ハンス・ウェグナーの「パパベアチェア」など。そのムダのないラインや徹底したミニマリズムの伝統は、間違いなく今もコペンハーゲンにみずみずしく息づいている。


 コペンハーゲンで最も人気のあるブティックホテルの中には、新しいものから老舗まで、泊まること自体が目的となるほどデザイン性に優れたホテルがいくつかある。かつて石炭を運ぶクレーンだったホテルや演劇のセットに着想を得た客室など、コペンハーゲンにある注目のデザインコンシャスなホテルを、泊まるべきおすすめのスイートルームと合わせて紹介しよう。



Nobis Hotel

ノビス・ホテル


COURTESY OF HOTEL NOBIS COPENHAGEN



 スウェーデンの建築家ゲート・ウィンゴードは、1900年前後に建てられ、かつては王立デンマーク音楽アカデミーだったこの建物を、現代的なラグジュアリーホテルに変身させた。そのスタイルは、スウェーデンにある高級な同名の姉妹ホテルと非常に似通っている。このホテルの目玉は、目の覚めるような美しいブルーの壁に囲まれた「ノビス・スイート」だ。バスルームには床から天井まで、灰色の天然大理石であるバルディグリオのタイルを使用。角ばった立方体型の鉄製の四柱式ベッドがあったり、デンマークデザインの火付け役フレデリック・バッガーのクリスタルグラスが置かれていたりと、細部まで念入りに考え抜かれたリッチなデザインが特徴だ。

www.nobishotel.dk

 


Hotel Alexandra

ホテル・アレクサンドラ


ホテル・アレクサンドラの「ヴェルナー・パントン・スイート」

COURTESY OF HOTEL ALEXANDRA



「ホテル・アレクサンドラ」の部屋はすべて、デンマークのモダンデザインに敬意をはらった作りになっている。ダブルベッドルームもシングルも、デンマークのモダンデザインが世界的に注目を集めた60年代あるいは70年代にインスパイアされた家具と色彩で構成されている。


しかし本当の意味で当時のムードをもっともよく反映しているのは、最上階にあるいくつかのスイートルームだろう。スイートの各室はそれぞれ異なるデンマーク出身のデザイナーを讃え、そのオリジナルの家具で内装が整えられている。角部屋の「ヴェルナー・パントン・スイート」は、このホテルで最も目をひく客室だ。ショッキング・ピンクの入り口、紫と青で統一されたベットルーム、そしてすべてがオレンジ色一色のリビングスペース。この部屋に泊まれば、パントンの大胆でカラフルで未来的な世界にたっぷりひたることができる。

www.hotelalexandra.dk



Hotel Sanders

ホテル・サンダース


サンダースのアパートメント

COURTESY OF HOTEL SANDERS



 かつてバレエダンサーであり、ホテルのプロデューサーからホテル経営者に転身したアレクサンダー・コルピンは、「ホテル・サンダース」の54部屋をデザインするにあたり、休息するための空間ではなく、劇場のセットをデザインするときと同じアプローチをとり入れた。室内の装飾品や家具は、折衷主義的にさまざまな品を組み合わせた。デンマークの木工品やイタリアの大理石、風変わりなリバティロンドンのプリント柄、モダニストや表現主義のアートワークといったものたちだ。こうしてホテルの細部を豪華に演出することで、デンマークのコロニアル風でありながら現代的なスタイルを生み出している。


 コルピン自身は、寝台列車の客室に着想を得たシングルベッドの小さな客室「クーペ・ルーム」がお気に入りだ。しかし、ゲストは19世紀の建築物を広々と使った「サンダース・アパートメントルーム」のほうがより楽しめるかもしれない。こちらは最大6名まで宿泊でき、キッチンとダイニングルームがついている。「私はいつも、観客のために特別な経験を作り出しているんだ」とコルピンは言う。この場合は観客ではなく、宿泊客というわけだが。

https://hotelsanders.com



Vipp Hotel

ヴィップ・ホテル


ヴィップホテルの客室

COURTESY OF VIPP HOTEL



 デンマークの工業製品デザイン会社ヴィップ(Vipp)は、「ヴィップ・ホテル」でホスピタリティ業界に進出した。「ヴィップ・ホテル」とは、さまざまな場所に作られた1泊一組限定のスイートルームだ。スウェーデンに作られた初めての"ルーム"は、森の中にある典型的なキャビンを現代的にアレンジしたものだった。


そして昨年11月に、コペンハーゲンの工業地域アイランド・ブリッゲに「ヴィップ・ロフト」をオープン。これは4300平方フィートほどの広さをもつ1ベットルームのスイートで、かつて印刷工場だったヴィップの自社ビルの最上階に位置している(ヴィップの次のプロジェクトは、かつてポンプ小屋として使われていた建物を使った「チムニー・ハウス」。3番目となるこの施設は、2018年の初期にオープンする予定だ)


 傾斜した天井と、もともとあったオーク材の梁をもつ開放的なスペースは、暖炉つきのリビングスペースとキッチンにつながっている。上の階には、屋根の頂点の真下にベッドルームが置かれ、その南北に書斎と図書室が備えられている。

https://vipp.com