イスタンブールから電車で3時間ほどの位置にあるエスキシェヒル。ガイドブックにも取り上げられることの少ない、トルコの地方都市に完成した「オドゥンパザル近代美術館」は、美術館における“21世紀的なビジョン”を具体化している

BY MASANOBU MATSUMOTO

画像: Ferruh Başağa《Toplum ve İşbirliği》1953 PHOTOGRAPH BY OZAN ÇAKMAK

Ferruh Başağa《Toplum ve İşbirliği》1953
PHOTOGRAPH BY OZAN ÇAKMAK

 エロルがコレクションを構成するのは、主に50年代から現代までの、近・現代アート。絵画から彫刻、メディアアートなど1,100点にものぼるアートピースのうち、約9割がトルコ人の作家の作品だという。オープニング展『VUSLAT(The Union)』では、その選りすぐり94点を見せる。その選定にあたって、ハルドンはまずエロルのコレクションを分析することから始めたと話す。

「エロルのコレクションにもその形成の歴史があって、はじめはトルコの地元の作家の作品から蒐集。次第にアバンギャルドなアートもコレクションに加えるようになり、世界的に有名なアーティストの作品もリストに加えるようになっていきます。彼自身がコレクターとして成熟していった、いくつかのフェーズに注目して作品を選びました」

 エロル自身は「トルコには、なぜか絵を描くアーティストが多い。コレクションに絵画が多いのは、たまたまです」と説明するが、実際に会場に並んだ作品を観ると、特に絵画のバリエーションの広さに目がいく。ローカルなモザイク調のものから、抽象画、写真のようなハイパーリアルなペインティング、また毛糸や布地を絵の具がわりにした実験的なアプローチのものまである。ハルドンが言うコレクターとしての成熟過程とともに、エロルのアートに対する純粋な情熱や好奇心がうかがい知れる。

画像: Nejad Melih Devrim《Hagia Sophia》1948 PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

Nejad Melih Devrim《Hagia Sophia》1948
PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

画像: Ramazan Bayrakoğlu《Sleeping Man》2010 PHOTOGRAPH BY OZAN ÇAKMAK

Ramazan Bayrakoğlu《Sleeping Man》2010
PHOTOGRAPH BY OZAN ÇAKMAK

 また、ハルドンによれば、エロルのコレクションの起点となる50年代は、ちょうどトルコにおいて“自由なアートが生まれた時代”でもある。「オスマン帝国が崩壊した1923年が、トルコのモダン・アートの出発点だと言われています。ですが、しばらく作家たちの表現は、政府や大学のコントロール下にありました。50年代になって、ようやくアバンギャルドな表現に挑む作家も生まれてくるようになったのです。直近20年くらいでは、ヨーロッパやアメリカなど海外で展覧会を行うアーティストも増えてきました」。本展には、そうしたトルコの美術史にける重要なムーブメントを象徴する作品も多く並び、あまり知られていないトルコのファインアートを世界に伝える良い機会にもなっている。

画像: Taner Ceylan《satyr Ⅱ》2015 PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

Taner Ceylan《satyr Ⅱ》2015
PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

画像: TUNCA《Untitled》2015 PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

TUNCA《Untitled》2015
PHOTOGRAPH BY KAYHAN KAYGUSUZ

画像1: 隈研吾の建築がトルコに出現。
オーナー、建築家、市民が、
未来を夢みる美術館

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