90年代にグラフィティ・シーンで注目を集め、世界に躍り出たKAWS。この夏、日本を訪れた彼が、対談相手に選んだのは香取慎吾だ。アートの慣習やルールに縛られず独自の表現をする、ふたりの接点

BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY KOHEY KANNO, STYLED BY TOMOKI SUKEZANE, HAIR & MAKEUP BY TATSUYA ISHIZAKI(STRIPE)

 6月25日、香取慎吾はインスタグラムに、ドクロ顔にバツ印の目、カリフラワーのような耳をした巨大なオブジェと一緒に写った自身の姿を投稿した。アニメから飛び出てきたようなそのキャラクターは、現代美術家KAWS(カウズ)の作品に繰り返し登場する“コンパニオン”だ。KAWSは昨年から、このコンパニオンのバルーン彫刻をつくり、ソウル、台北、香港のアジア各都市に順次、期間限定で設置するアートプロジェクト『KAWS:HOLIDAY』を行っている。香取が訪れたのは、7月18日から行われた日本版の、テスト設営の現場。あお向けになった全長40mのコンパニオンと、その姿をまねして寝そべる181cmの香取慎吾――この写真に、遠くNYでその様子を見守っていたKAWS本人も“いいね!”をつけた。

画像: この夏、静岡県富士宮市にあるキャンプ場「ふもとっぱら」で行われた『KAWS:HOLIDAY JAPAN』。40mのコンパニオンの背景に、富士山を望む想定であったが、7月18日のオープニングイベント当日はあいにくの天候。しかしKAWSと香取のふたりがカメラの前に立った瞬間、奇跡的に雨がやんだ (香取)フリースブルゾン¥162,000、ボーダーカットソー¥46,000、Tシャツ¥72,000、パンツ¥130,000、スニーカー¥79,000 マルニ表参道(マルニ) TEL. 03(3403)8660 (KAWS)すべて本人私物

この夏、静岡県富士宮市にあるキャンプ場「ふもとっぱら」で行われた『KAWS:HOLIDAY JAPAN』。40mのコンパニオンの背景に、富士山を望む想定であったが、7月18日のオープニングイベント当日はあいにくの天候。しかしKAWSと香取のふたりがカメラの前に立った瞬間、奇跡的に雨がやんだ
(香取)フリースブルゾン¥162,000、ボーダーカットソー¥46,000、Tシャツ¥72,000、パンツ¥130,000、スニーカー¥79,000
マルニ表参道(マルニ)
TEL. 03(3403)8660
(KAWS)すべて本人私物

 香取はこの2年ほど、長らく描きためていた絵画を個展形式で発表してきた。2018年には、パリ・ルーヴル美術館で、今年3月には待望の日本初個展を開いた。それに伴い、横尾忠則や会田誠など自身が惹かれてきた作家と対談する機会も得ている。KAWSも香取が会いたいと切望していた美術家のひとりだった。その夢は、テスト設営から約1カ月後、富士山を近くに望むキャンプ場を会場にした『KAWS:HOLIDAY JAPAN』のオープニングイベント前日に実現した。引き合わせたのは、このプロジェクトのプロデューサーで香港のクリエイティブ・スタジオ「AllRightsReserved」の代表SK Lam。過去に香取が香港市内に制作したグラフィティを見たという彼いわく「エンターテイナーとしてだけでなく、アーティストとしても素晴らしい才能の持ち主。ふたりが出会ったらきっと面白いだろうと思って」。KAWSも香取と会うと「初対面だけど、すでにSKから香取さんのことはだいぶ聞かされているよ」と言い、ハグをした。

 近年、絵画、彫刻、おもちゃのフィギュア、またファッションブランドとのコラボレーションなど幅広い分野でクリエーションを手がけるKAWSだが、ベースにあるのはグラフィティである。生まれ故郷ニュージャージーで、彼は仲間たちと街中の壁や鉄道車両にペインティングをして思春期を過ごした。転機は90年代初頭。NYのバス停や電話ボックスに掲示された企業広告に、コンパニオンの原型であるバツ印の目をしたキャラクターを描き加えるというゲリラ的な制作を行った。あるビジュアルでは被写体の顔の上にコンパニオンの顔を描き重ね、コンパニオンを広告モデルに仕立てる。あるものはモデルとコンパニオンが共演しているふうに描く。従来のグラフィティとはひと味違う、遊び心に富んだこのストリートアートは、若者の間で話題になり、次第にプロのアート関係者も注目するようになっていった。

画像: 今年3月、香港アートマンスの最中に行われた『KAWS:HOLIDAY HONGKONG』。香港のビクトリア・ハーバーに、バルーンでできたコンパニオンが浮かんだ。「実は予想以上に波が高くてね。早めに撤収したんだ。簡単そうに見えるけど、リスクを伴うプロジェクトなんだ」とKAWS PHOTOGRAPH BY GARETH HAYMAN

今年3月、香港アートマンスの最中に行われた『KAWS:HOLIDAY HONGKONG』。香港のビクトリア・ハーバーに、バルーンでできたコンパニオンが浮かんだ。「実は予想以上に波が高くてね。早めに撤収したんだ。簡単そうに見えるけど、リスクを伴うプロジェクトなんだ」とKAWS
PHOTOGRAPH BY GARETH HAYMAN

画像: 今年3月より開催された香取慎吾の日本初個展『サントリーオールフリー presents BOUM! BOUM! BOUM!』の展示風景。会場は美術館ではなく、客席が360°回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」。照明やスモークなど香取が演出を施した空間で、10年以上描きためていた約120の絵画や新作を展示した © SHINGO KATORI

今年3月より開催された香取慎吾の日本初個展『サントリーオールフリー presents BOUM! BOUM! BOUM!』の展示風景。会場は美術館ではなく、客席が360°回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」。照明やスモークなど香取が演出を施した空間で、10年以上描きためていた約120の絵画や新作を展示した
© SHINGO KATORI

 KAWSはいわゆるファインアートの“外側”で生まれたアーティストと言える。そして今も、美術的な文脈や形式、ルールに縛られず、自由にアートやストリート、ファッションの地図を行き来してみせる。それはエンターテインメントの世界からアートシーンに足を踏み入れた香取も同じだ。作風や技法は違えど、KAWSと香取は、たしかにアートとの関わり方やスタンスについて、似たような考えを持っているようだ。

“アートの定義”を問うと「いまだに“アートとは何か”ということを意識したことはないですね。ただ描きたくて描くだけ」(香取)。「定義はしなくてもいいと思う。僕の作品がどうなのかは、観た人が決めてくれればいいから」(KAWS)。また、KAWSにフィギュアやコラボレーションTシャツなど、コマーシャルなものをつくる理由を尋ねると「絵が買えない人でもTシャツならば手に取れるかもしれないからね。どちらも“作品”。大切なのは多くの人に作品と対話してもらうこと」。それは、香取が日本初個展の際に語ったことにも通じるだろう。「僕の場合、自分が素材。いろいろな自分を見てもらいたいと思ってステージに立ってきました。僕にとって絵もライブパフォーマンスもある意味では同じ表現。ただ絵ならば、もっと深い部分を伝えられるかもしれないって思っています」

 

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