今回のリストは、80歳を超えて再ブレイクした写真家ソール・ライターの回顧展、日本のモダンデザイン黎明期のキーパーソンの活動をひもとく企画展、そして、戦後の前衛書家のひとり宇野雪村の個展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『モダンデザインが結ぶ暮らしの夢』|パナソニック汐留美術館

 産業革命によりモノの大量生産が当たり前になった時代において、デザインはどうあるべきかーー。「モダンデザイン」が生まれた背景には、「近代」という時代性に対する、デザイナーや思想家の問いと実践がある。そして、イギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動が起こり、ロシアで構成主義(実生活に役立つアートを目指す動き)が提唱され、ドイツにバウハウスができたように、日本においても、1930年代から60年代、近代化や社会の変容に合わせてデザインの変革を推し進めた人物がいた。

 パナソニック汐留美術館で始まった『モダンデザインが結ぶ暮らしの夢』展は、7人の巨匠とその人間関係を紹介するものだ。

画像: ブルーノ・タウト 《卵殻螺鈿角形シガレット入れ 》1935年 群馬県立歴史博物館蔵 COURTESY OF PANASONIC SHIODOME MUSEUM OF ART

ブルーノ・タウト
《卵殻螺鈿角形シガレット入れ 》1935年 群馬県立歴史博物館蔵
COURTESY OF PANASONIC SHIODOME MUSEUM OF ART

 本展の前半がフォーカスするのは、日本初の国立デザイン指導機関「商工省工芸指導所」の顧問として1928年に来日した建築家のブルーノ・タウト、またタウトのパトロンであり、群馬県・高崎を拠点に工芸運動を牽引した実業家の井上房一郎。そして、同時代に日本に滞在し、日本のモダニズム建築の礎を築いたアントニン・レーモンドとインテリアデザイナー、ノミエ・レーモンド夫婦の活動をひもとく。

 井上がオーナーを務めていた銀座の工芸品店「ミラテス」で販売されていた“タウトデザイン”の調度品や、日本の木造建築と西洋のモダニズム建築を融合させた“レーモンドスタイル”の建築写真など、日本のモダンデザインの萌芽期を代表する貴重な資料が見られるのもポイントだ。

画像: (写真左)イサム・ノグチ《あかり33S(BB3スタンド)》1952年頃 飛騨・世界生活文化センター蔵 (写真右)ジョージ・ナカシマ《コノイドチェア》1960(1992)年 武蔵野美術大学 美術館・ 図書館蔵 COURTESY OF PANASONIC SHIODOME MUSEUM OF ART

(写真左)イサム・ノグチ《あかり33S(BB3スタンド)》1952年頃 飛騨・世界生活文化センター蔵
(写真右)ジョージ・ナカシマ《コノイドチェア》1960(1992)年 武蔵野美術大学 美術館・ 図書館蔵
COURTESY OF PANASONIC SHIODOME MUSEUM OF ART

 後半は、タウトやレーモンドに影響を受けた3人のクリエイターに光を当てる。「商工省工芸指導所」でタウトに教えを受けたインテリアデザイナーの剣持勇、レーモンドの弟子であったジョージ・ナカシマ、そして剣持やレーモンドと協業したイサム・ノグチである。とりわけ、興味深いのは、この3人の第二次世界大戦後の仕事だ。

 剣持は、プロダクト的な量産性と日本のクラフト的な美しさをともに実現する「ジャパニーズ・モダン」を実践し、ノグチは暮らしと関わる芸術として彫刻をとらえ直した。ジョージ・ナカシマも、高松の「讃岐民具連」の職人たちと協業し、日常使いのできる木工家具の量産化に力を注いだ。焦土化した日本で、彼らは、先人たちのモダンデザインという理念をどう新たに展開にしていったかーー各々がデザイン活動の先に見た、上質な暮らしの夢、豊かな生活のビジョンは、現代人の目にも新鮮に写るはずだ。

画像: アントニン・レーモンド「新スタジオ」1963年 PHOTOGRAPH BY SADAMU SAITO

アントニン・レーモンド「新スタジオ」1963年
PHOTOGRAPH BY SADAMU SAITO

『モダンデザインが結ぶ暮らしの夢』
会期:〜3月22日(日)
※新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、2月29日(土)から3月15日(日)まで臨時休館
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
開廊時間:11:00〜18:00 ※2月7日(金)、3月6日(金)は〜20:00
※入館は閉館の30分前まで
休画日:水曜
料金:一般¥800、65歳以上¥700、大学生¥600、高校・中学生¥400、小学生以下無料 
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト

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