今回のリストは、80歳を超えて再ブレイクした写真家ソール・ライターの回顧展、日本のモダンデザイン黎明期のキーパーソンの活動をひもとく企画展、そして、戦後の前衛書家のひとり宇野雪村の個展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『宇野雪村』|東京画廊+BTAP

 吉原治良や白髪一男らの「具体美術協会」、関根伸夫や李禹煥(リ・ウーファン)らの「もの派」など、日本の戦後に起こった前衛芸術運動が、この数十年、世界的に注目を集めている。そのブームを決定づけたのは、2012年、MoMAで開かれた『TOKYO 1955-1970(新しい前衛)』展と2013年、グッゲンハイム美術館での『gutai:splendid playground(具体:すばらしい遊び場所)』展。NYの権威ある美術館で、日本の前衛美術をテーマにした展覧会が立て続けに開かれたのである。

 当時、アート市場において、アジアが存在感を高めており、特にアジア諸国のなかでもっとも早く近代化が起こった日本には、どのような現代アートの歴史があるのかということが当時、美術関係者の大きな関心ごとだったわけだ。

 こうした日本の前衛ブームは、近年、また新しい広がりを見せている。「具体」や「もの派」以外の前衛美術家の見直しが行われ、また「泥走社」などの「前衛工芸」を再評価する動きもある。そして、絵画と類似性の高い「前衛書」にも注目が集まっているという。

画像: 《白日依山》1951年

《白日依山》1951年

 東京・銀座にある東京画廊+BTAPでは、まさに戦後の前衛書運動を牽引した作家のひとり、宇野雪村の個展が開かれている。雪村は1912年、兵庫県生まれ。1940年、師である上田桑鳩とともに芸術研究集会「奎星会」を結成し、「書は点と線の結合によって生まれる」と、新たな現代書の可能性を探った。

画像: 《悪》1962年

《悪》1962年

 漢字のルールに縛られず、形象と意味の間を揺さぶりをかけるような雪村の作品は、視覚表現としても楽しい。横線による墨の滲みで構成された作品は、タイトルを見れば、これは《悪》の文字を純化させたものだとわかるだろう。棒線と三角形、丸のような図形が並んだ作品は、「留」の3つのパーツを分解したものだ。

画像: 《留》1972年 PHOTOGRAPHS BY KEI OKANO

《留》1972年
PHOTOGRAPHS BY KEI OKANO

 また雪村が面白いのは、西洋美術シーンと接点があることだ。彼は1966年にスペインの抽象画家ジョアン・ミロなどと出会い、長く交流していたと言われる。近代美術史の視点から雪村作品を眺めれば、また違った魅力が発見できるはずだ。

『宇野雪村』
会期:〜2月29日(土)
会場:東京画廊+BTAP
住所:東京都中央区銀座 8-10-5 第4秀和ビル7階
開廊時間:11:00〜19:00 ※土曜は〜17:00
休画日:日・月曜、祝日
料金:無料 
電話:03-3571-1808
公式サイト

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