ちまたで評判の製品の背景には、人知れぬ開発の苦難がある。なぜすごいのか、どうすごいのか? 誰よりもそれをいちばんよく知る開発者に迫るインタビュー連載。第10弾は「ヤーマン メディリフト」

BY MIYUKI NAGATA, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 フィット感をクリアしたら、次は筋肉ごとに、どのように電気刺激であるEMSを効かせていくかという課題に取り組んだ。「頬は大頬骨筋と小頬骨筋という筋肉によって支えられています。これらの筋肉を鍛えることは、頬の土台を強くするという意味でとても重要です。一方で咬筋という、食べ物の咀嚼や歯ぎしりで使われる筋肉は、鍛え過ぎるとエラ張りの原因になることもあるので、休ませてやわらかくした方がいい。そこでそれぞれの筋肉に適切に作用するよう、異なる周波数のEMSを出力するようにしたのです」

 大頬骨筋と小頬骨筋には2.5~17Hzの周波数のトレーニングEMS、咬筋には20~100Hzの周波数のリリースEMSを出力。ちなみに周波数とは一秒間に何回波形が現れるかを示すもので、前者はトントンと小刻みにたたくような刺激、後者はバイブレーターモードのような細かい振動として体感される。

「EMSの技術を使った美容機器はこれまでも多く作ってきたので、どの周波数にどのような効果があるか、出力はどのくらいが適切かというような知見は溜まっていました。しかしマスク型は初めてですので、実験機を作って、どこに電極を当てたらどう筋肉が動くのか実験を重ねながら、周波数や電極の位置を決めていきました」

画像: メディリフト ¥25,000 PHOTOGRAPH BY YUMI YAMAZAKI

メディリフト ¥25,000
PHOTOGRAPH BY YUMI YAMAZAKI

 2018年3月、ついにメディリフトが発売。意外にも社内の期待は、決して大きくはなかったという。「他にはない製品だけに、お客さまがこの製品をどう受け取ってくださるかがわからない。本当にこれで売れるのか、という議論もありました。しかし当社の直販サイト中心に宣伝を行うと、反響がよかった。見た目にインパクトがありますし、なにより使っている間の体感や、終わった後のすっきり感が支持されたポイントだと思います。SNSでもいろいろな方が取り上げてくださり、6月には、直営店、百貨店、直販サイトが持っていた在庫がなくなって、生産が追い付かない状態になってしまいました」。その後、SNSでトレンド入りを果たし、多くの雑誌やTVに取り上げられて、最長予約4カ月待ちという大ヒットとなったのだ。

 使えば効果はあるけれど、面倒さが先立ち、つい使わなくなってしまう。そんな美容機器の弱点をウェアラブル“EMS”美顔器という発想で克服したヤーマン。じつは、精密電子機器メーカーとしてスタートし、日本初の光学変位計を開発して瀬戸大橋のたわみを計測した会社である。後には日本初の体脂肪計を開発して、特許を取得したという歴史を持つ。

 トップクラスの美容機器メーカーとして知られるようになった今も、技術開発を重視する姿勢は変わらず、機械の設計やソフトのプログラミング、生産技術の開発や品質管理まで社内で専門家を育て、一気通貫のものづくりを行っている。優れた技術力へのたゆまぬ努力と、まだ世の中にないものを作ろうとする情熱。ヤーマンはこれからも私たちをあっと言わせてくれそうだ。

問い合わせ先
ヤーマン
フリーコール:0120-776-282
公式サイト

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.