TEXT & PHOTOGRAPHS BY YURI TAKAHASHI
霜降 10月23日〜11月6日
北から初霜が降りた便りが届く時季。旧暦なら急いで冬支度を始めるころだが、現代では紅葉が南下し、列島が赤や黄色に彩りはじめる季節。秋の山々を錦の織物にたとえた“錦秋”や、黄色の葉が降り続ける様をいう“黄落”など、紅葉にまつわる数多くの言葉と共に、秋の美しい光景を目にやきつけたいもの。
そして霜降の次はいよいよ立冬。暖かい秋が続いたが、晩秋から冬にかけて降る通り雨、“時雨”や、木枯らし一号が吹くのももうすぐ。気持ちよく晴れた日には、しまい込んでいたコートやニットの虫干しをお忘れなく。
「市場で見つけたイネ科のギンギツネがあまりに可愛らしくて」と話す、「whole」オーナー・綱川禎子さんが束ねたブーケは、ギンギツネ、ケイトウ、オンシジウム、トウガラシの4種類のみを使用。
白系の草花の中にキラリと光るトウガラシがアクセント。「素材やテクスチャーで遊ぶのが好きです。今回はいわゆるメインとなる花を入れず、ふわふわっとしたギンギツネとケイトウの中に、ツヤのあるトウガラシを入れて、質感を楽しんでもらえるように仕上げました」
インテリアやファッションに敏感な人にも喜ばれそうな遊び心溢れる秋のブーケだ。
代々木八幡駅から少し歩いた住宅街の中にあるwhole(ホール)。オーナーの綱川さんは、アパレル業界からフローリストへ転身。2017年に富ヶ谷のワインバーにて間借り店舗をスタートさせ、2019年には夫が営むヘアサロン「AWRY BY THE MANNER」に併設したショップを構えた。店舗内はこじんまりとしているが、ガラスの仕切りから明るい日差しが差し込み、賑やかな美容室の雰囲気も伺え、なんだか不思議と居心地の良い空間だ。
市場に出回っている草花の中で、もっとも良いものを選ぶのは大前提。さらに「その中でもニュアンスカラーやシックな色合いにしたり、アクセントになりそうな質感の草花を選んでいます。花って存在自体がとても可愛いので、色や素材で大人っぽい雰囲気にできればと思っています」
綱川さんのセンスを頼りに、老若男女関わらずブーケをオーダする人が後を立たない。「まかせていただく時は、以前束ねたブーケやSNSに掲載した写真と同じ花材の組み合わせをしないようにしています。最近は猛暑の影響もあり、お花の出回り方が読めなくなってきているのですが、逆にその状況を面白がって、私もお客さまもどんなブーケになるのか新鮮な気持ちでいられると嬉しいですね」
店舗運営だけでなく、生け込みや展示会の装飾、ウェディングの花の依頼もひっきりなしに声がかかり、さらには別業種のクリエイターとコラボし、オリジナルの花瓶やキャンドルなど、花と日常をつなぐ物作りにも携わっている。「好きなことをしています」と笑う綱川さん。花を愛する気持ちが隅々まで感じられるショップだ。
whole
ホール
住所:東京都渋谷区元代々木町25-8
電話番号:03-6407-0660
定休日:月・火曜日
営業時間:13:00〜18:00
※曜日により時間変更あり。営業日はインスタグラムにて
公式インスタグラムはこちら
参考文献:『花と短歌でめぐる 二十四節気 花のこよみ』株式会社KADOKAWA
『くらしのこよみ 七十二候の料理帖』平凡社
山下景子『二十四節気と七十二候の季節手帖』 成美堂出版