いずれは訪れる死、映画『アイリッシュマン』で描いた女性像、Netflix時代の映画製作などマーティン・スコセッシ監督のロングインタビュー

BY DAVE ITZKOFF, PHOTOGRAPHS BY PHILIP MONTGOMERY, TRANSLATED BY IZUMI SAITO

 スコセッシにこの一年間で面白い映画はあったか尋ねてみると、その反応は慎重だった。謙虚にも、もっと多くの映画を観る必要があると言いながら、ポン・ジュノ監督のブラックコメディ『 パラサイト 半地下の家族』は良かったと言った。

 また、スコセッシ作品へのオマージュを数多く含む、大ヒットコミック原作のスリラー映画『ジョーカー』のこともよく知っていた――映画のプロデュースを手がけたコスコフから製作協力を求められ、最終的には断った経緯がある――しかしその映画を急いで評価するつもりはないようだった。
「一部は見た。」スコセッシは『ジョーカー』についてそう言った。「知っているよ、なぜわざわざ確認する必要があるんだい? わかったよ、もういいだろう」 

現在の映画業界への反感を公然と表すスコセッシだが、次回作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ではハリウッドの映画製作会社とヨリを戻す予定だ。この映画は、1920年代、オクラホマ州で先住民のオセージ族が殺された事件を元にしたデイヴィッド・グランのノンフィクション小説を脚本化するもので、パラマウントが出資することになっている

画像: スコセッシは一年かけて本を読んだり、愛する人たちと過ごしたいと言う。「なぜって、僕らはみな死んでいくのだから。友人も、家族も、いつかはいなくなるんだよ」

スコセッシは一年かけて本を読んだり、愛する人たちと過ごしたいと言う。「なぜって、僕らはみな死んでいくのだから。友人も、家族も、いつかはいなくなるんだよ」

 スコセッシには、映画製作とはまったく関係のない願望が他にもある。「一年かけて、本を読んでみたいね。聴きたい時に音楽を聴いて、友人たちと一緒に過ごす。なぜなら、僕らはみな死んでいくのだから。友人も、家族も、いつかはいなくなるんだよ」

 それを実現できない原因のひとつは、彼も認める通り、彼自身だ。最も得意なやり方で物語を伝えずにはいられないその性分。「本を読んだり、人に会ったりするだろう? すると『そうだ! こんどはこれを映画にしよう』と考え始めてしまう」と、彼は説明する。「長年そうしてきたんだ。今はそれも先細りつつあるが」

 さらにそこにはもうひとつの限界がある―― そう、死だ。しかし、死がいつ訪れるか知りようがなく、交渉の余地もないからといって、日々それに抗う価値がないとは言えない。
「問題なのは、時間やエネルギーには限りがあるということだ。もちろん、精神力にも」と、彼は言う。「ただ幸いなことに、好奇心だけは尽きないね」

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