叫んだり、指を掲げて主張する少女たちが、いかにして私たちの良心、そして現代の活動家のアイコンとなり得たのか

BY LIGAYA MISHAN, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 若いけれど驚異的に賢く、小さいけれど猪突猛進。そんな対比をくっきりと映し出したのが、2018年の夏にネットで話題になったスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリを写した一枚の画像だ。ストックホルムにあるスウェーデン国会議事堂の外の石畳の道の上で(少女を象徴するような)ショッキングピンクのバックパックを横に置き、青白く不機嫌な顔をしたお下げ髪の15歳の彼女が座っている姿を写した写真だ。彼女は学校を抜けだし、二酸化炭素排出量を削減すべきだと政府に要求していた。数日のうちに、数十人が彼女に賛同し、その後数カ月のうちに、世界中で数万人以上の人々が彼女の活動に加わった。

 世界の中で、女性の人権がいまだに抑圧されている場所では、少女たちは生き延びるために自ら主張しなければならない。マラウイではメモリー・バンダが、児童婚に反対する活動を自身が13歳のときに立ち上げた。彼女は村長たちを説得し、21歳未満の少女と結婚する男性からは土地とヤギを没収するという掟を作るのに成功した。マララ・ユスフザイは、11歳のときに匿名でタリバン支配下のパキスタン北西部の生活を伝え始めた。同地では少女たちが学校で勉強することは禁じられていた。彼女の名前はすぐに発覚してしまった。タリバンの武装集団は彼女の行動を「教えに反する」と糾弾し、彼女は14歳のとき、彼らに頭部を銃で撃たれた(彼女の命は助かり、その後ノーベル平和賞を受賞した)。

そして西洋世界の少女活動家たちも、憎悪の対象になることからは免れられていない。象徴の地位に祭り上げられると、彼女たちは今度は格好の標的となり、誹謗中傷や殺害予告や、セクシュアルハラスメントであるポルノ画像が、彼女たちのソーシャルメディアのアカウントに怒濤のように送りつけられる。その意味で少女たちの戦友だといえるのが、彼女たちよりやや年上の、主張する姉妹たちだ。その中のひとりがニューヨーク州を代表する下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスだ。彼女は2018年に当選し29歳で議員になったが、いまだに「若い女の子」と呼ばれ、同僚の議員や批評家たちから「世間知らず」や「間抜け」などと軽んじられている。

 社会が多様化していく過程で、少女は、理想であると同時に、中傷の的であるという矛盾する扱いを受けている。つまり、少女たちと、彼女たちの延長線上にいる若い女性たちは、崇拝されたあとは沈黙を強いられ、おとなしく人形と化粧品を相手にしていろと、元に居た場所に送り返されるのだ(トゥーンベリの義憤の念に対して、トランプ大統領は「彼女はとても幸せな若い少女のようだ」とツイートし、のちに彼女に「落ち着いて」と忠告し、友達と映画でも観なさい、と書いている)。もし彼女たちが声を上げて主張しようとすると、発言が許されるのは、女性として性的に成熟するまでの間だけだ。ジャンヌ・ダルクが1429年に英国軍に占拠されたオルレアンを奪還するのに尽力したのは、彼女が17歳の頃で、その処女性は聖なる武器として効力を発揮した。宗教学と比較文学の学者、フランソワーズ・メルツァーは、ジャンヌ・ダルクが男性用の衣類を着ていたのは「レイプされるのを防ぐためだった」と記述している。すると、カトリック教会は彼女の男装をやり玉に挙げた。「短く、身体に密着した男性用の衣類を着ているのはふしだらだ」と裁判の記録に記されている。その結果、彼女は1431年に異端の罪で火あぶりで処刑された。

 今日、少女たちの言論を非難する人々が理解できないのは、現代のジャンヌ・ダルクたちの力は、すでに時代遅れとなった無垢の概念からきているのではないということだ。我々の社会は、彼女たちが無垢であることすら、すでに許さないからだ。銃規制活動家のエマ・ゴンザレスは、2018年にフロリダ州のパークランドにあるマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の無差別銃撃事件に遭い、生き残った。当時、彼女は18歳だった。それ以来、彼女は米国の法律は、銃乱射による死を防ぐことができないという事実を私たちに思い起こさせる、国の良心ともいえる存在になった。彼女は髪を剃って丸刈りになり「恥ずべきことだ」と声を上げ、プレッシャーに屈することはなかった(彼女は銃撃事件以前からすでに丸刈りにしており、そこに思想上の意味はないと否定したが、丸刈りであることによって戦士や聖人のようなオーラが醸し出され、両性具有的な、性の呪縛に縛られない自由を獲得していることは確かだ)。

ゴンザレスと活動家仲間たちは、過去の少女たちとは違った武器を携えて闘いに臨んでいる。それは、社会の不正の構造と、それを放置した場合の絶望的な未来に関する知識だ。トゥーンベリは昨年の秋、国連会議の壇上に迎えられた。彼女は、ほとんどが男性である世界のリーダーたちをじっと見据えながら彼らを糾弾した。「一体どういうつもりなんですか」と彼女は言った。「あなたたちがきちんと公約を果たさなかったせいで、あなたたちは、私から夢と子どもでいる自由を奪ったのです」。

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