日本における韓流ブームの立役者で韓流エンタメのスペシャリストである田代親世さんが、韓国ドラマの魅力をさまざまな角度からご紹介!今回は「音楽」をテーマにした傑作を厳選!

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

天才女性指揮者が抱える秘密とは……
『マエストラ』

 世界にたったの5%しかいないとされる女性指揮者が主人公のドラマです。
 このヒロイン、世界で活躍してきて20 年ぶりに母国の韓国に戻り、ちょっと落ちぶれているオーケストラの指揮者に就任するところから始まります。有名人だし、天才なのでカリスマがあふれていて態度も大きいというか性格もきつくて、強烈です。

画像: ヒロインの指揮者チャ・セウム役のイ・ヨンエ。© 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd. All Rights Reserved.

ヒロインの指揮者チャ・セウム役のイ・ヨンエ。© 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd. All Rights Reserved.

 しょっぱなから、コンサートマスターを変えたり大胆な提案をするので楽団員たちは文句たらたら。でも一回演奏を指揮しただけで音の外れ方とか細かいところまで指摘して団員達を黙らせるずば抜けた能力を持っています。ここまでの流れは『ベートーベン・ウィルス ~愛と情熱のシンフォニー』や『ストーブリーグ』的な、落ちこぼれ集団にエッジのきいた存在が入ってきて紆余曲折を経ながら立て直していくドラマかなと思わせるのですが、この作品はそういうヒューマンドラマではないんですね。主人公には抱えている秘密があって、そこに関するミステリーや、夫や昔の恋人との愛憎などが複雑に絡み合い、さらに楽団員の殺人事件なども入ってきて、このドラマはどの方向に向かうんだろうと目が離せなくなります。

画像: ヒロインの元恋人で投資家ユ・ジョンジェ役のイ・ムセン。© 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd. All Rights Reserved.

ヒロインの元恋人で投資家ユ・ジョンジェ役のイ・ムセン。© 2024 STUDIO DRAGON CORPORATION & CJ ENM Co., Ltd. All Rights Reserved.

 その中で、ヒロインが若いころに出会った元恋人で投資会社代表の自由気ままに生きている男が、ヒロインに向ける屈折した愛情がツボです。彼女を意のままにしたくてオーケストラまで買い取ってしまったり、彼女を離婚させようとしたり、飄々とした顔でネチネチと彼女に執着していくんですが、その一途さがいい。なんだかんだ言ってヒロインへの純情を貫き通している姿にホロリときます。

■ディズニープラス スターにて全話独占配信中

20歳のピアノ青年と年上女性の情愛
『密会』

 40代の女性と20歳の天才ピアニストの愛を描いた、情感あふれるラブストーリーです。ヒロインは、芸術財団の企画室長として、財団のオーナー一族のお世話をしたり、不正の手伝いにも手を染めたりしながら、したたかに優雅に暮らしています。彼女の周りはみんな高尚ぶっているけれど、仮面の下では出世欲、おべっか、嫉妬、不正と汚いものが渦巻いています。そんな世界で生きてきたヒロインが、ある日、純粋で、きらめくピアノの才能を持つ青年に出会ってしまうんですね。20歳も年が離れているのに、一緒にピアノの連弾をした時から感性が触れあい、魂が共鳴しあっていくのです。

画像: 芸術財団の企画室長オ・ヘウォン役のキム・ヒエ(右)とピアノの才能を持つ青年イ・ソンジェ役のユ・アイン(右)。©JTBC co.,Ltd all rights reserved 原案 東京タワー ⓒKaori Ekuni

芸術財団の企画室長オ・ヘウォン役のキム・ヒエ(右)とピアノの才能を持つ青年イ・ソンジェ役のユ・アイン(右)。©JTBC co.,Ltd all rights reserved 原案 東京タワー ⓒKaori Ekuni

 一見すると、堂々たる女神と野性味のある子犬のようなカップルなのですが、年下男子が何も恐れずにまっすぐにヒロインに向かっていく切実な姿が、ズシンと胸に響きます。ヒロインも、そんな彼を最初は毅然と制しているものの、感性豊かな年下男の熱い気持ちに理性がどんどん崩され、彼女の生き方そのものまでもが大きく揺さぶられていきます。

画像: ©JTBC co.,Ltd all rights reserved 原案 東京タワー ⓒKaori Ekuni

©JTBC co.,Ltd all rights reserved 原案 東京タワー ⓒKaori Ekuni

 そして音楽が大きなポイント。ドラマで終始流れるクラシカルなピアノの調べが官能の響きとなってふたりを激しい恋に導いていきますが、ピアノを連弾するシーンはそのへんのベッドシーンよりも官能的で、見ていて照れてしまうほど。上流階級の表の優雅さと、その裏側に内在しているドロドロとした醜さと、純粋な愛という3つの局面をこっそりと覗き見しているような、人物たちの秘め事を見ている気分にさせられます。
 肌にまとわりつくような独特な質感を持っているドラマで、そのなんとも言えない雰囲気に絡み取られるように引きこまれるでしょう。不思議な余韻に満ちたドラマです。

■U-NEXTにて配信中

天才ピアニストと学生バイオリニストの青春
『ブラームスは好きですか?』

 音楽大学を舞台にした、孤高の天才ピアニストとバイオリン専攻の女子学生が繰り広げる青春ラブストーリーです。
 タイトルのブラームスは、ブラームスが、恩師であるシューマンの妻クララを愛していたという三角関係をモチーフにしているところから来ています。

画像: 天才ピアニスト、パク・ジュニョン役のキム・ミンジェ。©SBS

天才ピアニスト、パク・ジュニョン役のキム・ミンジェ。©SBS

 このドラマのヒロインは、バイオリンの魅力に遅まきながら気が付いて、4回のチャレンジの末、26歳でようやく音大に入学したという女性。一方の、ピアノの天才として知られる青年はピアノを弾いていてもちっとも幸せを感じなくなっている孤独な心の持ち主です。音楽の才能という点で対照的なふたりは、それぞれに片思いの相手がいながら、一緒に時間を過ごすうちに少しづつ心を通わせていくようになります。

画像: ヒロインのヴァイオリニスト、チェ・ソンア役のパク・ウンビン(右)とキム・ミンジェ(左)。©SBS

ヒロインのヴァイオリニスト、チェ・ソンア役のパク・ウンビン(右)とキム・ミンジェ(左)。©SBS

 天才ピアニストを演じるキム・ミンジェの端正な顔立ちが孤高の芸術家の雰囲気にぴったりでとっても素敵。パク・ウンビン扮する女子学生との、距離感を保ちながらのふたりのやり取りがこそばゆいくらいですが、微笑ましくて、このふたりの丁寧な気持ちの通い合いがとってもいいんです。でも想いが高まるにつれ、抑えきれない想いがあふれてきて激情に駆られる場面もあって、お似合いのふたりのしっとりした恋のはぐくみにじんわり来ます。いくら好きなことでも自分の才能とどう折り合いをつけるのか、美しいメロディーを背景に、若き音楽家たちが才能と残酷な現実のはざまで傷ついていく姿や、音楽の世界に生きる者同士の繊細で情感あふれた気持ちの紡ぎあいが見どころのドラマです。

■Amazon Prime Videoにて配信中

田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


韓流ナビゲーター・田代親世の記事一覧へ

▼あわせて読みたいおすすめ記事

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.