日本における韓流ブームの立役者で韓流エンタメのスペシャリストである田代親世さんが、韓国ドラマの魅力をさまざまな切り口でご紹介!今回は、年下男子×年上女性の恋愛ストーリーが多い韓ドラの中でも、年下の男子学生と年上の女性教師の関係を描いた作品に注目します。

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

塾のスター講師と教え子の再会ラブロマンス
『卒業』

 ソウルの塾を舞台に、塾の女性スター講師と、かつての教え子が繰り広げていく師弟ラブロマンスです。キャリア14年目になるベテランの35歳の国語教師がヒロイン。彼女はかつて、成績の低かった生徒を一流大学に合格させた実績からスター講師になったのですが、そのきっかけとなった生徒が30歳を前にして大企業をやめ塾の講師になるのだと、10年ぶりにヒロインの前に現れます。そして彼女のいる塾に新任講師として就任するのですが、実は彼にとって彼女は初恋の相手で、募る想いをどんどん隠さなくなっていくのです……と聞かされると、がっつり甘いラブロマンスを期待するかもしれませんが、見始めてずいぶん想像と違う雰囲気に「おっと~」と驚かされます。

画像: 塾のベテラン講師役チョン・リョウォン。© STUDIO DRAGON CORPORATION

塾のベテラン講師役チョン・リョウォン。© STUDIO DRAGON CORPORATION

 ソウルの塾の熾烈な競争事情や、生徒の奪い合いのすさまじさ、ヒロインが学校教師とやりあったり、うるさく言ってくる母親たちをあしらったり、毎日が講義とテストの繰り返しでろくに休む間もない過酷な生活ぶりなど、欲望と成功欲がうごめく人間関係がリアルに描かれていて、そこが面白いんです。

画像: 勤続14年目の塾講師役チョン・リョウォン(左)と元教え子の新人教師役ウィ・ハジュン(右)。© STUDIO DRAGON CORPORATION

勤続14年目の塾講師役チョン・リョウォン(左)と元教え子の新人教師役ウィ・ハジュン(右)。© STUDIO DRAGON CORPORATION

 日本のドラマで言うと、内館牧子を彷彿させる人間心理のえぐり方という感じでしょうか。甘い空気よりも何かが起こりそうな不穏な空気が全編に流れているんです。そんなきな臭さ漂う中で、必死に今の地位を築いてきたヒロインが、今は同僚講師ながらも、かつての教え子との愛に陥っていくことで一体どうなってしまうのか、そのタブー感にドキドキ、ヒリヒリすること必至です。

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天才青年と教師の共通言語は“数学”
『メランコリア』

 こちらは、数学の天才青年と教師の愛を描く純愛ラブストーリーです。舞台は不正がはびこる私立高校。10歳にしてアメリカの医学学校に入学するほどの数学の天才だったのに、ある出来事を機に数学を捨ててしまった青年と、彼の前に現れた数学を愛する女性教師。この出会いを通して青年は再び数学に向き合い始め、教師を愛するようになるのですが、学校の不正事件を伏せるために、ふたりの関係はスキャンダルに仕立てられ、彼女は世間から葬り去られてしまうのです。

画像: 数学の天才青年役イ・ドヒョン。© STUDIO DRAGON CORPORATION

数学の天才青年役イ・ドヒョン。© STUDIO DRAGON CORPORATION

 このドラマは序盤は高校時代で、7話から時を経て再会したふたりが描かれていきますが、大人になってからのふたりがいいんです。自分たちを陥れた学校の代表に対して復讐を仕掛けていくのですが、教師に対して変わらず一途な愛を貫く青年の想いが尊くて、彼の将来のためにもその想いを押しとどめようとする教師と教え子という微妙な距離感に萌えるのです。特にナイーブな天才青年を演じるイ・ドヒョンの青いひたむきさによろめきます。

画像: 主演のイ・ドヒョン(左)と女性教師役のイム・スジョン(右)。© STUDIO DRAGON CORPORATION

主演のイ・ドヒョン(左)と女性教師役のイム・スジョン(右)。© STUDIO DRAGON CORPORATION

 数学を媒介にした、他者には入り込めない天才同士の愛の物語だけに、ふたりで黒板に数式を書いていく場面が素敵なラブシーンになりますし、論文はふたりの愛の結晶であり、数式の証明が愛の証だったりするんです。数学用語になぞらえたセリフや数学を巧みに入れ込んだエピソードがところどころに入ってくるので、こうした世界観が独特な雰囲気を醸し出す作品になっています。

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“教師と生徒”の関係が変わっても一途な愛
『ロマンス』

 ドジでおっちょこちょいの女性教師と男子高校生が、周囲に反対されながらも愛を育んでいくラブストーリー。今回取り上げたほかの2作と違って、禁断の恋を描いた暗さはなく、全体に明るいトーンで、健全で、すがすがしさが感じられます。

 お互い身分を騙って出会って惹かれ合ったものの、再会してみれば、高校教師と生徒だったとわかり、互いの立場に愕然としながらも愛を育み続けるふたりでしたが、学校にバレて大問題に発展。ふたりは3年後に会うことを約束して、ヒロインは教師を辞め、留学に行くのです。

画像: 女性教師役のキム・ハヌル(左)と男子学生役のキム・ジェウォン(右)。©MBC, iMBC All Rights Reserved.

女性教師役のキム・ハヌル(左)と男子学生役のキム・ジェウォン(右)。©MBC, iMBC All Rights Reserved.

 このドラマは一途な愛の物語であると同時に、キム・ジェウォン演じる生徒の成長物語という側面も。父親が事業に失敗し自死したせいで一家を背負うことになり、昼は学校、夜はバイトに明け暮れ必死に働きながらもデザイナーになる夢を決してあきらめない青年が、先生との恋にもまっすぐに向かっていく姿が非常に好ましいです。キム・ジェウォンのキラースマイルと、意外にも低音の男らしい声、また時折見せるふてぶてしさなど魅力いっぱい。タフで情熱的でちょっと生意気な王子様にここまで一心に思われたら、いくら年下でもぐらつかない女はいないでしょう。こんなキム・ジェウォンの魅力にハマること請け合いです。

 高校で展開されるのがドラマの前半とすれば、後半は3年後、青年が高校を卒業し、ヒロインも別の仕事についてからのお話に。教師と生徒という禁断の関係はなくなったものの、今度はまた別の枷がふたりを取り巻いていきます。ラブコメディのように明るく始まり、ふたりの切ない愛の行方に胸がキューンと締め付けられるドラマです。

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田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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