BY ALEXANDER FURY, PHOTOGRAPHS BY FEDERICO CIAMEI, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)
彼女は、その6インチのヒールを履いてパラッツォ・ヴェルサーチの階段を毎日上る。この日もヒールを履いて3階のアトリエまで上がり、メンズ・コレクションのショーの最終準備をチェックする。キャスティングはすでに終わっていると彼女は言う。ポピープリント、ウォッシュデニム、ピンストライプの代わりにチェーンが施されたスーツや定番の織物のスーツまで、仕上げられた服がラックにずらりと並ぶ。入れ替わり立ち替わり出入りするモデルたちに合わせて、微調整とスタイリングができるよう準備されているのだ。彼女が言っていた「精緻な機械のように働く」とは、見事に合理化されたこのプロセスのことに違いない。
とはいえ、ふと疑念が生じることもある。「人生で最も最悪な瞬間よ」と彼女は明かす。「夕食を済ませてアトリエに戻るときに、その瞬間がやってくる。『ラララ~……やっぱり、考え直そう!』。自分の判断に間違いがないか、不安が頭をよぎるのよ。昨日はとても落ち着いていられたし、今日は最後の詰めをしてる。でも今夜の夕食の後、リハーサルが始まる前に、あらゆることに疑問を感じはじめるの」