BY ALEXANDER FURY, PHOTOGRAPHS BY FEDERICO CIAMEI, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)
彼女の兄であり、ブランドの設立者でもあるジャンニ・ヴェルサーチがマイアミ・ビーチの別荘で射殺された1997年以来、メインラインのデザインを彼女が手がけてきたことを考えれば、ヴェルサーチというブランドはもはやドナテッラのものといっていいだろう。彼女は兄ジャンニが打ち出したブランドのスタイルをよりセクシーに、よりしなやかに解釈しながら、明らかにモダンな方向に導いてきた。
来年には、そのクリエイティブ・ディレクターとしてのキャリアは兄よりも長くなる。「そこで私が言いたいのはね……」と切り出したのは、少なくともニューヨーク・タイムズ誌としてはとても掲載できないような発言だ(※ヴェルサーチの言葉の選び方は、つねに冗談めかした暴力性を秘めている)。「(ヴェルサーチという)カルトを継承しなくちゃ!」と言って、彼女はまた一瞬ニヤッとチェシャ猫のような笑みを浮かべた。
今回のメンズ・コレクションのショーのテーマはブランドの伝統へのオマージュであり、ある意味ではジャンニ・ヴェルサーチその人へのオマージュでもある。「だから考えたの。原点に戻ろう、家に帰ろうって」とヴェルサーチ。「私にとって、兄が亡くなって20年という節目は悲しいことだわ。とっても悲しい。だからこの場所に戻ることにしたの。ここが私の居場所、すべての出発となった場所。全部ここから始まった。私たちはこの場所でディナー・パーティを開き、とんでもないドラマやケンカを繰り広げ、大きな愛を分かち合った。ジャンニと私、2人のタイプの違う人間が、ここで一緒に働いた。私たちはまったく正反対の人間なのにね。ともあれ、すべてはここから始まったの」。彼女は吐息をもらし、そしてほほえんだ。「今回のショーは、ヴェルサーチの祝典なのよ」