兄ジャンニの死後20年目の節目となる今年、2018年春夏メンズ・コレクション直前2日間のヴェルサーチを追った

BY ALEXANDER FURY, PHOTOGRAPHS BY FEDERICO CIAMEI, TRANSLATED BY G. KAZUO PEÑA(RENDEZVOUS)

 事実、今回のショーの中枢となるのは“カーサ・ヴェルサーチ”だ。地階の中庭に咲き誇るキョウチクトウの下でショーが開かれる。ここのところ何シーズンかは、立派だが人間味の感じられないミラノ郊外のコンサート会場を使ってきたが、今シーズン、ヴェルサーチは自身のルーツへと回帰する。錬鉄製のテーブルを取り囲むのは、ヴェルサーチの"グリーク・キー"モチーフを彷彿させる、直角に折れ曲がったガラスのランウェイ。本番2日前、この風景を目の当たりにして思わず「舞台装置は?」と聞きそうになった。だが舞台装置はない。特別な照明も、大げさな演出もない。繰り返しになるが、どこか控えめで地味で、そう、ヴェルサーチが裏庭で夏のバーベキュー・パーティでもやるみたいに思えるくらいだ。

画像: 舞台裏の準備 | 土曜 午後4時45分 ランウェイ・ショーの本番前、モデルのエリック・ヴァン・ジルスがシャツにアイロンをかける。彼のような細身でひょろっとした長い体つきは「新しいヴェルサーチの男性像」であり、今回のキャスティングで心がけたひとつのテーマでもあるという。「私のことだから、みんな筋骨たくましい体格の男を期待しているじゃない」とヴェルサーチは笑いながら言う。「残念ながら、今回、そういうモデルは一人も登場しません」

舞台裏の準備 | 土曜 午後4時45分
 ランウェイ・ショーの本番前、モデルのエリック・ヴァン・ジルスがシャツにアイロンをかける。彼のような細身でひょろっとした長い体つきは「新しいヴェルサーチの男性像」であり、今回のキャスティングで心がけたひとつのテーマでもあるという。「私のことだから、みんな筋骨たくましい体格の男を期待しているじゃない」とヴェルサーチは笑いながら言う。「残念ながら、今回、そういうモデルは一人も登場しません」

画像: 後ろ姿 | 土曜 午後5時40分 「最近は、誰もがパーカーを着ているでしょ」とヴェルサーチ。「うちのアーカイブにだって素晴らしいプリント柄の作品がたくさんあるのよ。シルクのパーカーにブランドを象徴するプリントを施し、ピンストライプ・スーツと合わせたらどうかしらと思って。そこから発展させて、ストリート・テイストのものをより贅沢に、より付加価値のあるものに変えているの」。写真のシルクツイルのフード付きジャケットにはヴェルサーチを代表するエンジェルをモチーフとした「アンジェロ」が派手に取り入れられている

後ろ姿 | 土曜 午後5時40分
 「最近は、誰もがパーカーを着ているでしょ」とヴェルサーチ。「うちのアーカイブにだって素晴らしいプリント柄の作品がたくさんあるのよ。シルクのパーカーにブランドを象徴するプリントを施し、ピンストライプ・スーツと合わせたらどうかしらと思って。そこから発展させて、ストリート・テイストのものをより贅沢に、より付加価値のあるものに変えているの」。写真のシルクツイルのフード付きジャケットにはヴェルサーチを代表するエンジェルをモチーフとした「アンジェロ」が派手に取り入れられている

 年に2回開催するメンズ・コレクションのショーに伴うさまざまなプレッシャーに加え、ジャンニ・ヴェルサーチの死後20年、ドナテラ・ヴェルサーチがそのレガシーを継承して20年、というふたつの大きな節目の年にも関わらず、本番までの48時間のあいだ、彼女の日課はいつもと変わらない。「もちろんそうよ! 私はいつもどおりの生活を送る。毎日ちゃんと起きるし、毎日ジムにも通うわ。行くと元気になるから。たった40分のセッションでも、トレーニングをすると気分がいいし、強くなった気がするの。腹筋にハマってるのよ!」。ヴェルサーチの花柄が施されたスパゲッティー・ストラップのスリップドレスの上から、膨らみのまったくないお腹を軽く叩く。とても小柄なので、トレードマークの厚底のヒールで背を高く見せようとしている。最近こそランウェイのモデルに履かせることは諦めるようになったが、本人は何があっても履き続ける気のようだ。

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