NYを拠点に活躍し、話題のスポットを数々手掛ける建築家。そのインスピレーションの源を、彼自身が秘蔵のプライベート写真とともに紹介する

BY LESLEY M.M. BLUME, TRANSLATED BY NHK GLOBAL MEDIA SERVICE

 カルバン・クラインのデザイナーとして仕事をしていた1990年代、ラファエル・デ・カルデナスは、『ニューヨーク・タイムズ』紙で人生を一変させる記事を読んだ。『ビルバオの奇跡』と題されたその記事は、当時、スペインのビルバオにオープンしたばかりのグッゲンハイム美術館を紹介するものだった。その中で評論家のハーバート・マスカンプは、美術館の建物を「マリリン・モンローの化身」と称していた。魅惑的な建造物とマスカンプの言葉は、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインのアパレルデザイン科を卒業して間もないデ・カルデナスに強い印象を残した。

「あのとき思ったんだ。これほど見事に建物を描写する言葉は聞いたことがないと」とデ・カルデナスは振り返る。数年後、彼はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の建築学部に入学して建築界の革命児グレッグ・リンに師事し、卒業後は彼の下で働いた。

画像: 「自宅のブルックリンのアパートの“植物の部屋”にいる僕。後ろにある植物は、特別なものだ――同じ植物が15株あるんだけど、これがそのすべての母親なんだよ」 PHOTOGRAPH BY WESTON WELLS

「自宅のブルックリンのアパートの“植物の部屋”にいる僕。後ろにある植物は、特別なものだ――同じ植物が15株あるんだけど、これがそのすべての母親なんだよ」
PHOTOGRAPH BY WESTON WELLS

 そして2004年、デ・カルデナスは故郷マンハッタンに戻り、アーキテクチャー・アット・ラージという会社を創設した。現在43歳の彼が手がけてきた商業的プロジェクトの数々は、世間から熱いまなざしを注がれてきた――ジュエリーデザイナーのデルフィナ・デレトレズがロンドンにオープンしたブティックはきらびやかな人工マラカイトに包まれ、バカラのニューヨーク・フラッグシップ・ブティックはまるでグラフィックアート作品のようだ。90年代の人気スポットだったロウア――イーストサイドのアジア・デ・キューバは、デ・カルデナスの発想力によって鮮やかに生まれ変わった。

デ・カルデナスは自らの美の哲学を定義しようとしないが――「それを言うと、狭められてしまうから」と彼は言う――家具や住宅のデザインなど幅広い分野に取り組む彼の作品は、17世紀の文学から80年代の映画まで、ありとあらゆるものの影響を取り込み、グラフィックアートや彫刻作品のようなインパクトを与える。「とにかくポップカルチャーに夢中なんだ」と彼は言う。「僕の建築には、あの『The Facts of Life』(訳註:アメリカのNBCで1979~1988年に放送されたコメディドラマ)まで紛れ込んでいるんだよ」

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.