ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第8回は、長く時計市場を牽引してきたスポーツウォッチの新潮流、「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」。ケースとブレスレットとを巧みに融合させた美しい外観に上質なムーブメントを包んだ新作を紹介

BY NORIO TAKAGI

 ファッションほど顕著ではないけれど、腕時計にもトレンドは存在する。ここ数年来のトレンドカラーはグリーンで、素材では経年変化するブロンズが多用されている。そして昨秋以降、各社から同時多発的に登場し、一大潮流となることを予感させるのが、ケースとブレスレットとを完全に一体化させた、ラグジュアリー・スポーツウォッチである。その素材は、どれもステンレススティール(SS)だ。

 時計ファンなら承知のように、こうしたブレスレットタイプのSS製ラグジュアリー・スポーツウォッチは、すでに1つのカテゴリーを形成している。その始祖は、天才時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタが1972年に生み出したオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」である。さらにジェンタは、'76年にパテック フィリップの「ノーチラス」のデザインも手掛けている。これら2つは、名門メゾン初のSS製ウォッチであり、今もアイコンの1つ。ジェンタ・デザイン以外にも、’75年にはジラール・ペルゴから「ロレアート」が、’77年にはヴァシュロン・コンスタンタンから今の「オーヴァーシーズ」の前身となる「222」が誕生していて、やはりどちらもSS製が、ラインナップされていた。

 こうして1970年代に一気に開花したブレスレット一体型のSS製ラグジュアリー・スポーツウォッチは2019年、新たな展開を見せる。ジュネーブとバーゼルとで開催される、恒例の新作時計発表会ではそぶりも感じさせなかったにもかかわらず、秋以降、各社からブレスレット一体型スポーツウォッチの新コレクションが登場したのだ。

 この連載のVol.5で取り上げた、2019年10月1日に発表されたショパールの「アルパイン イーグル」が、その1つ。これは1980年発表のメゾン初のSSスポーツウォッチの再解釈である。そして10月24日には、A.ランゲ&ゾーネからブランドの歴史にはなかったスポーティウォッチ「オデュッセウス」が登場した。

画像1: Vol.8
高木教雄の「時計モノ語り」
――新たな時代の扉を開く
ブレスレット一体型
スポーツウォッチ

 ランゲの新たな歴史を開く新コレクションの開発には、実に10年以上の歳月を掛けたという。初のスポーティウォッチというだけではなく、レギュラーモデルとしては初のステンレススティール製。リューズをねじ込み式としたのも初めてで、これによりランゲの時計としてはかつてない12気圧の防水性能を得ている。

 初づくしの異例の新コレクションは、外装は入念に手仕上げされて、ドイツの名門らしさを失ってはいない。ケースと融和するブレスレットは幅広で力強く、同時に五連とすることでエレガントさも併せ持つ。さらにバックルの表面中央にはロゴを配した丸いボタンが備わり、これを押すと伸縮する仕組みに。着けたまま伸び縮みさせられる独自の機構は、実に使い勝手がいい。

画像: A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」 ¥3,100,000 <ケース径40.5mm/SS、自動巻き、SSブレスレット> ※ 2020年4月まで、A.ランゲ&ゾーネブティックにて先行展開予定 A.ランゲ&ゾーネ TEL. 03(4461)8080

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」¥3,100,000
<ケース径40.5mm/SS、自動巻き、SSブレスレット>
※ 2020年4月まで、A.ランゲ&ゾーネブティックにて先行展開予定
A.ランゲ&ゾーネ
TEL. 03(4461)8080

画像: 専用ムーブメント「Cal.L155.1 DATOMATIC」を新開発。テンプを両方から支えるブリッジのエングレービングやゴールドシャトンの穴石など、ランゲ伝統のスタイルが踏襲される。自動巻きローターは、比重が高く回転効率を高めるプラチナ製とした PHOTOGRAPHS: COURTESY OF A. LANGE & SÖHNE

専用ムーブメント「Cal.L155.1 DATOMATIC」を新開発。テンプを両方から支えるブリッジのエングレービングやゴールドシャトンの穴石など、ランゲ伝統のスタイルが踏襲される。自動巻きローターは、比重が高く回転効率を高めるプラチナ製とした
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF A. LANGE & SÖHNE

 基本的に1モデル、1ムーブメントというランゲの通例にならい、専用ムーブメントも開発された。3時位置には、独自の大型日付表示のアウトサイズデイトを搭載。そしてその対称位置には、大型の曜日表示が備わる。それらの調整は、リューズ上下のボタンで行う仕組みで、操作性にも秀でている。上質なムーブメントこそ、ランゲの矜持。時をカウントするテンプは、両方向から支える構造として耐衝撃性を高め、そのブリッジはエングレービングが彩る。入念に手仕上げと装飾とが施されたムーブメントが、オデュッセウスをラグジュアリーにする一番の要因である。

 

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