ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第8回は、長く時計市場を牽引してきたスポーツウォッチの新潮流、「ラグジュアリー・スポーツウォッチ」。ケースとブレスレットとを巧みに融合させた美しい外観に上質なムーブメントを包んだ新作を紹介

BY NORIO TAKAGI

 ショパール、A.ランゲ&ゾーネに続いたのは、「H.モーザー」。スイス・シャフハウゼンに経済的発展をもたらした伝説の時計師の名を蘇らせ、上質かつ独創的な自社製ムーブメントに加え、フュメと呼ばれる美しいグラデーションダイヤルに象徴される外装技術にも秀で、コアなファンを獲得する同メゾンは、初のクロノグラフをブレスレット一体型のSS製スポーツウォッチとしてリリースしたのだ。

画像2: Vol.8
高木教雄の「時計モノ語り」
――新たな時代の扉を開く
ブレスレット一体型
スポーツウォッチ

 2020年1月9日に正式発表された「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」は、レトロなクッション型ケースの上部両サイドのクロノグラフ用のプッシュボタンが備わる、特異な外観を持つ。ブレスレットの各コマが有機的なカーブを描く様子は、初期のエルゴノミクスデザインを彷彿とさせる。実際、着け心地は極めて良好だ。分・秒インデックスを主役としたダイヤルはレーシィな印象で、縦に筋目を入れた上から得意のフュメで仕立てている。

画像: H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」 ¥4,800,000(限定100本) <ケース径42.3mm/SS、自動巻き、SSブレスレット> イースト・ジャパン TEL.03(6274)6120

H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」¥4,800,000(限定100本)
<ケース径42.3mm/SS、自動巻き、SSブレスレット>
イースト・ジャパン
TEL.03(6274)6120

画像: 搭載するキャリバー「Cal.HMC 902」は、コラムホイール式のクロノグラフの高級機。中央に設置されたクロノグラフ機構は、ヤスリ状ディスクによる水平クラッチで秒積算計へ駆動が伝達され、その下に設置した分積算計のディスクとは垂直クラッチでつながる PHOTOGRAPHS: COURTESY OF H.MOSER & CIE

搭載するキャリバー「Cal.HMC 902」は、コラムホイール式のクロノグラフの高級機。中央に設置されたクロノグラフ機構は、ヤスリ状ディスクによる水平クラッチで秒積算計へ駆動が伝達され、その下に設置した分積算計のディスクとは垂直クラッチでつながる
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF H.MOSER & CIE

 ダイヤル中央に秒・分2つのクロノグラフ積算計針を装備しているのも、独創的である。そのムーブメントは、これまで一貫して自社製を搭載してきたH.モーザーとしては異例の精巧な設計で名高いムーブメント会社「アジェノー社」製を採用している。その設計は、極めて斬新。時刻表示用のメカニズムをドーナツ状に構築し、中央の空いたスペースにクロノグラフ機構が組み込まれている。そして時刻表示用の歯車からクロノグラフ機構への駆動の伝達システムが、実に画期的。通常の歯車ではなく、ディスクを用い、その外縁をヤスリ状にして摩擦力で伝達させているのだ。これによりクロノグラフ作動時の針飛びを解消し、また駆動効率も向上させた。裏側から姿を表すそのムーブメントは、見るからに複雑で構造的に美しく、また丁寧な仕上げも施され美観に優れる。

 新時代のSS製ラグジュアリー・スポーツウォッチは、どれも上質なムーブメントで魅せる。

高木教雄(NORIO TAKAGI)
ウォッチジャーナリスト。1962年愛知県生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアなどライフスタイルプロダクトを取材対象に、各誌で執筆。スイスの新作時計発表会の取材は、1999年から続ける。著書に『「世界一」美しい、キッチンツール』(世界文化社刊)があり、時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ』(幻冬舎刊)も監修

 

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