BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA
さて居酒屋の次は、寿司屋に出かけよう。「鮨 一條」は、江戸前の仕事が行き届いた、堂々たるにぎりがいただける店である。またコースではなく、お好みで頼めるところもいい。寿司屋は、「職人とお客さんがカウンター越しに、話をしながら食事を組み立てていく」という点に醍醐味があった。だが最近はどの店もコースのみで、魅力が失せている。さまざまな肴で、じっくりと酒を飲みたい。いや今夜は、軽くつまんでにぎりを楽しもう。その日の気分や食欲で好きなように過ごす。そんな本来の楽しみ方が、「鮨 一條」にはある。
場数を踏んでいなくとも、気さくな「鮨 一條」の店主なら、いかようにも対応してくれるだろう。今の時期なら、赤ウニの甘みを蒸しアワビの煮汁のうま味が膨らます、日本酒が恋しくなる肴で盃を傾ける。軽く塩で締めてから皮目をあぶったサンマは、舌に流れゆく脂の香りに、思わず熱燗を合わせたくなる。
にぎりは、酢がきいた酢飯のうまさが魚を生かす。はらりと舌の上で舞う酢飯と、エビやマグロ、ヒラメが抱き合う。あるいは、きっちり締めたコハダの酸味と酢飯が出会って、喉がキュッとなるような感覚が生まれる。
ここには粋でいなせな味が生きている。きわめて居心地がよく、肴もにぎりも上等で、しかも都心よりは安い。だから自ずと足が向いてしまう。
鮨 一條
住所:東京都中央区東日本橋3-1-3
電話:03(6661)1335
営業時間:12:00~14:00、17:00~21:30
定休日:水曜
おまかせ(つまみ・にぎり)¥18,000~、昼はおきまり¥5,000あり