美味を訪ねて日々、東奔西走するタベアルキスト、マッキー牧元がいま注目するのは「東京の東」である。信頼の老舗に加えて、新店も続々。流行と一線を画す “己の味”を磨く職人たちが、今宵も腕を鳴らして待っている

BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 割烹なら「人形町 きく家」をおすすめしたい。この店は、数々の割烹に行き慣れている、舌が肥えたお客さんが多いという。それはほかの割烹では味わえない、「きく家料理」が味わえるからである。

画像: 「建物も料理の器ですから」と語る店主の志賀真二さんは、店内のしつらえまで自ら手がける粋人。和食の枠を超えた料理で食通を楽しませるのは、この店生え抜きで14年の若き板長・上村俊介さん(写真右)だ

「建物も料理の器ですから」と語る店主の志賀真二さんは、店内のしつらえまで自ら手がける粋人。和食の枠を超えた料理で食通を楽しませるのは、この店生え抜きで14年の若き板長・上村俊介さん(写真右)だ

画像: 「アワビ、軍鶏、松茸のスープ仕立て」

「アワビ、軍鶏、松茸のスープ仕立て」

 たとえば椀ものの代わりにスープとして出されるのは、軍鶏(しゃも)と松茸、アワビのスープ仕立てである。「はあ」ーー。鶏肉の滋養に満ちた味わいに、充足のため息がもれる。主役は軍鶏であり、松茸やアワビの香りは、その滋味を静かに持ち上げている。その調和の仕方が、なんとも美しい。
 天然うなぎは、ワサビと醤油か塩焼きのまま食べることが多い。しかしこちらでは、香茸と新ごぼうのピュレが添えられる。合わせて食べればどうだろう。その三者の香りが共鳴し合い、うなぎがより猛々しく舌に迫ってくるではないか。

画像: 「琵琶湖の天然大うなぎの炭火焼き」

「琵琶湖の天然大うなぎの炭火焼き」

画像: 「甘鯛の昆布締め」

「甘鯛の昆布締め」

「甘鯛の昆布締め」は、トマトドレッシングのうま味が甘鯛の上品な甘みに艶をつけて、顔を崩させる。こうした料理を前に、素晴らしい品揃えの日本酒が、次々と出される。じつに罪つくりな店なのであります。

人形町 きく家
住所:東京都中央区日本橋人形町1-5-10 
電話:03(3664)9032
営業時間:17:30~20:30(LO) 
定休日:日曜・祝日(土曜は前日までの予約のみ)
おまかせコースのみ¥16,000~(個室)、¥8,000~(カウンター席)。
個室5室ほか「きく家 はなれ」もあり(完全予約制)
公式サイト

※記事中の料理は、季節により、またはメニュー改変により提供されていない場合があります

マッキー牧元
1955年東京都生まれ。焼きとり、トンカツ、居酒屋からフランス料理まで、美味を渉猟してやまない自称「タベアルキスト」。雑誌寄稿やラジオ、テレビ出演、講演会、料理開発と多忙な合間をぬい、料理人の"隠れたファインプレー"を発見することを無上の喜びとして、たゆまず食べ歩く日々。

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