海外文学が好きで、翻訳の仕事をこよなく愛していることがしみじみと伝わってくる。65歳を過ぎた今も、仕事は現役バリバリ。「自宅の仕事部屋にデスクトップのパソコンがあって、そばに原書を立てかけ、それを目で追いながら翻訳しています。僕はこれといった趣味がない人間だから、時間が許す限り仕事をしてしまう。次が読みたくて読みたくて、つい長引いちゃうっていうのが本当のところなんだよね(笑)」。自身が楽しんでいるから、田口さんが手がける文章はするすると読み心地がよく、読み手は小説世界に溺れることができるのだろう。
ところで翻訳とはいったい、どんな流れで行い、どんなスキルが必要なのか?
「僕の場合は、まず原書を一気に読んで、そこからひとひとつ丁寧に訳していくタイプ。必要なのは、英語の読解力に加え、日本語に変換するための豊かな表現力でしょうか。その際、正しい日本語を抽出する力も大切です。作家にはポエティックライセンスみたいなものがあって、ある程度文法や言葉の用法を破っても許される部分があるけれど、翻訳家がそれを行うと間違いだと指摘される。ゆえに言葉には非常に神経質にならざるをえないし、辞書はよく引くほうだと思いますよ」。想像以上に緻密で、集中力を要する仕事。その作業中、何かを口にすることはほとんどないという。

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「でもね、今回、このコラムの依頼を受けて気づいたんです。僕は、風呂上がりに食べるアイスクリームが大好きだということを。習慣的にいろいろなアイスを食べるけれど、最近はコンビニで見つけた『フルーツタルト』味にハマっちゃってね。果物がいろいろ入っていておいしいんだ。ニュースや大好きなボクシングを観ながらこれを食べるのが至福のひとときなんだけど、血糖値を考えて、一日半分ずつに抑えています(笑)」
最後に、翻訳の話をもう少し。「僕らが若い頃は、西洋のものはなんだかキラキラして見えた。今は海外が身近になり、それほど憧れの対象ではなくなってしまったのも、翻訳本が低迷している理由のひとつかもしれない。でも、たとえばローレンス・ブロックは本当に文章がうまい人だと思うし、内面にわざと立ち入らずに客観描写に徹して表現するマイクロ・Z・リューインなんかを読むと、叙情が渇いていくようなハードボイルドの世界に浸ることができます。ぜひ読んでみて、その世界を知っていただきたいですね」
田口俊樹(TOSHIKI TAGUCHI)さん
1950年、奈良県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、さまざまな職業を経て高校の英語教員となる。ミステリー小説の翻訳家との二足のわらじを履きながら、10年後に専業となる。現在は翻訳学校「フェロー・アカデミー」で講師を務め、後輩の育成にも力を注ぐ。翻訳ミステリー大賞シンジケート発起人の一人
PHOTOGRAPH BY HIROMI NAGATOMO
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