BY TOMOKO MANO, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO
そろそろお中元など、夏の贈り物を考え始める頃です。日頃お世話になっている方や、なかなか会えないけれど、お元気にされているか気になる恩師へ。大切なご縁でつながっている方達に、季節の折り目にはご挨拶に添えて、ささやかでも気持ちを形にして贈りたいもの。古くからの友人やふるさとの親類家族とも顔を合わせる機会の多い夏休みも、もうすぐに。そこで今月は、送るにも手土産にも喜ばれる缶入りクッキーのおすすめを。
日持ちする焼き菓子を詰め合わせたクッキー缶は送っても持ち運んでも、美しい見た目もおいしさもそのままに相手のもとへ届けられます。缶の蓋を開ければ、中はぎっしりと詰まったクッキー。バリエーション豊富なアソートタイプには、これはどんな味かしら、どれから食べようかなと、心躍る楽しさ、うれしさがある。ひとり暮らしでも、クッキーなら少しずつ味わいながら長く楽しんでいただける。ファミリーなら子どもからお年寄りまでみんなで楽しめます。ビジネスシーンでも、皆それぞれに手軽につまんで、ほっと一息入れていただけます。
贈るお菓子として定番中の定番。だからこそ喜んでもらえるものを、相手に合わせて丁寧に選びたいもの。ポイントはクッキーがおいしいこと、缶にも魅力があること。昔ながらの変わらぬ味がうれしいものから、話題のパティスリーのモダンなものまで、作り手たちのそれぞれの想いが込められた魅力溢れるクッキー。贈った方の夏のティータイムに、彩りを添えてくれることでしょう。
ルスルス
菓子工房ルスルス。響きも耳に心地よい“ルスルス”とは、フランス語で“源・発信していく”の意味。作り手は新田あゆ子さん、まゆ子さん姉妹。「あたり前のことを、丁寧に」をモットーに、ひとつひとつ手作りされるお菓子は見た目に愛らしく、口にすれば素材の良さがきちんと伝わる、ほっと和む味わい。“どんな時に、どんな人とこのお菓子を食べるんだろう?”そんな想像を膨らませながら考えるというお菓子のネーミングも、詩のひとひらの言葉のよう。
物語から飛び出してきたような鳥のかたちや、夜空にきらめく星のかたちをしたクッキーは、レモン風味のアイシングが爽やかな味わいで、夏の暑い日のおやつにもピッタリです。さりげなく手渡しするにも、カードを添えて送るにも素敵な、小ぶりなサイズ感も好ましい。
問い合わせ先
ルスルス浅草店
TEL. 03(6420)6601
公式サイト
アトリエうかい
おいしい! と評判で、近ごろ百貨店では入荷するや瞬く間に売り切れ必至の人気モノがこちら。「アトリエうかい」は鉄板料理店「うかい亭」を展開する、うかいグループの洋菓子店。お菓子を手がけるのは鈴木滋夫さん。フランスでの研修後、都内の製菓店を経て、うかいの洋食事業部製菓長に就任。現在は「アトリエうかい」の統括製菓長として製菓全般を取り仕切る。その鈴木さんをリーダーに、アトリエうかいが一体となって情熱を注ぎ、素材選びから味わい、パッケージまでこだわりぬいたのがこのフールセック。
クラシカルな缶の蓋を開けると、色とりどりのクッキーが行儀よく並ぶ。ひとつひとつが異なる形と多彩な風味の贅沢な7種のアソート。口に運ぶと、ほろりとほどけるようなやさしい口あたり、さっくり軽やかな口あたり、さまざまに繊細な食感と豊かな風味が口中を幸福で満たします。食後で満腹な時でも楽しめるように計算された小ぶりのクッキーは、それぞれ実に魅力的。ビジネスシーンの差し入れや、舌の肥えた方に差し上げるにも、こちらならきっと間違いなし。
問い合わせ先
アトリエうかい たまプラーザ
TEL. 045(507)8686
※お取り寄せはオンラインショップのみ可能
公式サイト
自由学園食事研究グループ
自由学園は、日本で初となる女性ジャーナリストであり、家計簿の考案者である羽仁もと子氏とその夫、吉一氏によって1921年に創設された学園で「よく生きる人、よい社会を創る人」の育成を目指し、“生活即教育”をモットーに、一貫教育に取り組んでいます。卒業生を中心に手作りされているのが、こちらのクッキー。蓋を開けると、隙間なくぎっしりと詰まったクッキーがお目見えします。味と形が異なるクッキーが、見事にぎゅぎゅっと詰まっている様子は圧巻。
菊の形のクッキー、シナモンフラワー、絞り出しクッキーのリボン、ねじねじのスティック状のチーズバーや、真ん中が空いたリング、さくさくした三角のサブレ、銀紙にくるまれたブラウニーなどなど、それぞれが独創性のある形で目にも楽しい。ザクザクとした歯応えのある食感で、素材の持ち味が素直に伝わる。誠実につくられた素朴な味わいは、小さな子どもからお年寄りまで、ファミリーへの贈り物にぴったり。ご家庭のティータイムから、お祝いごとにも。長く愛され続けているのもうなづけるひと品です。
問い合わせ先
自由学園食事研究グループ
TEL. 042(422)3336
公式サイト
パティスリー アサコ イワヤナギ
東京の等々力にある「パティスリィ アサコ イワヤナギ」は旬の果物を贅沢に用いて創り出される宝石のようなパフェや、洗練された独創的なケーキで話題の的。こちらは隣りにオープンしたテイクアウト専門のショップ「アサコ イワヤナギ プリュス」の缶入りサブレ詰合せです。
シェフパティシエールの岩柳麻子さんは染織を学んだのち、独学でお菓子作りを学んだという異色の経歴の持ち主。お菓子のひとつひとつから、唯一無二の感性と豊かな発想、研ぎ澄まされた美意識が伝わってきます。端正なシルバーの角缶の蓋を開けると、整然と収まった9種類のサブレ。ほんのりピンク色のサブレはフランボワーズのフルーティーな香りと甘酸っぱさがさわやか。グリーンのサブレは、ナッツ感も軽妙で、ピスタチオ好きにはたまらない一枚。アールグレイが華やかに香るもの、ほろ苦いチョコレートのサブレ、バターの芳醇さが楽しめるガレットも。クラッカーのような薄い層が重なるサブレは、繊細な食感から山椒とパルメザンチーズの絶妙な風味が広がり、驚く。小さく厚みのあるサブレからはプロバンスハーブ風味のチーズのコクがしっかりと。
甘いもの、酸味のきいたもの、ほんのり塩味のあるものとバランスがよく、ワインを片手に大人が楽しめそうなアソート。普段は甘いものは食べないという男性への贈り物にもおすすめです。
問い合わせ先
アサコ イワヤナギ プリュス
TEL. 03(6809)8355
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やきがしやSUSUCRE(シュシュクル)
三軒茶屋駅からてくてく歩くこと十数分、「やきがしや SUSUCRE(シュシュクル)」は緑豊かな住宅街にある菓子屋さんです。扉を開けると、甘い匂いがふんわり。小さな店内には楽しいかたちの焼き菓子がところせましと並んでいる。右側にはオープンキッチンがあり、手際よくお菓子がつくられていく様子を見ることができます。オーナーシェフ下永恵美さんは、自由学園の卒業生。お菓子づくりの道へ進もうと製菓専門学校へ通った後は、『フレンチパウンドハウス』『ル・シャン・ド・ピエール』『テオブロマ』などで研鑽を積み重ね、2008年にSUSUCREをオープンしました。
こちらのお菓子は、うさぎやはりねずみ、どんぐりやアイスキャンディーなど、思わず顔がほころぶ愛らしいかたちが勢ぞろい。フランスの伝統菓子やタルトやパイも並び、その数は50種類以上。クッキーを頬ばればほろほろとほどけ、口のなかでしゅ~っと溶けていく。なんという優しい味わい。焼きたての味を子どもたちが安心して食べられるよう、保存料はいっさい使っていないそう。
楽しいお菓子をさらにとびきりの贈り物にするのが、絵本作家・山脇百合子さんのイラストが描かれた薔薇色の丸い缶! 学生時代の同級生のお母さん、というご縁なのだそう。店頭ではこの缶を購入して、好きなお菓子を選んで詰め合わせることが可能。お店のホームページや日本橋高島屋ではセットになったものが販売されています。
お菓子を楽しく食べたら、缶は宝もの入れに。子どもも大人もうれしい、三世代に喜ばれるお菓子は遠方の友人ファミリーへ送ったり、帰省の手土産に。
問い合わせ先
やきがしや SUSUCRE
TEL. 03(5856)6284
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銀座 ハプスブルク・ファイルヒェン
缶を開けると、きっちりと隙間なく整列したクッキー。こちらは「銀座ハプスブルク・ファイルヒェン」のテーベッカライ。
銀座7丁目のレストランでは、オーストリアの伝統的な料理を優雅な空間で味わうことができます。オーストリア国家公認マイスターの資格を持つオーナーシェフの神田真吾氏が、お客様が本場の味を持ち帰ることができるようにと、情熱を込めて作りあげたのがこちらのお菓子。徹夜も辞さずに試作を重ね、納得のいく味に仕上げたのだそう。写真の『テーベッカライ クライン』は、“バニーレ”、“ショコラーデ”、“リンツァー”の3種の詰合せ。バニラの香り豊かな風味に杏のコンフィチュールで酸味をきかせた、しっとりした食感の「バニーレ」、上質なチョコレートを用いた風味豊かな生地に、まろやかなホワイトチョコレートを合わせた「ショコラーデ」、オーストリア北部の街、リンツ発祥のお菓子「リンツァー」は柑橘の香りがふわりと立ちのぼるシナモンの生地にオーストリア産ラズベリーのコンフィチュールをサンドしたもの。缶にもこだわりがあり、上品な色あいはマリアテレジアの好んだ色であり、シェーンブルン宮殿の外壁の色にちなんだものだそう。
原料選びからこだわりぬいたシェフ渾身のクッキーは、しっとりと繊細な口どけに深みのある味わい。パッケージにも風格を感じさせる、食通をもうならせるひと缶です。
問い合わせ先
銀座 ハプスブルク・ファイルヒェン
TEL. 03(5537)3226
公式サイト