ふだんは名店でしか味わえない極上の素材が我が家に届く―― 名店の一皿を支えるのは、抜きんでて風味に優れた食材を作る生産者たちだ。料理人たちも案じている、敬愛する生産者たちの食材を無駄にすることがないよう、自宅に取り寄せ、その味を堪能したい

BY MIKA KITAMURA

サスエ前田魚店

 国内のみならず、海外の一流料理人たちも信頼を寄せるのが、静岡県焼津市の「サスエ前田魚店」だ。5代目店主の前田尚毅さんは、魚の目利き。魚にストレスを与えない「神経締め」、余分な水分を抜いて鮮度を維持し、締まった身質と凝縮した味わいになる「脱水」と呼ばれる独自の方法で、魚の旨みを最大限に引き出す。魚の種類や大きさ、脂分によるのはもちろん、レストランでどのように調理するかをも丁寧に聞きとり、それに合わせて水分量や旨みの調整を行う。

画像: 5代目店主の前田尚毅さん。前田さんは、干物づくりに鮮度のよい、刺身で食べる魚を使う。“食感と旨みを引き出す技”は干物にも遺憾なく発揮されている。「朝獲れの魚を天日干しにすることで、味わいが凝縮して、従来の干物とは違ったおいしさになります。干し方から塩の塩梅まで、うちならではのやり方に新たな技術を加えて作っています。普通の干物より旨みの水分を保って干し上げているので、長くはもちません。せいぜい4日間くらいでしょうか」

5代目店主の前田尚毅さん。前田さんは、干物づくりに鮮度のよい、刺身で食べる魚を使う。“食感と旨みを引き出す技”は干物にも遺憾なく発揮されている。「朝獲れの魚を天日干しにすることで、味わいが凝縮して、従来の干物とは違ったおいしさになります。干し方から塩の塩梅まで、うちならではのやり方に新たな技術を加えて作っています。普通の干物より旨みの水分を保って干し上げているので、長くはもちません。せいぜい4日間くらいでしょうか」

 静岡市にある天ぷらの名店「成生(なるせ)」のご主人・志村剛生さんが語ってくれた。「開店してから、うちは前田さんと二人三脚でやってきました。地元の魚介と野菜を揚げるうちの独特のスタイルは、前田さんの魚の存在があってこそ。今も毎朝、前田さんの店を訪れ、前田さんの魚を見てから当日のメニューを決めます。なんといっても、魚を扱う技術が最高ですし、お店の心得や商売の仕方が何より真っ当です」と絶大な信頼を寄せている。

 前田さんは国内外のグランメゾン級のレストランへも卸すが、地元のお店や一般のお客様に買ってもらう魚のほうがはるかに多いという。
「一流店へ卸す魚は30〜40匹の中から選んだ特上の一匹です。うちのお店を支えてくれているのは、その1匹以外の魚を買ってくださる地元の飲食店や家庭のお客様なんです。常連客の方々から、他県の友人らへ送ってあげたいとの要望もあり、特別に干物を作ってきました。うちの干物のおいしさを大勢の方々に知っていただければと、干物をセットにして5月から販売することにしました」

画像: 干物セット¥2,000〜(送料別) 写真は、¥7,000(送料別)。電話で相談のうえ「人数、予算、住所、名前、電話番号、希望日時※」を伝えて申し込む※ 日時はリクエストできるが、天気のよい日に干してすぐ送るため、要望に添えない場合もあり PHOTOGRAPHS:COURTESY OF SASUE MAEDA

干物セット¥2,000〜(送料別)
写真は、¥7,000(送料別)。電話で相談のうえ「人数、予算、住所、名前、電話番号、希望日時※」を伝えて申し込む※ 日時はリクエストできるが、天気のよい日に干してすぐ送るため、要望に添えない場合もあり
PHOTOGRAPHS:COURTESY OF SASUE MAEDA

 ミシュランガイドブックの三ツ星クラスの鮨屋や、「世界のベストレストラン50」にランクインする名店で腕を振るう錚々たる料理人が絶大な信頼をおく“前田さんの魚”。しかもそれが干物で届くとは! さっそく申し込んでみることに――
 発泡スチロールではなく、シンプルな箱に入ってやってきた干物は、まだ海で泳いでいるかのようにぴっかぴか。金目鯛、連子鯛、かます、あじ、いわし……。「くれぐれも焼き過ぎないように」という前田さんのアドバイスで、いつもより短時間でさっとグリル。焼き上がった干物は、身がふんわり。その旨みは脳天直撃!!

 これまで味わったことのなかった新しい干物の世界。お天道様と前田さんの職人技がここまでおいしくしてくれた魚を、焼くだけで家で味わえるなんて。みなさまにもこの幸せを味わってほしい。

問い合わせ先
サスエ前田魚店
054(626)0003
公式サイト

京中

 京都の精肉店「中勢以」が12年前、東京へ進出。そのおいしさが評判となり、“熟成肉ブーム”が始まった。店主自ら牛を選んで仕入れ、枝肉で熟成させ、食べごろの状態をお客様の要望に合わせて切り出してくれる。当時、そんなお店は東京になかった。現在は京都に集中し、ブランド名も京中(きょうなか)と改め、レストランと肉総菜店も開店。新型コロナ禍のなか、京都の病院へお弁当を提供する「弁当の底力プロジェクト」などの活動もしている。

 京中が扱うのは主に但馬牛と呼ばれる黒毛和牛。もともと明治中期から博労として活躍してきた家系で、いまも農家とのコミュニケーションを絶やさない、牛の目利きでもある。牛のことを知り尽くし、どんな餌を与えれば肉質が変わるかなどのアドバイスすることもある。農家と牛、そして精肉屋をベストな状態でつなぐという役割も担っている。一方で、毎日訪れるお客様のために、必要な部位を必要なだけ切り出して販売する。

画像: 「うちの理想とする肉質は、キメが細かく、テリがあり、肉は小豆色、脂はやわらかなクリーム色です。」と熟成具合を確かめる2代目の加藤謙一さん。牛を見極めて買い付け、枝肉の状態で約4〜12週間寝かせる。この枝肉熟成」で、肉に濃い肉味と強い旨み、上品な甘味が生まれ、ほのかな熟成香が宿るようになるのだ。加藤さんは肉を知るために、米国コロラド州立大学でミートサイエンス修士号を修了し、食肉業界を多角的に捉え、レストランを開店するなど新しい試みを始めた

「うちの理想とする肉質は、キメが細かく、テリがあり、肉は小豆色、脂はやわらかなクリーム色です。」と熟成具合を確かめる2代目の加藤謙一さん。牛を見極めて買い付け、枝肉の状態で約4〜12週間寝かせる。この枝肉熟成」で、肉に濃い肉味と強い旨み、上品な甘味が生まれ、ほのかな熟成香が宿るようになるのだ。加藤さんは肉を知るために、米国コロラド州立大学でミートサイエンス修士号を修了し、食肉業界を多角的に捉え、レストランを開店するなど新しい試みを始めた

 一流の料理人に、ここの肉のファンはとても多い。そのひとり、東京・自由が丘のイタリアン「モンド」の宮木康彦シェフは、開店以来、こちらの但馬牛を使っている。「熟成によって肉本来の味わい、特に旨みが引き出されています。独特の歯切れのよさも素晴らしい。料理した肉の味見を毎日するのですが、京中の肉の素晴らしさはダントツです。口が喜んでいると言いますか、噛めば噛むだけ味の余韻が続くのです」と大絶賛だ。

 宮木シェフは、この肉は塩をしただけでグリルパンで焼く、と決めている。「肉の力が素晴らしいので、本来は素材の味を引き上げてくれるオイルや炭の香りがかえって邪魔になるんです。この肉の味を最大限に生かすには、この方法しかないと思っています。添えるのは葉野菜のサラダだけ。シンプルに仕上げます」と、とにかく引き算の調理法で攻めている。名料理人に、技の披露を控えさせてしまうほどの肉のパワー、恐るべし。

画像: 「京中式熟成肉冷凍セット」¥11,000(送料込) ※ 14時までに注文すれば、翌日届く。ただし、水曜日は定休日ため、金曜日以降の配達(一部の地域を除く) <セット内容> 京中式熟成牛肉 すき焼き用切り落とし<150g×1袋> 京中式熟成牛肉 焼肉用切り落とし<150g×1袋> 京中式熟成牛肉 中挽き<4mm>ミンチ<150g×2袋> 京中式熟成牛肉 シチュー用<200g×2袋> 京中式熟成豚肉 ローススライス<150g×2袋> 京中式熟成豚肉 ロースステーキ用1枚<100g×2袋> 京中式熟成豚肉 バラスライス<150g×2袋> 京中式熟成豚肉 中挽き<4mm>ミンチ<200g×2> PHOTOGRAPHS: COURTESY OF KYOTO NAKASEI

「京中式熟成肉冷凍セット」¥11,000(送料込)
※ 14時までに注文すれば、翌日届く。ただし、水曜日は定休日ため、金曜日以降の配達(一部の地域を除く)

<セット内容>
京中式熟成牛肉 すき焼き用切り落とし<150g×1袋>
京中式熟成牛肉 焼肉用切り落とし<150g×1袋>
京中式熟成牛肉 中挽き<4mm>ミンチ<150g×2袋>
京中式熟成牛肉 シチュー用<200g×2袋>
京中式熟成豚肉 ローススライス<150g×2袋>
京中式熟成豚肉 ロースステーキ用1枚<100g×2袋>
京中式熟成豚肉 バラスライス<150g×2袋>
京中式熟成豚肉 中挽き<4mm>ミンチ<200g×2>
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF KYOTO NAKASEI

 筆者は、東京進出のころからのここの肉のファンである。立ち寄ってスライス肉を買ったり、年末にはブロック肉を取り寄せたり。“中勢以の肉を料理するときはシンプルに”は、私のルールでもある――スライス肉は塩と胡椒でさっと焼くだけ。ステーキ肉も、塩だけで調味。胡椒をたっぷり振って、そのままいただく―― しっかりした旨みに、雑味のない爽やかな味わい。他では出合えない味だ。

 この4月から、京中では、冷凍肉のセット販売を始めたので、取り寄せてみた。一般家庭で使いやすい部位がラインナップされていて、ふたり家庭には量もちょうどよく、しばらく楽しめそう。冷凍品なので、「早く使わなきゃ」というストレスがないのも嬉しい。肉の種類ごとに、お店からレシピ提案も。「牛肉のすき焼き用切り落とし」なら、野菜炒め、牛丼、肉豆腐、ハヤシライスにも。「豚肉のローススライス」は水炊き、野菜炒め、肉巻きにもできる。シンプルに焼いても、ハヤシライスや炒め物にしても、ありがたいことに肉の力で完成度の高い味になった。次回は冷蔵で肉の塊を取り寄せてみたい。

問い合わせ先
京中
公式サイト

チーズ工房 白糠酪恵舎

 北海道・道東に位置する白糠町。太平洋に面し、町の総面積の約83%を森林が占めている。全国有数の日照時間の長さを誇り、夏日が年平均5.5日という冷涼な気候を生かして、酪農や牧羊、紫蘇とブルーベリーの栽培、漁業などが盛んだ。

 自然に恵まれたこの大地で、イタリアのチーズの製法にこだわり、作り続けているチーズ職人が、井ノ口 和良さん。北海道は酪農王国でありながら、食文化として乳製品が根付いていないことに気付き、地元・白糠の牛乳を利用したチーズ作りを始めた。「ミルクの味そのままを表現しているような」イタリアの素朴なチーズに魅せられ、本場イタリアの作り方を踏襲してきた。

画像: チーズ工房 白糠酪恵舎の井ノ口 和良さん。「イタリアチーズはシンプルな味なので、料理に使えば、さらにおいしさが生きてきます。食材の本質を見極めて料理する日本人の感性にあっています」

チーズ工房 白糠酪恵舎の井ノ口 和良さん。「イタリアチーズはシンプルな味なので、料理に使えば、さらにおいしさが生きてきます。食材の本質を見極めて料理する日本人の感性にあっています」

 井ノ口さんは地元のレストラン60数軒をはじめ、全国の料理人やチーズショップへ卸している。地元消費をベースにするために値段を抑える一方で、白糠の名を全国へ届けることができれば地元の活性化にも繋がると、道外への営業も。「チーズはワインと一緒に楽しむもの、というイメージが日本人にはあります。実は、さまざまな料理に使ってアレンジを楽しめば、いままでにない楽しさやおいしさに出合うことができます」。

 新型コロナウイルスの感染拡大による小中学校の休校や飲食店の営業自粛により、牛乳が余ってしまった3月。井ノ口さんは、全国に300あるチーズ工房へ「給食中止による余剰乳を、チーズにしよう!」と呼びかけた。
「実は、この呼びかけにお客様からの注文が驚くほど入りました。酪恵舎だけではなく、困った生産者を助けたいという善意の注文です。おかげさまで、休むことなくチーズを造り続けています。とにかく、牛乳が破棄されるような事態にはしたくない。モッツァレッラのようなフレッシュタイプではなく、熟成タイプの生産を増やしています。熟成庫が空いている限り、作り続けます!」

 井ノ口さんは話す。「乳製品の力ってすごいんですよ。もともとは“お母さんの愛”なんですから。子どもの身体を守るものなんです」。確かにチーズは、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がすべて含まれている完全栄養食品と言われている。

 北海道・富良野「ル・ゴロワ フラノ」も、白糠酪恵舎のチーズを長年使い続けている。「どのチーズも、牛乳のおいしさが生きた素直な味。ほかの食材を引き立ててくれる料理の要です。うちの定番料理『ゴロワサラダ』には欠かせません」と大塚健一シェフ。マダムの敬子さんも「井ノ口さんの熱い想いをいつも応援しています。このチーズは心洗われるようなきれいな味わいです。大勢の方々にぜひ召し上がっていただきたいです」。

画像: セット販売もあるが、好きなものを好きなだけアラカルトでの注文もおすすめ。お馴染みの「モッツアレッラ」、そのモッツアレッラを風乾しして数日間熟成した「スカモルツァ」。熱を加えると溶けて糸を引くので、ピザやトーストにのせて。「トーマ(TOMA)」は、イタリア・ピエモンテの熟成タイプ「トーマ・ピエモンテーゼ」の白糠バージョン。ミルキーで、野菜のグラタンなどに合う PHOTOGRAPHS: COURTESY OF RAKUKEISHA

セット販売もあるが、好きなものを好きなだけアラカルトでの注文もおすすめ。お馴染みの「モッツアレッラ」、そのモッツアレッラを風乾しして数日間熟成した「スカモルツァ」。熱を加えると溶けて糸を引くので、ピザやトーストにのせて。「トーマ(TOMA)」は、イタリア・ピエモンテの熟成タイプ「トーマ・ピエモンテーゼ」の白糠バージョン。ミルキーで、野菜のグラタンなどに合う
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF RAKUKEISHA

 三年前、白糠のチーズ工房を訪れた筆者は、その工房の清潔さや、素材である牛乳を大切に扱い、丁寧にチーズを作る姿を見て、おいしくて安心な食べ物とは、こういうものだと腑に落ちた。井ノ口さんは純国産のチーズ作りに何年も挑み続けている。これまでに使ってきたイタリア産の酵素ではなく、自ら育てた紅花の種から取り出した酵素を試用。さらに乳酸菌までも生産・供給しようとしている。新型コロナの影響で輸入が滞ったため、原材料を100%国産にする必要性を感じたからだと言う。

 白糠町のふるさと納税にも使われているこのチーズ。フレッシュタイプも熟成タイプもそれぞれやさしい味わいで、そのままでも、グラタンにしても、ソースにしても、飽きずに食べられる。誠実な食べ物とは、丁寧に作られたこういうものを言うのだろう。

問い合わせ先
チーズ工房 白糠酪恵舎
01547(2)5818
公式サイト

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