さまざまな分野で活躍する“おやじ”たち。彼らがひと息つき、渋い顔を思わずほころばせる……そんな「おやつ」とはどんなもの? 偏愛する“ごほうびおやつ”と“ふだんのおやつ”からうかがい知る、男たちのおやつ事情と知られざるB面とは。連載の第21回は、ブックデザイナーの祖父江 慎さん

BY YUKINO HIROSAWA, PHOTOGRAPHS BY TAKASHI EHARA

 いつ、どんなときにアイスを食べるかをと問うと、「仕事がひと段落したとき。あとは早朝とかお風呂の中。夏よりは冬がいい。本来食べるべき時期でないときに食べるアイスは、さらに格別です。普通のおやつだと仕事中“ながら食べ”して実感がないまま食べ終わっちゃうことがあるでしょ? でもアイスは溶けるから、それができない。瞬間瞬間の冷たさが大事だから、思考を停止し、集中して向き合えるんです。これは遊びではなく、真剣勝負。うーん、アイスは、僕の体を認識するための装置なのかもしれない」

画像: 「口の中が冷たくなり、味覚が失われた状態で味わうチョコレートが、チョコレートアイスの醍醐味。キンキンに冷えた口の中で味覚を失ったまま甘いチョコをのどへとすべらせる。冷た~いのにやわらか~い『パルム』も美味しいね!」 下に敷いたデザインは、11年越しに発売された奇跡の作品集「祖父江 慎+コズフィッシュ」ジャケットの見本印刷紙

「口の中が冷たくなり、味覚が失われた状態で味わうチョコレートが、チョコレートアイスの醍醐味。キンキンに冷えた口の中で味覚を失ったまま甘いチョコをのどへとすべらせる。冷た~いのにやわらか~い『パルム』も美味しいね!」

下に敷いたデザインは、11年越しに発売された奇跡の作品集「祖父江 慎+コズフィッシュ」ジャケットの見本印刷紙

 おやつひとつとっても祖父江ワールド全開。普段はどんなスケジュールで仕事しているのだろう。「一応、事務所は10時〜19時就業が目安だけど、朝5時くらいに目が覚めて6時から仕事する日もあれば、夜中に作業する日も。ルーティンは全くなくて、めちゃくちゃ不摂生。いつも仕事してる気がするけど、本当に? と問われるとよく分からないなぁ(笑)」。そうは言っても話す内容のそこかしこから、日々を丁寧に、つぶさに見つめ、感じまくる“鋭敏な五感”が備わり、幼い頃から今もずっとその才能をフル回転させているのがビシバシ伝わってくる。シーン、言葉、感情、時に疑問…琴線に触れた事柄すべてを鮮明に記憶し、蓄えている。まるで昨日のことのように。

「アイデアというのは、身のまわりのあちこちに潜んでいるけど、自分の内側にはもともとないみたいなものなの。デザインは、それに気づいてみつめること、形におこすこと。また、仕事でプランがふたつあったら、必ず安全よりも危険かもしれない方を選びます。“こういうものになるはず”というイメージ通りのものに仕上がるよりも、“うーんどうなんだろう”みたいな、安定していないエネルギーに幸せを感じる。予想外の事態には忘れていた大切なことがひそんでいるんです。安全であることにはあまり興味がないんです」。現代社会は、予測できないことに遭遇すると、動揺し、不安になり、時に苛立つこともしばしば。だからこそ、この言葉は胸にぐっと突き刺さる。

「“じゃない方”を選ぶことで、時間がかかりすぎることも多いし、時には失敗しちゃうことも。僕自身の仕事が減るとか無くなることはあるかもだけど。みんなも、どんどん失敗していいのにっていうか、あんまり失敗のことを心配しすぎる必要はないんじゃないかな? 前向きな未来のほうに舵を切ったほうが、絶対に楽しい! 大事なのは“ワクワクさん”と“トキメキさん”ですよ!」。

 ささやかな日常に身を起きながら、目線は過去と未来、ミクロの世界から宇宙までぐーるぐる。縦横無尽な視点と発想から化学反応を起こしまくる祖父江ワールドは、どこまでも温かくて、やわらかくて、そしてみずみずしい。

画像: 祖父江 慎(SHIN SOBUE)さん アートディレクター・ブックデザイナー。1959年愛知県生まれ。多摩美術大学在学中に、「工作舎」でアルバイトを始め、1990年に「コズフィッシュ」を設立。408ページにわたる作品集「祖父江 慎+コズフィッシュ」(バイ インターナショナル刊)は必見 Twitter @sobsin

祖父江 慎(SHIN SOBUE)さん
アートディレクター・ブックデザイナー。1959年愛知県生まれ。多摩美術大学在学中に、「工作舎」でアルバイトを始め、1990年に「コズフィッシュ」を設立。408ページにわたる作品集「祖父江 慎+コズフィッシュ」(バイ インターナショナル刊)は必見
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