京都生まれ、京都育ちの食いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この人に聞けばハズレなし!と、長きにわたり業界の人々がブ厚い信頼を寄せる、アマジュンこと天野準子さん。今昔とりまぜ、京都ならではの絶品満腹口福アドレスを教えてもらいます。第35回は、「中華のサカイ本店」をご案内します

TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

 京都には独自の進化を遂げた中華がある。最近では京都中華と呼ばれることもあり、ここ数年、京都にやってくる友人から「中華を食べたい」というリクエストをよく受ける。そこで今月は地元人に愛される町中華を紹介。第3弾は「中華のサカイ本店」をご案内します。

紫野「中華のサカイ本店」

画像: 名物の冷麺。そして中華料理店ながらオムライスも人気だそう

名物の冷麺。そして中華料理店ながらオムライスも人気だそう

「中華のサカイ本店」と言えば、冷麺。逆もしかり、京都で冷麺と言えば、「中華のサカイ本店」と答える人も多い。ちなみに冷麺とは全国的に言う冷やし中華のことである。
 大徳寺の東側に位置し、決してアクセスがいい場所ではないが、サカイの冷麺を食べるために、わざわざ訪れてしまうほど、シンプルにして唯一無二のおいしさだ。

画像: 冷麺(焼豚入り)¥840。ハム入りは¥800

冷麺(焼豚入り)¥840。ハム入りは¥800

 自家製マヨネーズや酢、からし、鶏ガラスープを使ったソースはクリーミーかつコクもあり、爽やかな酸味とほのかな辛みもふわり。親しみやすい味ながら、再現不可能な味わいで、湯がいた後に氷水でしめたキンキンに冷えた太麺にたっぷりからませていただけば、箸が止まらない。
「うちは麺とタレがメインやしね」と、具材はあえて焼き豚(またはハム)、キュウリ、刻み海苔と、シンプルに。自家製の焼き豚もあっさりしていて、主張しすぎず、脇役に徹している。

 冷麺は昭和28年から出しているメニューで、最初は他店と同じく、夏限定だったとか。ところが、サカイの冷麺で育った人たちが、正月に実家に帰った時に食べたいという声や、年末に帰省する際に田舎に持って帰りたいという声が多く、30年前から一年中出すようになったそう。

画像: テイクアウト専用の小窓カウンターもあり。冷麺も持ち帰れる

テイクアウト専用の小窓カウンターもあり。冷麺も持ち帰れる

 豆腐屋さんやかしわ屋さん(鶏肉専門店)など、昔ながらの個人商店が軒を連ねる商店街にあり、元々は地元人に愛される町中華だったが、今や冷麺を求め、旅行者もわざわざ訪れ、昼には行列も。
「観光の方は冷麺を目指して来はるし、最近はお客さんの8割が冷麺を注文しはるね」と、2代目女将・土田美津子さん。

画像: 50年前に嫁いで以来、夫と店を切り盛りしてきた土田美津子さん。現在は娘・西谷桂菜さん夫婦が後を継いでいる。撮影時に、奥のテーブルで宿題をしていた可愛い娘さんも

50年前に嫁いで以来、夫と店を切り盛りしてきた土田美津子さん。現在は娘・西谷桂菜さん夫婦が後を継いでいる。撮影時に、奥のテーブルで宿題をしていた可愛い娘さんも

 ダントツ人気は冷麺だが、オムライスも隠れファンが多いメニューだと言う。実は、昭和14年、喫茶店として創業し、次第に洋食メニューを出すようになり、戦後、中華料理店に転身。オムライスは洋食店時代の名残だそう。
「戦後、食材が手に入らなくて、洋食を作るのが難しく、中華やったら、食材を余らさずに使い切れるし、中華をやり始めたって聞いてます」。

画像: 中華皿で出される小ぶりのオムライス¥850

中華皿で出される小ぶりのオムライス¥850

 鶏肉とタマネギ入りのケチャップライスを薄焼き卵で巻いたオムライスは昔ながらの優しい味わい。サイズも小ぶりで、スルスルペロリといける冷麺と共に一人で両方食べる人も少なくない。

画像: 昭和感溢れるロゴ

昭和感溢れるロゴ

 店の至るところにあしらわれたサカイのロゴや看板屋さんに書いてもらっているという達筆なお品書き、サービスするおねえさんたちのトリコロールカラーのエプロンまでも、長年変わらない町中華らしさが感じられ、楽しい。

画像: 達筆なお品書きは50年以上前から変わらず、看板屋さんに書いてもらっているそう

達筆なお品書きは50年以上前から変わらず、看板屋さんに書いてもらっているそう

 昼の営業は16時までと長めで、昼時を外すと並ばず入れることも多い。塔頭が立ち並ぶ大徳寺やあぶり餅を扱う日本最古の菓子店が参道にある今宮神社なども近く、紫野エリアの散策の際には是非。

画像: 地元人の宴会利用や家族連れも多いため、実はメニューは50種類もあり

地元人の宴会利用や家族連れも多いため、実はメニューは50種類もあり

中華のサカイ本店
住所:京都市北区紫野上門前町92
営業時間:11:00~16:00(15:50L.O.)、17:00~21:00(20:30L.O.)
定休日:月曜(祝日の場合営業、翌火曜休)
TEL. 075-492-5004

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

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