BY YUKIKO HIRANO

塩ゆで&ビールとはひと味違う、そら豆料理&ワインの世界をどうぞ
さやが空を向いて上に伸びることからその名がつけられたそら豆。初夏の代名詞とも言える豆だ。「関東では5月から6月が旬とされているのですが、温暖な鹿児島産は早いものでは年末から出回ります。鹿児島の生産量は全国一位なので、早い時期から目にすることが多いですね。最近は、そら豆のレシピを紹介する時期を少し前倒しにすることにしました」(平野さん)
そら豆のおつまみといえば、塩ゆでだが、ここ数年はさやのまま丸ごと焼くのも定番とも言えるほど人気に。さて、今回はどんなアプローチで?「野菜の食べ方も進化していきますね。そら豆はさやが大きく、捨てるところが多いので、どうにかしたい気持ちにもなります。今回は、さやのわたを食べるレシピも考えてみました。そして、ビールもいいのですが、ヴィトフスカという魅力的なぶどうで醸したワインを合わせて、そら豆の新たな魅力を引き出してみたいと思います」(平野さん)
レシピ1:そら豆の衣焼き からすみがけ
チーズ入りの衣をからめてさっくり揚げ焼きに。ほっくりとしたそら豆は、かき揚げにも負けないおいしさだが、作りやすさは比較にならないほど簡単。

そら豆の風味にからすみパウダーが重なり、そこにワインのヴィトフスカで奥深い味わいに追い討ちをかける!
<材料 2人分>
そら豆6さや、[パルミジャーノチーズ、薄力粉、水 各大さじ2]、オリーブオイル大さじ2〜3、からすみパウダー適量
<作り方>
1 そら豆はさやから出し、5秒程度湯通しをして、薄皮をむく。*薄皮は少々むきづらいが、湯通しをするとむきやすくなる。
2 ボウルにすりおろしたパルミジャーノチーズ、薄力粉、水を加えてさっくりと混ぜる。
3 フライパンにオリーブオイルを熱し、2の衣をくぐらせたそら豆を並べ、弱めの中火で表面にうっすらと焼き色がつくくらいまで両面焼く。
4 器に盛り、からすみパウダーを全体にふる。
レシピ2:そら豆のスパイス焼き
香ばしくスパイス焼きしたそら豆は薄皮ごといただく。クミンとガラムマサラの香りをまとったそら豆は極上のワインつまみに。

さやは器の役割だけではない。見た目には生の時と変わらないが、火を通したわたはぬるっとしていて甘い。なくても料理として成立するが、ぜひお試しあれ
<材料 2人分>
そら豆6さや、オリーブオイル大さじ1、塩小さじ1/3、クミンシード小さじ1、ガラムマサラ小さじ1/2
<作り方>
1 そら豆はさやから出す。さやはフライパンに並べて、皮に焼き色がつくまで強火で焼く。
2 別のフライパンにオリーブオイルを入れて熱し、そら豆を並べて焼く。中火〜弱火で焼き色がついたら返し、5〜6分かけて焼き色がつくまで焼く。
3 塩、クミンシード、ガラムマサラを加えて炒め合わせる。
4 さやの上に3を乗せる。

クミンシードとガラムマサラのスパイシーな香りが、そら豆の新しい味わいを引き出す

スパイスオイルの染みたわたはスプーンでこそげるようにして食べる。これまで捨てていたさやの美味しさをぜひ味わって!
【今月のお酒セレクト:ヴィトフスカ スケルリ 2019】

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF YUKIKO HIRANO
イタリア、フリウリの土着品種ヴィトフスカ。多くの生産者が果皮とともに長期間マセラシオンして醸す。ヴィトフスカに特化した醸造家もいる品種だ。「そら豆ですから、ビールでもいいし、さまざまな白ワインと合わせることもできます。今回は大好きなヴィトフスカをそら豆のパートナーに選びました。果実味、甘味は控えめで、オレンジではあるけれど、強くはありません。ミネラル感が強いけれど、しなやか。スパイスやからすみを使ったそら豆料理の味わいを引き上げてくれるようなワインです。そして、何よりワイン自体が素晴らしくおいしい。そら豆でヴィトフスカ。これはなかなか贅沢ですね」(平野さん)
平野由希子
素材を生かしたシンプルでおいしい料理に定評のある料理家。書籍や雑誌、広告で活躍するかたわら飲食店のプロデュースや商品開発も手がける。日本ソムリエ協会認定ソムリエで、ワインバー「8huit.」のオーナーでもある。ワインと料理のペアリングが楽しめる料理教室も主宰。公式サイトはこちら