「ラデュレ」を皮切りに「オテル・ル・ムーリス」ほか、ミッシェル・トロワグロ率いる「オテル・ランカスター」と三つ星レストラン「ピエール・ガニェール」ではシェフパティシエを歴任。世界のグランシェフたちの信頼を得てガストロノミー界の檜舞台に登場し、現在はパリを拠点に、世界各地で活躍中の長江桂子さん。その精確で明瞭なレシピにはプロの間でも定評あり。家庭で楽しむお菓子においては、誰もがつくりやすく、砂糖やバターの量をギリギリまで減らし、味わい深く食べ心地は軽やかなレシピを提案している。基本のレシピをマスターしたら、風味や形を変えてさまざまに楽しめるアイデアも。これさえ覚えておけば、お菓子づくりには一生困らない。とっておきのレシピを丁寧にお伝えします。お菓子の時間の幸せを、あなたもどうぞ

RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: 「パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ」。型で冷やし固めて切るだけ。「雲の上にいるような感じに」と長江さんの盛り付けはシンプルで優雅

「パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ」。型で冷やし固めて切るだけ。「雲の上にいるような感じに」と長江さんの盛り付けはシンプルで優雅

 お菓子を作るにもオーブンを使いたくない日が続くこの頃。夏の冷菓として、グラニテ、バニラアイスクリームとご紹介してきたが、今回は生クリームを使った贅沢な味わいの「パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ」の作り方を習う。
 「本来は、シロップを沸かして卵黄と合わせたパータ・ボンブを使いますが、砂糖の量をぎりぎりまで減らしているので、湯煎しながら卵黄と砂糖、牛乳に火を通すことができます」と長江さん。
 湯煎にかけたアパレイユ(卵液)を、熱いうちに高速のハンドミキサーで一気に空気を含ませ、キメを整えながら常温にして、泡立てた生クリームを加えるのがコツ。
 「パルフェ(parfait)」はフランス語で「完璧な」という意味。16世紀にカトリーヌ・ド・メディチによってフランスにもたらされた冷菓が、17〜18世紀に宮廷の貴婦人たちのお気に入りとなり、宮廷料理人が卵黄や生クリームなどを加えるレシピを編み出した。
 冷たくてミルキー、味わいも口溶けもエレガントなデザート。そんな華麗なデザートが「parfait」と呼ばれたのは当然のことだろう。作り方は意外に簡単なので、ぜひトライしてほしい。

画像1: パリのパティシエ
長江桂子さんにお菓子を習う
Vol.9 パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ

材料

生クリーム 200g
バニラビーンズ 1/2本
牛乳 30g
卵黄 50g
グラニュー糖 30g

作り方 

画像1: 作り方

1 バニラビーンズを縦に切ってタネを取り出し、生クリームに加える。まな板の上でしごいてもいいが、両手にバニラビーンズを持ち、ナイフで直接しごき入れると簡単。

画像2: 作り方

2 1をハンドミキサーで6〜7分立てに泡立てる。ラップをかけ、冷蔵庫で保管する。

画像3: 作り方

3 ボウルに卵黄とグラニュー糖を入れ、泡立て器でもったりするまでしっかり混ぜる。温めた牛乳を加えて混ぜる。

画像4: 作り方

4 3を湯煎にかけて、卵黄に火を通す。

画像5: 作り方

5 白っぽくなり、もったりするまで泡立てるように混ぜ続ける。ヘラの卵液を指でこすり、跡がついたらOK。

画像6: 作り方

6 湯煎から5をおろし、ハンドミキサーを高速にして2〜3分間泡立て、一気に空気を含ませる。ミキサーの羽の周りに筋が見えて、白っぽくなるまで泡立てる。

画像7: 作り方

7 ハンドミキサーを中速に落とし、ヘラで周りのクリームをきれいに落としながら、さらに泡のキメを整え、室温になるまで泡立てる。持ち上げてトローッと落ちてくるくらいが目安。ここで温度が高いままだと、ホイップした生クリームの泡が溶けてしまうので、室温に落とすことが大切。

画像8: 作り方

8 2の生クリームを冷蔵庫から出し、泡立て器で軽く混ぜ合わせてキメを整える。1/3量を7に加えて泡立て器で混ぜ、残りも加える。気泡をつぶさないように泡立て器で混ぜ、ゴムベラに持ち替えて混ぜる。

画像9: 作り方

9 好みの型に流し入れ、ラップをかけて冷凍する。

画像10: 作り方

10 パウンド型にワックスペーパーを敷き、冷やし固めたものを、ペーパーごと型からはずす。

画像11: 作り方

11 好みの厚さ(写真は2cm強)に切り、器に盛る。包丁をお湯で軽く温めて切ると、くっつかずきれいに切れる。

仕上げのバリエーション

画像1: 仕上げのバリエーション

パルフェ・グラッセは好みの型に流し込んだら、チョコレートコーティングし、泡立てた生クリームを絞ってポップに仕上げても。

画像2: 仕上げのバリエーション

9でプリン型におかずカップを入れて流し込んだものは、おかずカップをはずし、串をさす。

画像3: 仕上げのバリエーション

チョコレートコーティング*をして、串を抜き、好みのものを飾る。写真は、泡立てた生クリーム、チョコレート入りの泡立てた生クリーム、ナッツを飾った。
*好みのチョコレートを溶かすだけでよい。本格的に仕上げたければ、チョコレート100gを湯煎で溶かし、植物油(太白ごま油、グレープシードオイルなど香りのないもの)25gを加えてハンドブレンダーで攪拌し、しっかり乳化させてもOK。

長江桂子(ながえ・けいこ)
学習院大学を卒業後、ソルボンヌ大学に留学。ル・コルドン・ブルーでディプロマを取得。「ラデュレ」を経て、ロンドン「スケッチ」のオープニングスタッフに。2003年ヤニック・アレノ率いる「オテル・ムーリス」、2004年「オテル・ランカスター」シェフパティシエ、2008年パリ「ピエール・ガニェール」シェフパティシエを歴任。2012年、ガストロノミー界のコンサルティング会社「AROME」をフランスで設立。パリを拠点に、世界各地にて菓子ブランドや店舗の立ち上げ、商品開発、技術指導、監修などを手がける

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